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スポーツは世界を変える力がある。WFSで出会ったある一人の女性の話

2021年9月22日-23日にスペインのマドリードで開催されたWorld Football Summit(以下、WFS)へ参加してきたのでレポートします。

前回参加したのが2年前の2019年開催でした。その当時の様子はこちら↓

WFSとは?

WFSは2016年に始まった本イベントは、これまで11回のカンファレンスを開催してきました。累計で900名を超える登壇者と、300以上のスポーツクラブ・団体、約3000の企業が参加し、累計参加者は1万6000人を超え、世界最大級のサッカービジネスイベントの1つと言われています。

コロナによる影響で2020年に予定されていたイベントはキャンセルされる一方で、オンラインでの開催を行ってきました。今回はオンラインとオフラインを交えたハイブリッド型となり、アトレティコ・マドリードの本拠地であるワンダ・メトロポリターノ・スタジアムで開催されました。世界中から600名以上が参加し、100名以上のスピーカーが登壇し、120以上の国から200人以上のクラブ関係者が参加しています。現地にこれなくともオンラインで参加している人も220人ほどいたようです。

そのため、メインステージとWFSステージで開催される各セッションを聴講するだけでなく、参加者同士のネットワーキングができるのが実は最も大きな魅力となります。WFS専用アプリを通じて参加者名簿を確認でき、チャットやアポを簡単に取ることが可能です。私の今回の目的も、聴講よりもむしろネットワーキングがメインの目的だったりしました。

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多彩なトピック・登壇者

朝9時から19時までびっしりとセッションが詰まっており、ステージも2つに分かれているので全てのセッションを聴講することはまず無理です。なので、事前に気になるセッションをチェックしておいて、一日のスケジュールを組み立てておきます。セッションの合間やランチの時間を利用して人とのアポイントも入れるので、結構忙しく動き回ります。

当日の様子はLIVEでTwitterのスレッドでレポートもしているので、こちらを見てもらうと会場の様子なども良くわかると思うので覗いてみてください!

セッションのテーマとしては、主催者やラリーガからのKeynoteに始まり、女子サッカーの展望、アナリティクスの事例、ファンエンゲージメントの事例、サミュエル・エトーやフェルナンド・イエロのレジェンドのトークが聞けたりと内容は多岐に渡ります。

参考までに私が聴講できたセッションをこちらにまとめておきます。人と会って話している時間の方が長かったと思います。

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最も感銘を受けたアフガニスタンの女子サッカーの話

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中でも一番感銘を受けたのが、アフガニスタンの元女子サッカー代表でソーシャルアクティビストとして活動するKhalida Popalさんの話でした。皆さんも先日アフガニスタンで起きた米軍撤退によるタリバン政権の復権はニュースで聞いていると思います。女性の人権を無視するタリバン政権の誕生がサッカーに与えた影響について彼女の話を聞くまでリアルに感じることはできませんでした。

1996年から難民としてパキスタンに逃れ、2002年からアフガニスタンに戻りサッカーに出会ったKhalida Popalさん。サッカーの与えてくれる情熱と熱狂はピッチ外で起こるものを忘れさせてくれる魅力をもっており、彼女はサッカーの持つ魅力に魅せられたそうです。

しかし、女性のスポーツやサッカーの文化の無かったアフガニスタンで、女子サッカーを根付かせるのはものすごいチャレンジなことでした。何とかアフガニスタンに女子サッカーを普及させようと働きかけた末、2007年に初の女子サッカー代表チームができ、Khalida Popalさんもそのメンバーに選ばれました。そのユニフォームに袖を通した感動は人生で最も美しい瞬間だったと、語っています。

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そこで彼女が感じたものは「スポーツは世界を変える力がある」ということでした。

その後、当時のアフガニスタンサッカー協会では100人の従業員の中で一人も女性がいなかった中、初の女性職員となりました。そして、2000人以上の女子サッカーを支援し、10人以上の女性がサッカー協会で働ける土壌を作りあげるなど、アフガニスタンの女子サッカー普及に心血を注いでいました。

ところが、ソーシャルアクティビストとしても活動する彼女のメディアを通じた訴えや活動は、アフガンでの彼女の立場を難しくすることになり、国外へ脱出せざる負えなくなり、後にデンマークに活動の拠点を移して女子サッカーの普及に従事することになります。

そして、起こったタリバンの政権奪還。テレビの前で起こる状況を目の前に呆然自失したそうです。しかし、難民としての苦しみと暗闇、当時の女性の人権を無視する政権を知る彼女は再度自分の声を使ってアフガンで苦しむ女子サッカーの人々を助け出す活動をすることを決意したのでした。

今回のWFSでの登壇もその一環であったと思います。40分ほどの彼女のスピーチは「Need your Help!」という言葉で締めくくられました。スピーチが終わった瞬間に会場からは大きな拍手が数十秒間続くほどの、言葉にならない余韻に包まれていました。

彼女は私と同い年であることに衝撃を受けたと同時に、壮絶な人生経験の中、逆境・苦境に屈することなく女子サッカー普及に人生を掛けている彼女の姿勢に強く感動しました。このセッションを直接生で聴けただけで、今回のWFSは満足だったとおもいます。

今後のサッカー界のトレンド

データ分析やピッチアナリシスの最新システムに関しては、正直そこまで目新しいものはありませんでした。マーケティングの事例なども自分で調べている情報以上のモノもなかったかな?と思います。

一方でトピックとして女子サッカーについて3つセッションが設けられ、他のセッションにおいても女性登壇者が多くいました。参加者のリストを眺めてみると30%くらいは女性だったんじゃないかと思います。

昨年の女子CLではバルセロナが優勝しましたが、ラ・リーガは女子サッカーに力を入れています。ヨーロッパの各リーグでは女子サッカーへの投資が本格化してきているのが近年の流れです。日本でも先日WEリーグが開幕し、女子プロサッカーリーグが本格的にスタートしたばかりです。

サッカーの裾野を広げ、ファンベースや競技人口を増やしていく観点、そしてSDGsのビジネス界での普及も相まって、サッカービジネスにおける女性の重要性(選手だけではなく、職業選択としても)は今後大きくなっていくことは間違いありません。

まとめ

最後に、日本からの参加者はオンラインで数名いたと思います。韓国のKリーグとクラブからの参加者もいました。コロナの影響もあってか、2年前に多くいたアフリカや南米からの参加者はあまり見られなかったと思います。現地に参加した日本人は私の知っている方々が数名いたのですが、こういった国際カンファレンスにも是非日本から多くの人が参加してもらえると良いですよね。

WFSはラ・リーガが裏で企画しているイベントなので、マドリード以外にもワールドツアーを行っており、その目的はラ・リーガの存在感を世界で向上させることだと言われています。現在ラ・リーガは、世界中にデスクを開き、マーケティング活動を行っています。CVCの投資も受入れ、NFTやファントークン等のデジタルプラットフォーマーたちとも提携を果たしたラリーガは、本気でプレミアに対抗しようとしているように見えます。

サッカーは常に世界との戦いであり、その世界の最前線はヨーロッパにあります。それはピッチ上、ピッチ外含めてです。世界と伍して戦うのであれば、そこで一体何が行われているのか?どんな人たちが動いているのか?実際に自分自身の耳目を使って確かめるしかありません。

WFSはマレーシアのクアラルンプールでのアジア開催もあります。是非、みなさんも参加してみてください。

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