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ロズタリア大陸2作目『その9』

『賢者からの要請』

「前置きが長くなかったが、ここからが本題だ」
アーシュはシェドをギロリ睨みつける。
「てめぇがあたしの前に現れた!ってコトは医療都市の謎解きを手伝え!
あるいは神器の確認、事態の把握してぇ!んだろ?」
徹底的に嫌われている素振りにシェドが苦笑いつつ同意する。
「ええ、そういう事です。ご協力願えますか?」
アーシュがソファーの背もたれに両腕を投げ、乱暴に足を組む。
「ご協力……ねぇ……」
彼女の人柄をよく知る補佐官が、普段ならばありえない非協力的な態度、反応を示したのを疑問を抱き、横から口を挟む。
「議長、この方と昔、何かあったんですか??」
面倒くさそうにボリボリ頭をかいて答える。
「現世じゃこのクソガキと会うのは初めてだよ、つまり過去に、ちょっと、な……」
若干、的を得ない返事に、まるで意味が分からないレイドルフとシャールヴィはきょとんとするだけだった。
補佐官のフィンだけが
『何か話したくない出生の秘密がある』
一人合点する。
「分かりました。
では、議長どうしましょうか??
賢者の要請です。
僕らには断る理由がありません。
しかし、公国を手薄にする訳にもいきません。
とはいえ、僕個人的には貴女だけを派遣させる!という形をとりたくないんですが??」
どちらかが留守番せざる得ない。
そして彼女が出撃する=何かしら騒動を巻き起こす!
目付け役の必要性をフィンが指摘する。
レイドルフが間を取った提案をする。
「僕は魔術のことはさっぱり分からない。
門外漢だ。
だから僕からは近衛兵士数名を、そして公国本部駐在の魔道師も同数名派遣する!っていうのは、どうかな??」
軽く顎に指を添え、フィンが考えこむ。
「議長がわざわざ魂魄と肉体の関係を開示、説明している!ということは、生死を司る医療都市でなにか異変が生じている。とも解釈出来ます。
まして先日、商業都市ではごく短期間ですが魔獣出現も目撃、報告を受けています」
派遣する魔道師は戦闘系、もっといえば試練の塔25階から上を踏破、経験済みの魔道師限定としたほうが良い。
「不死者との交戦が考えられる。レイフんとこの近衛兵達も死んでる奴らが歩いてる姿みてもビビんねぇ!肝が座った奴の人選、頼む」
思わぬ予想に隣に座っているレイドルフが頬に一筋の汗を流す。
「え?なに??死んで??」
『どういうこと??』
頭の中が疑問符だらけの態度を、アーシュが両手をそれっぽく垂らしてゾンビ(死人)の真似をする。
「顔面蒼白、土気色の連中がわちゃわちゃどっかから湧いて出てくる!ってコトだよ!!」
高度な魔術や冥府に封じ込めた神を信奉する邪教集団ならば【実現可能】だと教える。
同時に、医療都市に駐在している魔道師達からの報告書に【異変】がみられ始めている点も説明する。




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