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並行世界へ その3

2階は長い廊下に沿っていろんな部屋があるみたいだけど、わたしは1番大きそうな部屋へと案内された。
きっと応接間なんだろうなぁ、綾ちゃんちは広くていいなぁと思いながら、部屋へと入った。

部屋は由緒正しき和室の居間のような大きさで、2部屋あるものの間仕切りの障子を取っ払った広い部屋だった。
そして、どうしても目が離せないことに、見たことがある神社よりも立派な祭壇があった。

なぜ神社の祭壇と比べたかというと、幣が立ててあったからだ。
そして真ん中に鏡が置いてあった。

あと、天照大御神と筆文字で書いてある垂れ幕があった。
筆文字で書いてあるのは天照大御神だけではなくて、神農黄帝という垂れ幕もあり、更に今上天皇という垂れ幕もあった。
何かしら宗教的なものだろうとじっくり観察してしまった。

「あんなん気にせんでいいよ。」
綾ちゃんに声をかけられるまでじっくり見た。
そして、綾ちゃんの家は凄いなと思った。
それほど沢山の友達の家に行った訳ではないが、初めて見るものばかり。
特別なお家なんだなぁ。

更に言うと、鴨居の所に代々のご家族らしき方の顔写真が飾られてある。
これもリアルでは初めて見た。
写真の数から想像するに、相当な数のご親族の数である。
よくよく見ると、顔写真ではなく絵で描いてあるものもある。
わざわざ遺影のように飾っておくものなんだな。
遺影といえば、お写真の服装はどの方も喪服であった。
なぜそう思ったかと言うと、襟部分に白襦袢とか半襟がついていなかったからだ。

なんとなくの雰囲気で言うと、犬神家の一族の映画で(もちろんテレビ放映で見たのだが)出て来るような居間の上座(たぶん)に祭壇があるのだ。
「座って」
と言われてもどちらを向いて座っていいか、分からない。

今まで経験してきた中では全く見知りもしない光景で、本当にここはあの商店街の中にある家なんだろうかという漠然とした不安感が沸いた。

あれに似ているけれど、血の通う感じが濃いな。

実は、我が母は世界救世教という宗教団体の末端に相談に通っていた。
ほとんどは生活や身体の不調の相談であり、月に3000円のお布施で「手かざし」をされるかわりに相談を聞いてもらって、割と健全な方の参加方法だったと思う。
何せ3人の子育て中でお金も暇も作れないし、子宮筋腫と卵巣嚢腫とで早くにホルモン異常が起きていたのに、父母は両方ともいないに等しい(父方の母は再婚して違う家の人なのだ)ので、孤立無援だったのだ。
あの世界救世教がちょうどMOA美術館を建てた頃に、広島にも荘厳なセンターができていた。
わたしは月に1回歯科矯正治療のために母と広島市内に出かけていたので、母がセンターに通うのを知っていた。
あの、何の役に立つのかわからないけど、奥行きも幅も高さも子どもの目からは巨大なセンターの感じを思い出した。
必要ないものは排除された感じ。
上座の中央が存在するようでしていないようで曖昧な感じ。

あれに似ている。
でもここには強烈な家族の繋がりがむせ返るほど匂う。

あまりにも圧倒されたので、わたしは思わず綾ちゃんに
「とりあえず挨拶させて」
と上座中央に向かって正座し三つ指をつくように礼をした。

綾ちゃんと遊ばせていただきます。
内心で呟いた。

振り返ると綾ちゃんのお婆ちゃんがいた。
お婆ちゃんは
「はじめまして。あなたは子どもにしてはきちんとしているねぇ。さあ、綾ちゃんと仲良くしてちょうだい。」
と言った。
そしてお茶でも入れよう、と部屋を出て行った。

綾ちゃんは
「お婆ちゃん、勝手に入ってきて。」
と言いながら、花札を持ってきた。
わたしの家でも花札で遊ぶことはあったので、2人で遊んだ。
賭けるなんてことはなく、ただのカードゲームとして遊んだ。


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