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百閒

北海道・函館に「百閒」という店がある。
ちょっと変わった店名は、内田百閒からとったという。

築50年の、かつては古書店だった店舗は、書棚がそのまま残っていて、
店主の蔵書が並んでいる。

いわゆるブックカフェ&バーなのだが、それだと「百閒」らしくない。
自ら名乗っているように、「本と珈琲と酒 百閒」がしっくりくる。

どこか懐かしくて、新しい味の「昭和のナポリタン」を待つあいだ、
書棚を物色して気になる本を読む。
それは、押入れ図書室に籠って読書に耽っていた時間と似ている。
ほかの客がいても気にならない。本と自分だけの世界がそこにあるのだ。

食事を終えて、また本を読む。「豆乳ほうじ茶」を追加して、さらに読む。
それに飽きると、店主と話をする。本の話でも、本とは関係ない話でも。
それでも本の話に戻って、また別の本を手に取っていたりする。

自宅から遠いけれど、「百閒」は、わたしにとって押入れ図書室なのだ。

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