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嫁が結婚した


いまではあまり見なくなった「オレの嫁」。

中高生の頃は無闇矢鱈に使っていた。コミュニケーションのツールの一つだった名詞だ。

自分の場合は主に二次元にも用いていたが、現実の女子にも使っていた。

当時中学生の自分は堂々巡りの思い込みを愛だと思っていたし、言葉を紡げば暗示になった。

毎日彼女の名前だけをヅラ〜と書いた日記をブログに書くこともあった。変質者である。

こんなことをしていても相手からも好感を持たれることが多かった。受け止めてもらることが嬉しくて、それで満足だった。

彼女のことは、当時こそ結構真剣に愛を持っていた。言葉にすると嘘っぽい。誠実さを愛と言うのならば嘘かもしれない。けれど人を愛することを知ろうと自分なりに必死だった。

髪を短くしたら同じように短くしてくれて嬉しかった。ベットに仰向けになり「これから、身の回りであった悪いことはぜんぶ自分のせいだと思うことにしたんだ」と言ったら、「それはいけないと思うよ」と引き留めてもらえて嬉しかった。

高校生になったくらいのタイミングで距離があき、なんの拍子かは忘れたが「あれだけ愛してると言ってたのに、嘘だったんだね」と言われて、結構グサッと来たのを覚えている。彼女も自分の知らないところで彼氏を作っていて、多少混乱した。学校も離れたし、環境に応じようとする忙しさもあったのか取り乱すことは無かった。これまでの愛するという行動そのものに満足した気持ちがあったのかもしれない。

彼女は一流の大学に行って広告代理店のディレクターになり、対して自分は人間不信を拗らせてしまい放蕩していた。たまにSNSでやり取りをして、みんなで集まる場所で顔を合わせることはあったが、特別なイベントは何もなかった。でもたまに思い出すくらいには意識していた。


先日オンライン飲み会をしているなか、ふと結婚するらしいという話を友人伝いに聞いた。

そうか、と思った。


自分ほどではないが、彼女も恋愛関係を拗らせるほうだったので、しっかりした相手が見つかったんだなとまずホッとした。結婚相手と並んだ彼女は、髪が伸びて何も変わらない笑顔だった。

何年かしたら、一緒にお酒を飲んだりしたいな。あの時の呪いは少しずつ和らいでいきそうで、次に会うときはモヤっとしたこともけろっと忘れて、近況の報告会でもして馬鹿みたいに笑いたいな。

幸せがたくさん訪れますように。

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