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ロズタリア大陸2作目『その29』

『作戦会議』

魔道技術により無理矢理、蘇生させられたタチアナが疑問符だらけの日々を過ごしている時……シャールヴィ達は再突入する作戦を練っていた。
「そもそもあり得ない天文学的な金額の要求は亡き母上の蘇生費用だった!ってコトだよな!?」
「その線で行こう!」
アーシュが力強く同意する。そこにシェドが強引な屁理屈を練り混ぜる。
「いかにもクラヴィスが主張してきそうな内容も添えましょう!」
・愛する人との離別は意味がない!
・医療都市だけが技術を独占するのは、けしからん!
・大陸中の市井にも格安で蘇生技術を提供するが【統治者としてあるべき姿】
理解した魔道師の一人が悪のりする。
「いいですね、それ!
やましいコトがない!と主張するならば我々、魔道師達のように提供するべきです!
なんなら臓器移植の必要すらありません!」
機能低下した臓器を除去して、健康な人間から金銭で臓器を売買する事態が【倫理観に欠いている】
思いついたアーシュが医療都市が呼び掛けている慈善行為の悪用を付け加える。
「そいや、うちら来る前から医療都市は手術用の血液提供を大陸中の人々に呼び掛けていたらしいな……
あれだって生命エネルギーの略奪行為で、恐らく今回の人体蘇生に膨大な血液を無断で不正使用ししているはずだ」
思いつく限りの大陸中で適用される犯罪行為、違法性をシェドが書き出していく。
「本来、臓器提供意思に賛同していない者達からの無断臓器摘出がひとつ。
死者蘇生という一般人の皆さんにとっては、理解を超えた技術や理論の実践」
シャールヴィが支払う必要のなかった借金のでっち上げを付け加える。
「叔父のヤツ、つまりはお前と相談した上で俺にあり得ない金額を送金するよう手配したんだろ?」
金貨数百枚程度ならば、商業都市で【死神殿下】と呼ばれるほど殺人行為に手を染めなかった。と憤る。
ごん!
シェドの頭を強く叩く。
「疑わなかった俺も十分、悪かった。
だが、俺はもうお前が信用出来ない!
この件が終わったら、俺はお前と縁を切る!」
頭を撫でさすり、すんなりシェドは了承する。
「分かりました。
後で指名手配も取り下げておきます」
アーシュが十手先までを大まかに計算している賢者の性質を鋭い視線で牽制する。
「シェヘラウィード、お前のことだ。
どうせ医療都市の次はレイフか、うちら魔道都市の健在化、改革が狙いだろ??」
羊皮紙を書く手を止め、顔を上げて、数呼吸ほど、瞳をぱちくり瞬かせて、別の場所を考えていたことを正直に明かす。
「レイフさんの所、なにか問題ありますか?
僕自身はこの後は一人で芸術に行って神器の所在を確認しようか?と思っていました」
意外な回答を受け、アーシュも面食らって素っ頓狂な声をあげる。
「へっ!?
採掘のやりすぎ、つまるところ金属エネルギーの減少や偏りを正すんじゃねぇの??」
視えない領域では均衡バランスがとれている状態だと返す。
「貴女達が懸命に祈念、投入なさっておられるじゃないですか……
どうしても一点、改善箇所を申し上げるとすれば人口増加による森林伐採による住宅開発ですかね?」
必要以上に自然を破壊すれば、土砂災害が増加する。しかし、公国守護精霊が力を取り戻しつつあるから【その懸念もない】と説明する。
しかし……と軽く自身の顎に軽く指を添えて、クラヴィスの今後の出方を推測する。
「もしかしたら魔道都市の連中を唆してくる可能性は否定しきれませんね?
アイリッシュさん、貴女や補佐官の方が、その危険性やご自身の立ち位置を十二分にご理解なさっておられると思います……
現在の魔道都市は僕が昔、設計した本来の運用方法とは、実態がかなりかけ離れています」
魔力を使いこなせる自分達こそ大陸を統治するに相応しい!と考えている野心溢れる人物や思想が勢力を持ち始めている。
「今回の件で間違いなく議長である、あたしの罷免や責任を追及してくるだろうな」
友人が苦難に立たされる!?
シャールヴィが再びシェドの頭を叩いた。
「お前、まさか!
そこまで読んで工芸都市に俺を連れて行ったのか!?」
若干、涙目でその意図はなかった点を弁明する。
「そうなら、さっき考える仕草しませんよ……
でも、神殿に向かう道中……クラヴィス達の出方をもっと検討しておくべきでした。
すみません……」
ボリボリ頭をかきアーシュが辻褄が合わない事を指摘する。
「次は芸術行くつもりだった!って言ってるくらいだから、うちらの危険性までは考え至ってなかったくせぇな」
思い違いでも、謝る気は一切ないシャールヴィが「ふんっ!」と鼻息荒くして改めてシェドの頭に手刀を一発、叩きこんだのだった。



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