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【エッセイ】お笑い界のいたこ


Xでこちらの【お題企画】を目にして書かねば!と、早速スマホをなぞっております。
私の頭に真っ先に浮かんだ芸人さんは、そう!

友近さん


ことごとく私の笑いの琴線に触れる着眼点。
ネタの出典元。
豪快にして繊細。
他の追随を許さない笑いのジャンヌ・ダルク。

みんな好きでしょ?と、言いたいけどそれなりに生きてきたからみんなが好きなんてこの世の中に存在しない概念ってことはわかってる。
それでもみんな好きであってほしいと願ってしまう。
それが友近ワールド。


  ー友近さんとの出会いー


友近さんを知ったのはたしか「エンタの神様」という若手芸人たちの登竜門的ネタ披露の番組だったと思う。
そこで友近さんは「デパートの受付従業員」に扮して一人コントを披露していた。
他にも「旅館の仲居さん」「銀座のクラブのママさん」「お笑い番組の審査員」などなど、痛快にありとあらゆる職種のとある日常を切り取って演じていた。

そう、演じていたのだ。

私は友近さんをコメディエンヌ、役者として見ていた。
その貫禄や安定感はまさに憑依型俳優。

この人、いたこだ…と一目も二目も置いた。

収録だとわかっていても、関係ない。LIVEであってもこのクオリティは変わらず噛まないだろうとわかるのだ。(人間だから噛むことはあるだろうが)

今は千鳥が世に広めた「癖がすごい!」が当時はまだなかったが、友近さんの芸風はこってりとまごうことなく癖がすごかった。

たこ焼きのタレを爪楊枝で寄せて集めて絡めて水飴みたいに舐めてしまいたい病みつき加減。

「……麻薬やね」
と、いう友近さん扮する謎の「ウィンナー講師」というキャラが呟いたワードがよぎる。

OLの社食風景やラジオのDJと、はじめはまだ世の中に実在する職種のキャラを演じていたのだが、次第に友近さんが独自でかけあわせて作り出したオリジナルの設定キャラが多くなった。

その最たるネタがこちら。
まず、ご覧いただきたい。
講談師は講談師でも
「ヒール講談師」
のネタである。


如何でしたでしょうか。
驚愕しませんか?
言葉も出なくないですか?
下北の小劇場の一人芝居じゃないですか?

これはもう舞台芸術である。

何?ヒール講談って?
まぁ、そうなる。
そんな架空の設定を天性のいたこ魂で見せつけてくれる。
とてつもない説得力で。

この割と長尺の一本をノンストップでやりきるのだ。
膨大なセリフ量。
なのに全てが聞き取りやすく巧みな滑舌。
話しながらタップを踏むお笑いの連弾。
なんて器用なんでしょう。
天才である。

そのネタの内容も私の愛して止まない題材ばかり!
「大映ドラマ」
「五社英雄監督映画」
そして
「梶芽衣子先生のヴァーナルビューティートーク」

梶芽衣子ファンにはたまらないチョイスである。
友近さんの好きなジャンルが自分とよく重なることが偶然にしてもなんと多いことか…。

私にしてみたら王道なのだがその他大勢からするとマニアックになる米粒をつまむ感覚に共感の嬉しさが付随する。

モノマネも得意な友近さん。
まぁ、そもそも歌が上手い!
だから水谷千重子先生にも通じていくのだが、演じるというよりそこに関しては独立した人格がコンサートを普通に全国ツアーしてしまうのだから前代未聞なのである。

爆笑問題の番組でかなり昔だが友近さんが中森明菜さんのモノマネをしていた。
なんとゲストでご本人が登場して友近さんのモノマネについて「テレビをつけながら掃除してたら私の声が聞こえて、ん?と思って見てみたら友近さんだった」と、明菜さまがお話されていたのを鮮明に覚えている。

友近さんの明菜さまのモノマネは歌もさることながら普段の話し方が特に秀逸であった。
そのスキルをいかし、ネタをぶちこむのだ。
ファンとしては二重に得した気分である。

「7階、8階、9階……十戒、それでは聴いてください」
明菜さまのウィスパーボイスで繰り広げられるネタのありがたいことといったら…

友近さんがネタ中に自分自身のキャッチコピーを考えた結果出てきたキラーフレーズが「変幻自在のキャラ姉さん、関西から殴り込み!」

これもまた言い得て妙である。

自己分析が正確、的確すぎるからこそ緻密なネタが作れて演じられる。
このディテールはプロ根性。職人技だ。

憑依型の俳優として友近ワールドが炸裂している動画がこちら。
架空のワイドショー(しかも昭和〜平成初期風)でインタビューされる疑わしい隣人の小野口清子。

実際にはないのに、あったような錯覚に陥る。
友近さんの術中にはまったのだ。

きっと友近さんは自分のやってみたいと思ったことをやっているだけなのだと思う。(だけって)
でもそれが面白いのだ。

わけがわからないから見ない人もいればわけがわからないから見る人もいる。
そのわけのわからなさがついていけなくても全ては趣味が合うかでくらいつく。

類は友を呼ぶ
笑いの輪が広がる。
だから、友近さんの共演されるキャストはどこか世界線が繋がっていて、こちらもすっと馴染めるのだ。
中川家さんやロバートの秋山さん。ゆりやんレトリィバァさん。

なんか通じるものがある。

誰かがどこかで何気なく見てきたものを、言語化出来ずにしてきたものを、発掘して、磨いて、ほら、こんなんあったでしょ?と、みせてくれるのが友近さんの観察力と多角的視点。

好きこそものの上手なれを体現し、ご本人が心惹かれたものへの憧れや探究心が細かな作業を苦にもせず、突き進めて体得した【いたこ術】の集大成が友近さんの笑いの醍醐味なのだと思う。

だから一過性のファンで終わらない。
好きなものへはついていく本物の長年のファンが残っていくのだと思う。
その一人が私である。


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