英語は型にハメろ

[ゼロから] 片言にも印のある日本語. vs. 一文の型にハめ込む英語 [英語脳入門]

 今回は、1つの文を作る時の英語と日本語の違いについて考えてみます。

 ある文を一つ日本語で作ったとして、その文を英語の文にしようとした時、簡単にはいきません。前から順番に、日本語の単語・言葉を一つずつ取り上げて英語に変換しようとしても、ふさわしい言葉が無い…ということがあったりします。それはどうしてなのでしょうか。

 その原因のひとつに、日本語と英語とで言葉の組み立て方・扱い方が違うということがあります。
 言葉を並べる順番以外にも違う点があるので、改めて、それぞれの文の特徴を見てみることにしましょう。


🖌 印(しるし)を付ける日本語。

 日本語では、言葉に印をつけて、他の言葉との関係性を表します。

  言葉の関係性とは、文の中に登場する言葉同士の関係性です。例えば、「誰かが 誰かを どうこうした」と言う文では2人の人物と、「どうこうした」という行動とが出てきますが、この時、行動したのは誰か、とか、その行為は誰から誰に向けられたものなのか、などを表す関係性のことです。

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 日本語では、文に登場する人物や行動を表す言葉のそれぞれに、お互いの関係性を示す印が付けられます。なので、 仮に語順を変えたとしても、その印も一緒に移動させれば、文全体の意味はさほど大きくは変わりません。

試しに、日本語の文「私が君を叩く」を使って実験してみます。

私が君を叩く

 この文を、3つの部分に分けます。

私が 君を 叩く

 3つの部分にはそれぞれ他の部分との関係性を表す印が付いています。「私は」の「」、「君を」の「」、「叩く」の「」(ウ段の音/''する"の感触)です。

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これらの印を元の語に付けたままなら、言葉の順番を変更しても意味が変わらず伝わります。

君を 叩く 私が

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 このように日本語の文では、関係性を示す印が言葉の区切りごとに付いているのです。
 これは言い方を変えると、文を作る時には、言葉へ付ける印がとても重要である、…ということです。この印を付け間違ってしまうと言葉同士の関係性が変わってしまい、相手に誤解を与えてしまうことになるからです。

 先の「私君を叩く」の例で言うと、「が」を「を」に間違えて「私君を叩く」としてしまうと、文の意味が変わってしまいます。

 (日本語の、こういった印を表す語の代表例が、「を」や「が」などの "助詞" なのです。)

🔠 "型" にハメる英語

 日本語と比べて英語では、言葉どうしの順番・位置関係で、他の言葉との関係性を表現します。
 言い方を変えると、”型” を意識して、そこに言葉をハメ込んで文を作るのです。

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 例えばこの↑図で示した型の場合、真ん中に来るのは動きを表す言葉で、1番目の言葉が3番目の言葉に対してその動きをする、という関係性に決まっています。

 語順を変えることは、型の中で語を置く場所を変える事。すると言葉同士の関係性(つながり)が変わるので、意味が変わります。

 試しに、「私が君を叩く」を意味する英語の文を、日本語の単語で表して示してみます。英語には(助詞のような)印の働きをする言葉は無いので次のような文になります。(見やすくするために、全角空白を使っています。)

 私 叩 君
( 私[が] 叩[く] 君[を] )

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 英語の場合、(助詞が無い)「私」だけを見て「私が」の意味だと読み手が理解するのは、それが文の型の中で「が」を付けて解釈されるような場所(今回の場合は一番目)に置かれた言葉だからなのです。

 そういう仕組みですから、言葉の順番を変えると意味も変わってしまいます。

私 叩 君
( 私[が] 叩[く] 君[を] )
 私  《叩》  君'

   ↕️

君 叩 私
( 君[が] 叩[く] 私[を] )
 君'  《叩》  私

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2番目の言葉を3番目の言葉と入れ替えると次のような感じ。

私 君 叩
( 私[が] 君[う] 叩[を] )
 私  《君'》  叩

 ↑
この文では、動きを表す場所に「君」が置かれました。でも、「君」には動きを表す意味は無いので、理解不可能な文になってしまいました。

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◆ 英語的な "型" を、日本語で使ってみる

 「英語の文を作る時には、言葉を型にハメている」という感覚、なんとなく分かっていただけたでしょうか。

 それではここで幾つか、型に単語をハメ込む気持ちで、日本語の単語を使って文を書いてみましょう。

1). 私 食べる 朝食
2). 母 する 洗い物
3). マイク 読む 書類
4). 主人公 抜く 剣
5). 勇者 切る ゴブリン
 ︙

どうでしょう。それぞれ場面が想像できますか。一応、以下に助詞を補った文を並べてみます。

 1’). 私が 食べる 朝食を
 2’). 母が する 洗い物を
 3’). マイクが 読む 書類を
 4’). 主人公が 抜く 剣を
 5’). 勇者が 切る ゴブリンを
  ︙

どうでしょう、助詞の無い時の文とイメージは同じでしたか。

(ちなみに、英語の文法では、こういう「_が _する _を」の形の型を、英語の基本5文型の中の「第3文型」とかSVO(の型)などと呼んでいます。)

◆ 日本語の助詞感覚は忘れ、型を意識しよう。[英語脳のすすめ]

 日本語の、印を付けるやり方に慣れていると、つい単語単位、区切り単位で考えがち・表現しがちです。
 でも英語の場合には型があり、単語を置くたびにその型によるイメージが付いてくる、…というのはこれまで見てきた通りです。
 実際の会話では、この型についてお互いが同じものを持っていないとうまく気持ちが伝わりません。英語では語順も型の一部なので、語順が違うと、お互いのイメージがズレてしまうのです。また、型にハマっていない語や足りない語があると、文が未完成のように感じることもあります。

 ですから、英語の文について勉強する時に、その型を意識することはとても大事なことなのです。

 多読や多聴によって英語の文に慣れようという場合にも、この英語の型を意識してみてください。型が似ているか似ていないかを見分けたり、お決まりのパターンを見つけたり。英語の文の、単語のまとまりの捉え方、見え方が変わると、脳に英文を入れる効率も変わってくると思います。

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