声優の卵という無精卵

声優になりたい。
私がそう思ったのは、中学の頃でした。
小学生の頃の夢がアナウンサーだったのですが、ラジオのパーソナリティやナレーションを仕事にしたかった私は声優という仕事を知ったとき

全部できるじゃん!!

私にとってまさに夢のような仕事でした。
最短ルートを考え高校から専門学校、養成所を目指しました。
元々アナウンサーになりたかったので、高校は進学校を目指していましたが、声優になるには人生経験を多くした方がいい!と思ってバイトの出来る場所とガクっと偏差値も落としました。
高校時代はバイトや体験入学など沢山行きましたが、私にとっては専門学校までの通過点でしかありませんでした。

専門学校に入って、お芝居を学び、マイクワークを学び

え、私そこそこ出来るじゃん

だいたいの専門学校生はそう思う事でしょう。
学校も経営しないといけないので、退学させない為にも生徒をその気にさせてくるのです。

卒業近くなると、色々な事務所へのオーディションを受けそんな天狗の鼻をくじかれます。正直、もっと早く折って欲しかった。
大きい事務所では無かったですが、無事に準所属で事務所が決まりました。

悲劇はここからです。

月5万の週2回のレッスン、月3万の個人的に通ってるボイトレ
挨拶に行っても無視するマネージャー
調子のいい事言うのに何もしてくれない社長
オーディションなんて受けさせてもらえません
コツコツと養成所に通って1年。

自分に自信の無くなった私は小劇場の舞台に出る事にしました。

そこは私の芝居を認めてくれて、次のオファーをくれる世界でした。

その代わりに1回約2~10万円のチケットノルマの支払いをします。
チケットノルマとは主催側が損をしないため、最低何人呼んでくださいという物で、チケット代×10~30人呼べなかった分は役者が負担で支払います。

ご縁あって舞台からの飲みの席で声優の仕事をとってくる事が出来ました!

それはマネージャーからの塩対応を増幅しました。

新人のうちは仕事は自分で取ってこいと言ってたのにも関わらず、いざ○○という案件でと仕事を取ってきたら怒られたのです。
マネージャーの仕事を取るな!それは役者の仕事じゃない!!

はぁ???

その仕事は事務所経由で断られ、更に事務所から干される事になります。

事務所のホームページには乗ってる、実績は0。
事務所を辞めると何度も話をして、社長に丸め込まれを繰り返し、やっとやめた時には25歳

新しく入れる事務所は見つかりませんでした。

養成所からという場所は何ヶ所かありました。

それは、もちろん私に実力が無かったからでもあります。
ですが、声優業界の若年化、使い捨て化により女性声優は10代で売れないともう厳しいという現状です。

なのに何故養成所には入れるのか

答えは簡単です。
養成所は事務所を運営するための資金繰りの場としてる事務所も多いからです。
もちろん、それが全てではありません。
沢山いれればその分、当たりの人材を引ける可能性が高くなるから間口が広いのです。
必ず調べて養成所からどれくらい所属に上がって、仕事になってるのか調べる必要があります。

30歳を見据えたとき、私は声優という夢を諦めてしまいました。
レッスン費や舞台のノルマの為に、したくもない夜の仕事までしていたのに。

これは私だけではありません。
夢を見て上京し、諦めていく人は沢山見てきました。
夜の仕事の同僚で、同じ夢を持ってる人、モデルになりたい人、歌手になりたい人…
夢の為にお金を払い、その為に女の子達は自分の身を売る。

きっと羽化する事のない夢の卵は全て無精卵なのでしょう。

腐る前に無精卵と気づいて捨てるか、いつか孵る信じて温め続けるのか…

いつかの私が今も日本には沢山居るのでしょう。


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