すばらしきおかしな世界[後篇]

表紙
画像2 アーシーが小さくなって見えなくなったあとも、スノーウィーは歩き続けました。
画像3 森を抜け、
画像4 川を越え、
画像5 山を登り、どこまでも歩き続けました。
画像6 そうしてスノーウィーがたどり着いたのは海でした。
画像7 「わあ、なんて大きな水たまりだろう」 / スノーウィーはびっくりしました。 / 「地面もさらさらとしているし、空は青いし、いいきもち」 / スノーウィーはすてきな景色だと思いました。 / こんな風景を見たかったのだと思いました。
画像8 さんさんと降り注ぐ太陽の光、きらきらと輝く水面、青い空、白い砂浜……スノーウィーは夢の中にいるような気持ちになりました。 / すると、遠くからさらさらという音が聞こえてきます。
画像9 「ねえ、なにしとるん?」 / スノーウィーは声の主に答えました。 / 「すてきな景色を眺めているんだよ。きみはだあれ?」 / 声の主は言いました。 / 「うちは砂だるまのサンディ。あんたは?」 / 「ぼく、雪だるまのスノーウィーだよ。よかったら一緒にお話をしようよ」
画像10 二人は波の音を聞きながら、のんびりとお話をしました。 / とてもおだやかで、とても楽しくて、心地よい時間が流れていきます。 / スノーウィーはとてもとてもしあわせで眠たくなりました。
画像11 「ねえ、あんただいじょうぶ?」 / サンディはおどろいてたずねました。 / スノーウィーはまどろみながらサンディの声を聞きました。 / それは遠くの方から聞こえてくるように感じました。 / 「ねえ、どうしたん? スノーウィー、なんとか言うて」 / サンディの問いかけにスノーウィーはなにも答えません。 / スノーウィーはゆっくりと溶けてしまっていたのです。
画像12 「サンディ……とても楽しかったよ。みんな、とても楽しかったよ…。 / ぼくらはいろいろなものに囲まれているんだね……たくさんのきれいなものを見たよ。 / たくさんの美しい声を聞いたよ。 / たくさんの生きものたちに出会ったよ。 / 世界にはたくさんのすてきなものがあるんだね……。」 / スノーウィーはそう呟いて、空気の中に溶けてしまいました。
画像13 「スノーウィー……」 / サンディの声もまた、空気の中に吸いこまれていきました。
画像14 「スノーウィーは元気かのお」 / アーシーは空を見上げてつぶやいていました。
画像15 「スノーウィー、元気にしてるといいのね」 / グラシーも空に向かってつぶやきました。
画像16 その頃、真っ白い雪の野原の上で、ツンドランはスノーウィーのことを考えていました。 / 「スノーウィーはどうしてるんだろう……? 元気にしてるのかなあ……?」
画像17 すると、真っ白い景色をもっと白く染めるように、雪がひらひらと舞い降りてきました。 / この世界に初めて降るような美しい雪の結晶です。
画像18 ツンドランは雪が降る様子をじっと眺めていました。 / すると、おぼろげながらなにかが見えるような気がします。 / 「おや、いったいあれはなにさ?」
画像19 降り積もり雪が少しずつ丸いかたちをつくっていきます。 / ツンドランは丸いかたちの近くに寄ってみました。 / そしてそこでツンドランが見たものは、懐かしいスノーウィーの姿だったのです。
画像20 ツンドランはうれしさを噛みしめた声で言いました。 / 「おかえり、スノーウィー」 スノーウィーは寝ぼけたような声で言いました。 / 「ただいま」 / (おしまい)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?