決まらない美容院 3/4
社会人になってからもまた私はホットペッパー(アプリ)を駆使していた。
社会人になると、美容院にかけるお金に少しだけ、ほんの少しだけ余裕を持つことができた。
そんななかでも長続きしたのは、すらっとしたイケメンで私より顔が小さく、ちょっと口下手な、でもいつも理想通りに仕上げてくれる若い(私より2~3歳年上?)男性美容師がいるところだ。
すごく口下手だけど私のまぁまぁ理想のタイプの顔だった。(上から目線)
私より顔が小さいので、鏡越しで「今日の髪型どうしますか?」と言われた時には、鏡をみずに美容師の顔をみて会話をしていた。自分の顔と美容師の顔を見ながら鏡越しに会話をするのが嫌だったからである。
そんな彼(笑)は、口下手なのにおすすめのワックス等を教えてくれた。それはもちろん、店内で販売している物で、気に入ったら購入できる仕組みだ。彼の口下手ながらおすすめの商品を営業してくれるその姿は、口下手だからこそ、そして顔が私のまぁまぁ理想なタイプだからこそ、いじわるに映ることはなく、「がんばれ~」と私はいつも心の中で応援していた。
彼はカウンセリングがとっても丁寧で、いつも理想通りの髪型に仕上げてくれる。だから私はカラーもカットも、すべてをお願いしていた。
そんな折、私は結婚をして仕事をやめ、県外に引っ越すことになった。
心機一転、新たな生活を迎えようとしていた。
私は心底マリッジブルーであった。
だからこそ、仕事を辞めて、次の新たな仕事が始まるまでの約1か月間は、人生初の「金髪」で過ごしてやろうと思いたった。
思い立った私は、いつもの彼にお願いをした。
人生で初めての金髪。そして、彼に会うことももうないのだろうと感慨深い気持ちになりながら、美容院へ向かった。
彼は「本当にブリーチしますか?ケア頑張ってくださいね。…まぁでも一回はブリーチして、明るくしてみたくなりますよね」と言葉をかけてくれた。彼はいつもお客さんに寄り添って、丁寧にカウンセリングをしてくれるのである。
そして3時間ほど時間を要しただろうか。
私の髪は明るくなった。
でも、思ったほどの金髪ではなかった。はじめてのブリーチで、1回だけだと、そんなに“まっきんきん”にはならないらしい。
それでも私は満足していた。ブリーチをしている間、頭がヒリヒリとしみていたけど、それを耐え抜いて私はこの明るい髪色をゲットしたのだ。
マリッジブルーだったけど、気持ちは少し明るくなった気がする。
あれから私は県外に引っ越して、彼にも会っていない。
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