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200127 【下書き】学習する組織とは何か? 平易な言葉にしてみよう。

まず、学習という言葉から始めましょう。学習という言葉を聞いたときに、まず頭に浮かぶものは何でしょうか?
ほとんどの場合、学習という言葉から連想されるのは「学校」です。

実は、この『学習する組織』の本ができた頃、ピーターセンゲは、学習(Learning)という言葉の使用を躊躇していました。学校のイメージで捉えられたくなかったのです。生徒が整然と机を並べて前を向いて教官から正しい知識を与えてもらう。これが工業化時代の学校のイメージです。

今の学校の仕組みができたのがいつだかご存じですか?ヨーロッパでは1800年代のことでした。そのモチーフとなったのは組立ラインです。産業革命の中で組立ラインが発明されて、イギリスの生産性は52年間で120倍に増加しました。これは当時大変革命的な技術でした。

生産ラインの善し悪しを決めるものは何でしょうか?1つは、均質性。もう一つは、スピードです。出てくる製品がひとつひとつ違っていれば、良い生産ラインではありません。遅いラインよりも速いラインの方が優れています。この工場の仕組みが人々を大変豊かにしました。そして、各国は工場で働ける人材を大変必要としていました。そこで、自然な流れとして、工場で製品を作るやり方で、そこで働く労働力を生産しようとしたのです。

工場あるいは学校において、原料である子供たちはグレード別に仕分けされます。6歳児は1年生、7歳時は2年生、そして8歳児は3年生です。グレード別に選別された製品は、決まったプロセスを経て各工程の最後に品質検査を受けます。検査を英語で何というかご存知ですよね?テストです。テストによって、製品は品質ごとに仕分けされ、不良品ははじかれます。工場のイメージそのままに、今も教室では机はラインに沿って並んでいて、壁には時間割が貼ってあり、時計がかかっていて、時間になるとベルが鳴って知らせてくれます。もし工場のイメージで学校が作られなかったら、どうして今の仕組みが出来上がることがあり得たでしょうか?

翻って、学習する組織の学習は、これとは違う概念です。誰もが昔歩くことができませんでした。しかしある時、歩くことができるようになりました。かつては誰も話すことができませんでした。そしてある時話すことができるようになりました。自転車に乗ることだって同じです。初めから自転車に乗れた人はいませんが、練習を通じてあるいは友達とどこかに出かけるために、私たちは自転車に乗ることができるようになりました。中には、練習を続けて、後輪だけで走れるようになったり、高いところへ飛び上がることができるようになった人もいます。このような、自分にとって、意味のあることができる力をつけていく、これが学習する組織における学習の言葉の意味です。

センゲは、学習には2つの要素が必要だと話します。1つは、ビジョンです。大げさな意味での、立派な、大きなビジョン・ステートメントではありません。ここにおけるビジョンの定義は、私たちが望むもの(what i want)それだけです。私たちがどうして歩こうと思ったか?歩きたかったからです。向こうにお父さんやお母さんがいてそこまで行きたかったから、私たちは這うことを覚えて、歩くことを学びました。友達と遠くに行きたかったから、自転車に乗る練習をして、自転車に乗ることを学びました。これがビジョンのイメージです。ビジョンがなくても、人に情報をインプットすることができるかもしれません。しかし、学びは起きません。馬を水場に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできません。

学習のもう一つの要素は、実践、プラクティスです。世の中に、転ばずに自転車に乗れるようになった人がいるでしょうか?転ばずに歩けるようになった人がいるでしょうか?歩き方の本を読んでも、歩けるようにはなりませんし、自転車の乗り方の本を読んでも、自転車に乗れるようにはなりません。学習のための必要な要素は、実際にやってみることです。

ですから、学習する組織のワークショップでは、実際に手を動かして何かをやりながら学びます。ピーター・センゲの好む知識の定義は「効果的なアクションをとる力」であり、学習とは、その力を育てることです。

ここまでが、個人の学びの話です。それでは、組織はどうでしょうか?組織は学ぶことができるでしょうか?学びのために必要なビジョンを、組織はどのように育むことができるでしょうか?その実践の場をどのように作ることができるでしょうか?

学習する組織とは、このような学びを可能にする組織です。その中にいる人が、自らの望むものを明確にし続けられる場所であり、お互いの望むものを尊重し合い、互いのビジョンが共鳴する場所です。そして、実践を通じて、個人とチームが現実をありのままに振り返り、無意識の思い込みやそれまで見えなかったものを見られるようになるプロセスを通じて、望む成果を生み出す力を高め続けていく組織です。

学習する組織の作り方にステップ1、2、3はありません。ただ、ツールや手法はたくさん用意されています。誤解してほしくないのは、ツールは重要だけれど、重要ではないと言うことです。

まず、ツールは重要ではありません。なぜならツールは変化を生み出さないからです。人が変化を生み出します。しかし、ツールは重要です。もしもこのようにピアノがなければ、ピアニストと言う職業は存在し得たでしょうか?金槌がなければ、大工が存在するでしょうか?ツールが重要なのは、ツールを使うことで、人間が、何かをできる力を高めていくことができるからです。良いツールとは、そういうものです。その仕様を通じて、人が学習するのです。

最後に、学習する組織に完成形はありません。ただ、5つのディシプリンが必要です(6つ目、7つ目があるかもしれない、とセンゲは書いています)。ディシプリンとは、人生の中に組み込まれた実践と修練です。合気道や茶道の「道」をイメージすると分かりやすいかもしれません。ツールの使用や実践を通じて、個人とチームが、ずうっと力を高め続ける、学習「し続ける」組織です。でなければ、「学習した組織」になってしまいますから。


※後日追加や編集を前提に、つらつら書きためて行きます(2020.01.27)

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