AK-420

学生時代にスノーボードをするために、カナダのスラム街で生活していました。 その後、大手…

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学生時代にスノーボードをするために、カナダのスラム街で生活していました。 その後、大手IT企業に入社するも1年です退社し、今に至る。

最近の記事

⑦4/20

4/20は世界最大のフェスティバルがバンクーバーで開催される。 どんなフェスティバルかは「4/20 バンクーバー」等で検索してもらうと分かりやすい。 俺はこの日のために出費を抑え、体調を整えていた。 4/20当日は、そのへんの路上でも無数に露店が並び、草だけでなくキノコまで堂々と販売をしていた。 更に、メインの会場となっているビーチには数万人の人が集ってハイになっている。 この景色の壮観さは実際に行った人でないと分からないだろう。 数万人の人が一か所に集まってハイ

    • ⑥ナイトメア

      アパートに新しい滞在者が何人か入ってきた日のこと。 その日は、新顔連中と喫煙所で他の土地やネタの話をしたことをよく覚えている。 俺は疲れて、ドミトリー部屋の鍵をかけ忘れたまま寝てしまった。 ふと、眠りながら意識が覚醒するのを感じた。 自分が夢の中にいる感覚を体感するのは久しぶりで、嬉しくて目を開けた。 すると、魔女のような女が俺のことを枕元で覗き込みながら、笑みを浮かべていた。 久しぶりの明晰夢が、なかなか怖い始まり方だったので面食らいつつも この女を逆に見続け

      • ⑤insite

        バンクーバーで1番有名な観光スポットは、薬物自己注射施設「insite」だろう。 この施設は、文字通り「薬物常習者」向けに「行政」が設置した、「薬物」を「安全」に打つための施設である。 多くの薬物使用者がいるヘイスティングストリートでは、注射器の繰返し利用等によるHIV感染率が非常に高い。 この感染拡大阻止の一環として、清潔な注射器具と医療従事者が用意された施設でヘイスティングストリートの住人は心置きなく薬物を楽しめるのだ。 この施設はスラムが形成される理由の一つとも

        • ④ヘイスティングストリート

          ※この場合の「ヘイスティングストリート」は、バンクーバーの東側に位置するEast Hasting St.とその周辺のスラムエリア全体を指す 北米で最悪のスラム街と言われる、バンクーバーのダークサイドエリアである「ヘイスティングストリート」。 このヘイスティングストリートの西側は綺麗なオフィス街となっているが、東側に行くに連れて治安が悪くなっていく。 犯罪率・HIV感染率が共に北米で1番高い場所と言われており、このエリアに住む人間はロクデナシかジャンキーか、もしくはその両

          ⓪はじめに

          バンクーバーのスラム街で暮らした1年は私にとってかけがえのないものになっていた。 その1年は私の確固たるアイデンティティとなっていたし、そのおかげで私は何者にもなれるほどの生きる力と実感を手に入れられたのだ。 人によっては大した経験ではないかもしれないが、少なくとも私にとっては人生での大きな成長点であった。 私が見た景色とストーリーを心の中に留めて置くのは、少しもったいないような気がした。 私の残りの人生のためにも、今記憶していることを、せめて文章にまとめておこうと思

          ⓪はじめに

          ③ブルードア

          バンクーバーで1番安く大麻を売る店は間違いなく、ここ「ブルードア」だろう。 バンクーバー通のような顔をしていても、この店を知らないのであればモグリといっても過言ではない。というか、実際に他所者かどうかの判断基準となっていた。 ヘイスティングストリートのど真ん中に位置しており、そこに看板や広告は一切ない。 ただ、道に面する壁に青いドアがあるのだ。 重い鉄製のドアは内側からカギが掛かっており、こちらから自由に空けることはできない。 青いドアを2回強くノックすると、のぞき

          ③ブルードア

          ②スラムアパートメント

          宿に入るなり目の前で粉を吸い上げていた男は、 ガッチリと握手すると笑いながら部屋へ戻っていった。 唖然としている私を洗剤の香りと静寂が再度包み込む。 「泊まるのか?」 受付らしき小窓から、突然男の声が聞こえた。 値段交渉をしてみると、一月分まとめて支払うなら半額でもいいと言い始める。 月に$400で住めるなら市内のどの部屋よりも安い。 なにより、この宿に来るまでの道のりが険しすぎてこの場所が自分にとってオアシスのように感じてしまったのだ 部屋は受付の上の階にあ

          ②スラムアパートメント

          ①裏バンクーバー

          深い橙色のメープルの絨毯と、雲の隙間から差し込む光を見てカナダに来たのだと思った。 太平洋の反対側にある港町は、空から見ると輝いていた。 初めて降り立つ北米大陸最大の国は、凛とした見た目と澱んだ空気で自分を包んだ。 予定も計画もないままに来てしまった。 更に金まで無かった。 最安値のホステルを検索し、移動を始めたが進むにつれて更に空気は淀んでいき、終いにはただらぬ緊張感と悪臭に足を止められない状態になってしまった。 バンクーバー市街は清潔で、人々は思い思いのオシャ

          ①裏バンクーバー