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#3. ヴィーニョヴェルデ、マニア向け編(土壌、気候、品種、歴史)

こんにちは、72season'sアドベントカレンダー4日目は、ヴィーニョヴェルデ後編(マニア向け編)です。今回は少し小難しい話をまとめたいと思います。

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VR MinhoとDOC Vinho Verde

北西部のミーニョ県の産地。「ミーニョ」はスペインとの国境をなすミーニョ川から来ている。VRとはVinho RegionalのことでIGPに当たるが、ポルトガルでは伝統的なVinho Regionalという表記が多い。DOC Vinho Verdeと範囲は全く同一である。

ミーニョ地方のブドウ収穫高はポルトガルの1/8ほど。またDOCヴィーニョヴェルデはポルトガルで最大面積のDOCである。非常にライトでフレッシュなワインで知られ、近年劇的に品質が向上している。

DOC規定外のブドウ品種を使ったり、アルコール度数がDOC規定を超えたりするために、あえてVinho Regionalを使用することもある。例えば一般的なVinho Verdeはアルコール度数が8-11.5%と規定されている。そのため、それ以上のアルコール度数のワインはVR Minhoとして売られる。ただし単一品種、サブリージョン、品質表記(Escolhaなど)をラベルに記載する場合、最低アルコール度数は異なる。
また歴史的にVinho Verdeの質は決して高くなかっため、DOC Vinho VerdeよりVR Minhoを名乗ることを好む生産者もいる

土壌・気候

標高は低く、表土は薄い。花崗岩の母岩、砂質で酸性。たまに片岩(とくに南部)。森が広がる地域も多い。
降水量は年1,600mm程度。地中海性気候のため、降水は主に春と冬に多い。冬の平均気温は8度、夏は20度。海洋の影響を受けるため内陸より涼しい。花崗岩質土壌は水はけが良いため、多雨の問題は軽減される

大西洋からの湿った空気のおかげで、花崗岩の土壌でも集約的な栽培が可能となっており、肥沃な土壌は川に沿って内陸まで続く(川が大西洋からの空気を内陸に届ける役目を果たしている)。これによりこの地区では大企業の生産がほとんどを占めている。

代表的なブドウ品種

白:ロウレイロ、アリント(ペデルナ)、アルバリーニョ、トラジャドゥーラ、アザル
赤:ヴィニャオン

Vinho Verdeの変遷

Vinho Verdeは地元消費用の安ワインとしてスタートした。開放型の石の槽(= ラガール)で発酵後、樽に移されその中でマロラクティック発酵が起こり二酸化炭素が生じるためにワインは微発泡を呈していた。
2011年の統計によると129,000の畑に対して、畑面積は21,000ha。一枚の畑は非常に小さく、この小さい区画を有効に使うために、伝統的にはペルゴラ(棚仕立て)でブドウを高く仕立て、その棚の下にも作物を植えていた(= 混作)。Googleで検索するとハシゴやトラックの荷台に乗って収穫する様子がよく出てくる。またこの仕立ては湿気がたまりにくく灰色カビ病のリスク軽減になる。

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しかし、1980年代、ポルトガルとそのワイン産業が競争的な市場主義経済に移行し、経済合理性の高いワインを作ることが目的になってくると、このペルゴラと混作という文化は機械化にも品質にも特に貢献しない、という話になった。そしてブドウの質を重視する栽培方法や還元的なワイン造りへシフトし高品質化が始まる。ちなみにポルトガルがEUに加盟したのが1986年で、これ以降EU諸国からポルトガルのワイン産業に大規模な投資が行われた。

1990年代以降に新しく作られた畑や改植された畑では、垣根栽培が主流となり、より熟度が高い健康なブドウが取れるようになった。かつてはアルコール度数が9~10%程度にしかならず、高すぎる酸をごまかすために補糖したり発泡させたりしていたのが、アルコール度数11~12%程度のワインが造れるようになった。

知られざるVinho Verdeの赤ワイン

実は1980年代までVinho Verdeは赤ワインが主体だった。微発泡で酸が高く、辛口スタイルで、Vinhão、Espadeiroといった品種から作られていた。以前はこの酸っぱい赤ワインが地元でかなりの量飲まれていたが、輸出市場にフォーカスし大部分が白品種へと移行した(現在赤ワインは7%程度)。

現在の赤ワインはヴィニャオン(Vinhão)によるものがほとんどで、生き生きしたフルーティなワインが作られている。特に新しい小規模生産者がより果実感のある赤ワインを作っており、ときにオークを使用したものもある。BastoやAmaranteといったサブリージョンで高価で良いものができる。
1950年代から始まる白品種への移行の揺り戻しでいま赤、とくにVinhãoへの回帰が見られはじめており、地元のナーサリーでいま一番接ぎ木されている品種となっているそうだ。

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4日目は以上になります!マニア編いかがでしたでしょうか?
明日からはドウロ地方についてまとめたいと思います!
お楽しみに!



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