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 ひよりとめぐは仲のよい友だちらしく振る舞っていた。二人とも一緒にいるときに笑顔を絶やさなかった。休日にはよく買い物に出かけたり、映画を観に行ったりもした。どことなく服装の趣味も似ていたし、顔のつくりにも近いものがあった。見る人によっては二人は親友だと思われたにちがいない。
 ランスとラドウィックとスティーヴンスはいつだって三人で連れ立って歩いた。ほとんどどこに行くにも三人でひと塊だった。三人ともギネス・ビールをこよなく愛していて、ギネス以外は泡立った麦汁でしかない、というのが彼らの言い分だった。かつて知人のひとりは、前世においてひとりの人間の魂だったものが三分割されて三人に振り分けられたんだな、と表した。
 たかのりとファンは恋人同士というわけではなかったし、そのような雰囲気になることは一度もなかった。男女間の友情は成り立つか、という意見に賛否はあるだろうが、事この二人においてはその議論は不要なように思われた。たかのりは自分の好きな音楽を紹介しては彼女にたくさん聴かせた。ファンはおいしい料理屋をいろいろと知っていて、彼に教えてあげた。好きな作家はちがったけれど、お互いの本を貸し借りして理解を深め合っているようだった。
 あるとき、ちょっとしたきっかけから、ひよりはファンと話す機会にめぐまれた。それにより二人は意気投合したようだった。そしてひよりはファンとめぐを引き合わせ、三人で連れ立つようになった。自然な流れにより、ファンは二人にたかのりを紹介した。たかのりは仲のよかったみきおをその場に連れて行き、五人はひとつのグループになった。それからほどなくして、五人での食事にみきおがラドウィックを連れてきた。六人は気持ちのよい時間を過ごしたように見えた。そして次の機会にラドウィックは、紹介したい奴らがいるんだ、最高にナイスな奴らなんだ、と言ってランスとスティーヴンスを同席させた。
 しばらくのあいだ、八人は八等分されたホールケーキのような一体感で行動を共にしていた。誰かの誕生日にみんなで祝ったこともあったし、全員で旅行に行ったりもした。男女比率が五:三ということも手伝ったのか、この中では誰も恋愛関係に発展したりはしなかった。
 最後に八人が集まってからすでに十二年が経っている。各人は各人の生活を生きている。その中には残りの七人が入り込む余地はない。誰も連絡先すら知らない。この先、どれだけの時間が経とうとも、八人が一同に介することはもう二度とない。なぜなら、彼らは友だちではなかったし、かつて友だちであったことなど一度もなかったのだから。

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