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砂時計

母親からの電話はこわい。

なぜなら50%は泣いているからだ。

母親が電話をかけてくる理由第一位は、父親が帰ってこないからだ。

基本的に被害妄想が広がりやすい母親は、父親が自分の目の行き届かないところにいることがとても不安らしい。

親族や友人がいない母親が父親や自分の子どもに依存することは、仕方のないことだと思っている。


小さい頃はキラキラした服を着せてもらえなかった。いわゆる子どもが憧れるトレンドのブランドの服はダメだった。

それはどちらかというと父親の方針だったが、今でこそユニクロやスポーツブランドの服は良いものだと思えるが、当時は窮屈に感じていた。



母親のタンスの中にしまってある、薄い生地のよくわからない派手な柄の入っているシャツは特別な香りがした。

普段の母親は脈略が無く、怒ったり悲しんだりしていてよく分からない人だったが、こっそり妹と一緒にタンスを開けて、服の香りをかいだりタンスの中に隠れるのが楽しかった。

私は最近、薄い生地のよく分からない派手な柄の入っているシャツをよく着る。instagramで見かけた上海の個人販売のシャツ。漂っていた香りをかき集めたような、小さい頃によく見たよく分からないものを着ている。

しっくりくる自分が、まんまと母親と同じ姿になっていることに満足しながらも、当てのない絶望をひしひしと感じている。

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