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ロズタリア大陸2作目『その27』

『現実世界での道徳観』

「まず問題点をひとつずつ整理していきましょう。
ひとつが当主が他者の生命を奪い、死者蘇生を行っている点」
魔術の明かりで照らした隠し部屋で羊皮紙に当主の問題点をシェドが書き記していく。
「こちらは現在、凶悪犯罪者を死刑、魔道都市との協定によって合法的に処分している!!という道理を説いてくる可能性が非常に高いので『却下』です。
二点目ですが、出自不明の胎児や私生児は……被害者となった父親や母親が、そもそも被害を名乗り出ないので、やはり『無理』です」
生け贄儀式→遺骨すら魔道薬によって生命エネルギーに残らず【変換】されている為、犯罪の証拠が残っていない!!
近衛の一人が、亡きタチアナ妃殿下の実在は証拠になりえるのか?尋ねる。
「多分『NO』です。
別人かそっくりさんの可能性を主張してくると思います」
八方塞がりな状況に一同、重たい溜め息を漏らし、その場を支配する。
しばらくして、シャールヴィがおずおずと手を挙げ、仮説を話し始める。
「なぁ……ひとつ、提案?というか疑問なんだが……以前、アーシュは金貨数千億枚もの莫大過ぎる借金はおかしい!と俺に教えてくれたよな??
もしかして、返済と称して違法行為で儲けていた商人達の財産没収して、医療都市に借金返済で搬送したんだが、なんていうか……」
一旦、そこで強く唇を噛み、非道な行為に憤る。
「あまり信じたくないが、叔父はその莫大な金貨で母上蘇生の資金源としたか??」
アーシュがビシッと指を差して声を張り上げる。
「それだ!!!」
希望の光を見いだして、まくし立て始める。
「魔道薬は魔道師達がせっせと作るにしても、一日の作成量は限りがある!
最近、医療都市から新治療の確立、実験の為に本部宛に、やたら魔道薬の注文、納品を受けてた。
確かフィンのヤツがどんな医療技術の確立なのか?聞き取りしてたはずだ!!」
そうして、魔術を用いてコンシュテール公国に居る補佐官と連絡し始めた。
「その件ならば、表向きは『臓器移植』後の拒絶反応軽減または消失技術の実験とお伺いしています。
というか……議長……
おおまかな事情は分かりました。
今回の騒動を嗅ぎ付けた排他主義者達を筆頭に、至上主義一派などが議長の解任要求を始め、僕の監督責任を間違いなく追及してきますね。
そのつもりで僕は都市に残っている者達と連絡し、レイフさん達と対応策を話しあっておきます。
もう既に当主を張り倒した後なので、手遅れ気味ですが議長!
キッチリ片だけはつけて帰還してきてください」
やはり次は自分達に飛び火してくる可能性が高い。そう締めくくって補佐官は通信を終えた。

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