住民記録システム標準化

総務省より「住民記録システム標準仕様書 第1.0版」がとうとうリリースされた。ちょっと大切じゃないかと思える部分について整理してみたい。
なお、標準仕様に完成とか正解とかはない。一度世に出たからは、ひたすら改善・改訂を続ける宿命を背負う。初版であり、これで十分とはもちろん思わない。だが、やみくもに否定しても意味はない。これから具体的実装が進むに従い、どれだけブラシュアップされていくかが本当の闘いだろう。

標準仕様が出たということ

とにかくシステムについての標準仕様が出たという事実は大きい。それも法定事務とはいえ、自治事務である住民記録事務をつかさどるシステムの標準化である。地方自治の自由度を制限することになっても標準化しなければならない、デジタル社会に対応するとはそおいうことだ。
しかも、この標準仕様はホワイトリスト方式をとっている。すなわち、標準仕様で実装すべきとされた機能は実装しなければならない。のみならず、実装すべきとされなかった機能は実装してはいけない。機能に関して言えば自治体間の差が無くなる。

機能要件を整理しただけではある

デジタル社会に対応するといっても、今回の標準仕様は機能要件を統一することにほぼとどまっている。残念ながらデジタル社会における住民記録事務のありようとか、あらたな業務プロセスなどを設計しなおしたわけではない。とりあえず現状肯定の下、自治体間、業務パッケージ間の機能差をなくすことに専念したものだ。
とはいえ、まったく新しい部分がないわけではない。地味だけど結構今後にインパクトある部分も含まれている。

新たな時代にむけての布石

この辺りちょっと大切じゃないのと思う部分。

第3章 機能要件

1.1.1 日本人住民データの管理
住民記録システムの管理項目に
・署名用電子証明書シリアル番号
・利用者証明用電子証明書シリアル番号
が入った。
今回の標準化は紙時代の住記事務をそのままひきづっている。だけど、ここはデジタル対応だ。住記にデジタルIDの情報が管理されることとなった。デジタルとリアルのリンクがここで公的に取られる。しかも、すべての自治体においてだ。

1.1.4 改製
一般の人にとってはなにそれ?な内容であるが、住民票の記載欄がいっぱいになったからといって改製しないこととなった。純然たる紙発想で、欄がいっぱいで書ききれなくなったら新しい紙にしますという考えの否定。電子データですから欄いっぱいとかないでしょうと。くだらないけど、そんなレベルで議論していますということ。他にも履歴の考え方とか、地味な検討色々やっています。

1.1.18 フリガナ
フリガナは管理されることになりました。もっとも、フリガナとかローマ字表記の問題は制度論としてもっと根深いですが。とりあえず管理対象にはなりましたと。

10.8 CSV形式のデータの取込
CSVのデータを読み込めることという、それだけみると大した話ではない規定。ただ、本意としてはQRコード連携などなどペーパーレスへの布石。各種届け出書などのデータを紙から読み取るのではなく、電子的に受け取るための準備。方式が多様なのでとりあえずCSV読めることにしておけば何とかなるだろうということ。

第4章 様式・帳票要件
帳票については印刷されるデータ項目と様式(レイアウト)が標準化された。QRコードが定義されたものもある。紙ベースの話だし公印とか今まで通りだけど、レイアウトが定義されたこと以上にデータ項目が諸元表として明確になったことは大きい。紙ベースのデータ項目がはっきりしていれば電子データに再定義することは難しくない。

第5章 データ要件
30.1 データ構造
データ構造については標準化したデータ構造に従って進めましょうとなっている。しかし、実際のところDBレイアウトまでは縛らず、当面は従来のデータ構造を持ってよいことになっている。ただし、除票のDBだけは厳密に定めることとなった。150年保管であり、ベンダーをまたがったデータ移行が必須となるため。

30.2 文字
ついに、氏名や住所に関する文字セットは「文字情報基盤」の文字すべてとなった。なお、符号化方式はUTF-16。
経過措置として文字情報基盤文字への変換や出力が可能な状態で従来の独自文字の併用も可能となっている。しかし、経過措置が採用できる要件を満たすくらいなら文字情報基盤に対応した方が早いんでないかという気もする。
とりあえず自治体の住記における文字が統一されることの意義は大きい。現状はそこがバラバラだから、住基ネットで交換するにも住基ネット統一文字コードに変換し、さらには残存外字とかいったややこしい状況が出てしまう。どこの自治体でも文字情報基盤文字がすべて利用可能となれば、このあたりの事情は大きく変更されるべきだろう。特に残存外字は根本的に見直されてしかるべきとなる。


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