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3/29(水)社説

 政府は2兆円超の追加物価対策を決定した。低所得世帯への給付金として、3万円を支給することなどが柱である。今春以降も食品を中心に値上げラッシュが続いており、所得が低い人ほど負担は重く、的を絞った支援は重要である。しかし内容には問題が多い。
 まず、支援を必要としている人に給付金が届かない恐れがある。なぜなら、低賃金の非正規労働者など生活に苦しんでいる人が対象外となるからである。一方で対象となる住民税非課税世帯は高齢者が6割以上で、それらの世帯は所得が少なくても資産を持つ者もいる。これでは困窮者支援と無関係のばらまきとなりかねない。
 また、国会審議を経ずに政府の判断で使える予備費で全額を賄うことも問題である。予備費が計上されている予算は財源の多くを国債が占める。将来へのつけを一段と増やす無責任な策である。
 これらの問題の根底には、岸田首相が経済格差の是正にほとんど手をつけていないことがある。就任当初は、コロナ禍に伴う生活困窮者の増加を受け、「分派重視」を唱えていたが、最近では成長優先のアベノミクス路線に回帰してしまった。特に今回の給付は統一地方選や衆参両院の補選と重なる時期であり、選挙目当てとみられても仕方ない。
 政府が一時的な給付を繰り返しても生活の基盤そのものを安定させなければ国民の不安は拭えない。最低賃金引き上げを通じた非正規労働者の待遇改善など抜本的な対策を急ぐべきである。

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