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ロズタリア大陸2作目『その2』

『工芸都市の若き青年大公』

「それで?」
思わず年頃の女性が一目見たら、うっとり見つめてしまうほど、顔立ちが整った、年齢はおよそ二十代前半。
焦げ茶色の髪を一房だけ伸ばした青年が、ふんだんにあしらった金細工の椅子に座り、片肘ついた状態で、ぐるぐるに縄で縛られ逃げられない状態のシャールヴィ、そしてシェドは呪文詠唱出来ないよう口部分すら布で縛られた状態で、深夜行った犯行についての動機などを、若き青年大公に問い質されようとしていた。

『こいつがコンシュテール公国の三男坊か……
俺と違ってめちゃくちゃ人望ありそうだし、何より博打や借金とは無縁な世界で生きてそうだな』
捕縛後は無駄に抵抗せず、許可されるまで一切、喋らないように!
事前にシェドから、そう忠告を受けていたシャールヴィはどこか他人事のように、自分との違いをぼんやりとした眼差しで謁見の間の玉座に座る人物を眺めていた。
よく見れば、彼の隣には白いローブを着たシェドと同じような灰青色の髪を左肩で結い止めた女性が腰に手を置き、こちらを注意深く【警戒】した素振り?
いや、どちらかというと、なぜかどこか苦虫を噛み潰したような表情、眉間に皺を寄せてシェドのヤツを睨みつけているような?感じが見受けられた。
『彼女がここからさらに北、山脈を越えた先に位置している魔道都市とやらの総責任者なのか……』
商業都市に駐在している魔道師とは、都市運営の関係上、数回ほど面会した記憶がある。
彼女同様、長い白いローブを着て、硬貨ほどの石板に【女神言語 ガレス・スフレクト】や五芒星など絵柄を刻んである。
その石板を放り投げたり、使用したい対象に置きあてる事で大陸で暮らす人々にとっては、未知なる効果が発動出来る。と以前、講義して貰った経験があった。
大人の握り拳ほどの大きな紅玉ルビー の飾りを首から胸にかけている。
『流石、工芸都市……宝石産出する場所だけあって豪華だなぁ~……』
王太子時代ですら、見たことのない大きな宝石を感心げに眺める。

シャールヴィが内心でそんな事をつらつらと考えていると、被害に遭った商工会長が防犯からくり作動後の経緯などを、ありのまま大公に対して伝えていた。
「こやつら、こともあろうに【自分はローゼンハイム王家の生き残り!急ぎ大公並びに魔道都市の責任者に伝える事態があって、本意ではないが犯行に及んだ!】とか、抜かしているんです!!」
魔術が扱える証明としてシェドは、防犯からくり発動を受けて、身動きが取れない状態ながらも大音量で警報音が鳴り響く中、寝間着姿で急ぎ二階から降りてきた商工会長、そして警報音を聞き、現場に駆けつけてきた城下町駐屯中の近衛兵士達に向かって、若干たじろぐ程度の【突風】を発生させてみせた。

無事に計画通り?魔術が扱える者の犯行!と判断され、工芸都市の統治者と協定を結んでいる魔道都市の総責任者である人物と邂逅を果たせたのだった。



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