ルクルト号とバーデンバーデンカップについて

【競走馬ルクルト号に関する考察Ⅱ】
 競争馬ルクルトについて前走内容を中心に今一度考えてみたい。
 ルクルトの父キングズベストは半姉に凱旋門賞馬アーバンシー、甥にガリレオがいる良血馬で、産駒の特徴は、日本の主流血統の特徴とは正反対に表れる。代表格ディープインパクト産駒に多く見られる「直線が長い」「軽い馬場」「スローからの瞬発力勝負」といった特徴に対し、「直線が短い」「タフな馬場」(からの「上がりがかかる馬場」)「馬力が問われる」がそのイメージ。
 ルクルトの母父Curlinは米国型ミスプロ系で母父がサンデー系でないので反主流血統といえる(母母父はサンデーサイレンスなのだが。。)(※亀谷敬正の競馬血統辞典【キングズベスト】を参照)
 反主流の流れ・馬場になりやすいのが福島芝1,200mの舞台で、ルクルト自身3走して2勝2着1回のコース相性は偶然ではないだろう。

 「差して届かない馬キャラ」であるルクルトの勝利には必要な条件が多すぎる。反面、すべてが噛み合った時には思った以上の強さを発揮する。前走4/24 福島11R 福島中央テレビ杯はまさにそれに該当していて、改めて振り返ってみたい。

2022/4/24 福島11R 福島中央テレビ杯 芝1,200m 天候:曇 馬場:良 クッション値8.5
12.0-10.7-11.2-11.5-11.4-11.9 1:08.7 テン3F:33.9 上がり3F:34.8
コーナー通過順:14-8 上がり:33.8(1位) 斎藤新騎手 1着/16頭 8番枠

 半数以上が逃げ先行タイプの馬で、外枠からテンに速い馬たちが被せてくる隊列。ルクルトはテンの速さがいつも遅く、おかれてしまう。テン3Fは33.9のハイペース。その時点でも先頭からは10馬身ほどのほぼ最後方の位置取り。だが3,4コーナー中間地点で一気の押し上げで大外をマクっていく(レース映像44秒あたり。追い込み脚質のルクルトだが、ここでその追走力が際立っていた。たいてい4コーナー2桁順で回るのだが、本レースでは8番手まで上がっており、成長を感じさせる)。直線入り口でもう先頭に立つ勢いで、そのまま外伸び馬場を上がり最速で駆け上がった。3馬身差の圧勝。

 では、この福島中央テレビ杯のレースレベルはいかほどだったか。走破タイム1:10:0までの入着の9頭に注目すると次の通り。

 2着⑥チャイカ(追い込み):(次走7/17 函館10R 戸畑特別)
 3着⑬ジューンベロシティ(差し):5/7 大日岳特別 7着、7/10 シンガポールTC賞 4着
 4着①スイーツマジック(先行):5/14 邁進特別 5着、5/29 清津峡特別 1着
 5着⑫ステラダイヤ(逃げ):7/3 さくらんぼ特別 3着
 6着⑭ラストリージョ(先行):次走なし
 7着⑨マッスルマサムネ(追い込み):次走なし
 8着④レオハイセンス(差し):次走なし
 9着⑤カシノフォワード(差し):6/18 STV杯 7着

 この中で逃げ・先行して終始馬場の悪い内目を通って4,5着のスイーツマジックとステラダイヤはよく走れている。スイーツマジックは2走後に勝ち上がり。ステラダイヤは 7/3 さくらんぼ特別(11.7-10.3-11.0-11.3-11.6-12.8 1:08.7 テン3F33.0 上がり35.7)の差し決着で、開幕馬場の助けもあるが先行勢で唯一逃げ粘っての3着。ステラダイヤ自身の走破タイムは1:08.9。

 また、3着のジューンベロシティの大日岳特別は0.4秒僅差の7着で、このレースについていえば、

 2着⑤サイヤダンサー→さくらんぼ特別2着
 3着⑨ショウナンラスボス→さくらんぼ特別4着
 4着①メイショウエニシア→清津峡特別4着、STV杯2着、函館道新スポーツ杯4着
 5着⑦ディヴィナシオン→オーストラリアT1着
 6着④ジュストコル→清津峡特別9着、シンガポールTC賞2着
 7着⑬ジューンベロシティ→シンガポールTC賞 4着
 11着②インフィナイト→舞子特別1着
 
