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ロズタリア大陸2作目『番外編その2』

『とある不遇な少年の始まり』

母は学術都市で女神アイラに仕える神官の一人として、多忙に暮らしていた。そんな中、ある一人の青年と恋に落ちて、自分が出来た。
学術都市は別に恋愛結婚を禁止している訳じゃない。だが、母の出自がよくなかったらしい……
表向きは学術都市の貴族令嬢として、神官仕えしていた。だが、たった一度だけ「自分はある国王の落としだねだ」と漏らしたことがある。
「おばあちゃんは?」と尋ねたら、少し寂しそうに「私を産んですぐに亡くなられているそうなの……」と申し訳なさそうに答えてくれた。

自分は昔から、不思議な体験をすることが多かった。
他の者には気がつかないような存在が視えたり……声が聞こえたり、といった具合だ。
母に話したら「あまりそういう事は他の人に話してはいけない」
そのような不可思議な能力がある!と判明すれば、学術都市の上層部に目をつけられ『良いように使い潰される』
「どうか自分のようにはならないで欲しい」
母は何かとお役目と称して大陸中を旅させられていた。不思議な事に母が一冊の本を手に持ち、女神アイラに請い願うと【願いが叶う】のだ。

そんな事情もあって、少年時代は学術都市の本殿で【名もなき孤児の一人】として扱われていた。それほど腕っぷしも強い訳ではなかったので同世代の少年達には格好の標的となった。
『落としだね』の意味を知り、理解した時、ふつふつと得も言えぬ怒りが泉の如く湧いてきた。
母への丁重な扱い、という名目での『軟禁』に近い環境。そして完全に抹殺されている自分の処遇……
『なぜ、こんなにも惨めな思いをせねばならないのか!?』

学校が終わった後は図書館に入り浸り、自分なりに文献や資料を調べ回った。
そうして祖父は、もしやローズテリア王国で賢王と讃えられている人物なのでは?と思うようになった。さらには不可思議な能力に関する書物と母の『奇跡の数々』が、ある歴史文献と一致することに気がついた。

「ククク……面白い!実に面白い!!」
予想が的中していれば……母が携帯している一冊の本。自分も使いこなせるはずだ!
学術都市に割り当てられている母の寝室にこっそり忍び込み、拝借させて貰った。

あとは修練を重ねる日々だった。学校帰りに誰も立ち寄らない場所でこっそり本をめくり、願い指を綴った。書かれている内容通りに発音すれば、不思議なことに【その通り】となった。

【奇跡の乙女】と学術都市の連中から崇め祀られていた母は、本が無くなったことで奇跡が起こせなくなった。以来、具合が悪くなったと称して、遠征を止め自室に『軟禁』状態に陥った。

母を良いように酷使し続けていた学術都市にもう用はナイ!
そうして私は名前を【クラヴィス=ロゼオクーガ】と名乗り、あざとい商人達がいる商業都市に向かった。密かな逸話、伝承通り、本を手に持ち【水から数多の黄金】を造り出してみせた。
商人達の信用を勝ち得て、貴族としての礼儀作法を学んだ。

そう、全ては無断で不義を行った。元凶であるローゼンハイム王家に始末をつけさせる為に---

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