 と、このレースもある程度のレベルにあることがわかる。

 こういったことから福島中央テレビ杯は2勝クラスとしては標準レベルだったと思う。展開・馬場に恵まれたのは確かだが、負かした相手も決して弱くない、という評価とした。

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【バーデンバーデンCについて】
 今週は福島で週中から後半まで雨予報。天候不安定なときは毎回だが、馬場とペースを読めるかがより鍵。何とも寂しく少頭数9頭立てで、これがルクルトにとって吉と出るか凶と出るか。
 7/14 23:30現在、netkeibaでの予想人気は以下の通り。

 バルトリ 2.5 田辺
 ルクルト 3.3 M・デムーロ
 ショウナンバービー 3.8 永野 
 アビッグチア 9.3 嶋田 
 レノーア 11.2 津村
 オースミカテドラル 13.0 菅原明
 シャチ 19.2 山田
 オルダージュ 27.7 藤田菜
 レッドクレオス 28.4 杉原

 前走テンに速いのはショウナンバービー、オルダージュ、アビッグチアの3頭。枠次第でもあるが、この3頭と他6頭で馬群が2つにわかれそうなイメージがある。

 ショウナンバービーは開幕週7/2のTUF杯(12.0-10.9-11.1-11.2-11.1-11.7 1:08.0 テン3F34.0 上がり34.0)で穴馬トッピングの見解通りの逃げ粘りを見せている。ここもそのパターンが濃厚で、すんなりと逃げられそう。馬場を問わないタイプで、キングマンボ系のトゥザワールド産駒であることがその証左と言えそう。
 アビッグチアはこちらもキングマンボ系のリオンディーズ産駒で、外枠からのハイペース追走で前走は大敗も、距離短縮がハマる可能性はある。が、戦績からは叩いて好走するタイプに映る。
 オルダージュは母父キングカメハメハだが、近走内容から消し評価が妥当か。

 残る6頭について。
 オースミカテドラルは伸びずバテずの馬キャラ。追走面に難があり、テンが落ち着いた、タフな馬場はプラスのタイプ。メンバー比較から一発あっておかしくないと思う。ノリに乗ってる菅原明騎手も怖い。
 バルトリは開幕週7/2のTUF杯で出遅れ・道中最後方・大外ブン回しで上がり最速も7着までで差し届くはずがなく、見直しは可能。ディープインパクト産駒だが母母父にキングマンボを持っている。自在性のあるタイプで先行することもできるのは強み。
 レッドクレオスはマイル以下では良績を残してはいるが、近走冴えない。
 近走内容からシャチ、レノーアは消し評価で良いと思っているが。。

 そしてルクルト。主戦の斎藤新騎手が函館の為か、なんとデムーロ騎手の想定! 斎藤新騎手はルクルトを手のうちに入れている感があり継続してほしかったが、デムーロ騎手も外差しタイプの騎手で、ルクルトとの相性は心配ない(むしろ世間的には鞍上強化で単勝オッズ妙味は全くなくなってしまう可能性が。あと、出遅れは勘弁願いたい)。今回は馬場はともかくハイペースにはなりくそうで、前残りを警戒した好位差しの競馬をしてほしいところ。まだ枠が決まっていないが、9頭立てならそこまでの影響はないと思う(それでもできるだけ外目の枠が良いが)。
 もし、TUF杯(開幕週ミドルペースの前残り決着)にルクルトが出走していれば勝つのは難しかっただろう。陣営はルクルトが好走できる番組を狙って来ている感がある。正直、私自身に推し馬バイアスがかかっているが、ここはメンバー的にも勝ち切ってほしいところで、上位人気が見込まれるバルトリ、ショウナンバービーが相手本線で、オースミカテドラル、アビッグチアの2頭が悩ましいというイメージ。馬券的妙味は残念ながらなさそうだが、また前走のような強いルクルトの姿を見たい。


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