競走馬ルクルトについて考える

 私が競走馬ルクルトに惹かれたのは、彼が2021/11/13の会津特別で2着になったことがきっかけでした。このレースを、レース質マトリックスの提唱者である立川優馬さんは、推奨馬2頭(12番人気、6番人気)でのワンツーという最高の結果を出されています。

 このレースの回顧時に、立川さんが「タフな小回りはルクルト走るんですよ」と仰ったのが、私にはなんというかキャッチフレーズのように捉えられたのです。
 「タフな」「小回り」「外差し」の『ルクルト』。。
 ルクルトは『レース質マトリックス 競馬は全て2択である』のp.167にも「人気にならない馬キャラリスト」として登場しています。内荒れ馬場を得意条件とし、急坂が苦手だけど、後方から頑張って追い込んでくる。差し・追い込み馬は展開に左右されることが多いですが、その分ハマった時のゴール前での鮮やかな差し切り勝ちのシーンは強く印象に残ります。
 この記事ではルクルトについてもう少し考えてみたいと思います。


ルクルトに関する基礎知識

 まずは現時点でのルクルトに関してわかっていることを。

 競走馬ルクルトは父キングズベスト母アトランティード(その父Curlin)という血統。2017/2/22生まれの牡5歳の鹿毛馬です。馬主は市川義美ホールディングス(株)で、栗東の吉村圭司厩舎より2020/1/11京都芝1,600mでデビュー(勝ち馬は後のGI馬レイパパレ)。その後は短距離からマイルを中心に出走していましたが、適性面からか近走は1,200m戦での出走が続いています。通算競走成績は18戦3勝(3,2,1,12)。※2022/8/30現在

 その最大の武器は上がり上位の堅実な末脚を繰り出せることです。反面、追い込み脚質が完全に板に付いており、2桁順位で4コーナー回ることがほぼ確実。「差して届かない馬キャラ」で、重厚なキングズベスト産駒らしく、時計がかかる馬場でパフォーマンスを上げるタイプ。得意条件は内荒れ馬場の外差し。苦手条件は急坂コース・高速馬場。ここまでで勝利・連対した5レースは下記の通り。

2020/2/2 小倉4R 未勝利 芝1,200m
 天候:晴 馬場:稍重 クッション値 不計
 12.1-10.7-11.5-12.0-12.4-13.2 1:11.9 テン3F:34.3 上がり3F:37.6
 コーナー通過順:7-5 上がり37.0(3位) 藤岡康騎手 1着/18頭 11番枠
 ルクルト走破タイム 1:11.9(34.9-37.0)

2020/10/24 新潟10R 十日町特別 1勝C 芝1,400m
 天候:雨 馬場:重 クッション値9.6
 12.4-10.9-11.3-12.0-12.5-12.2-12.3 1:23.6 テン3F:34.6 上がり3F:37.0
 コーナー通過順:16-15 上がり:35.9(1位) 斎藤新騎手 2着/16頭 11番枠
 ※1,400m戦のため、ルクルト走破タイムは割愛

2020/11/8 福島8R 1勝C 芝1,200m
 天候:晴 馬場:良 クッション値8.5
 12.1-11.0-11.2-11.9-11.7-11.9 1:09.8 テン3F:34.2 上がり3F:35.5
 コーナー通過順:11-12 上がり:34.6(1位) 斎藤新騎手 1着/13頭 9番枠
 ルクルト走破タイム 1:09.8(35.2-34.6)

2021/11/13 福島12R 会津特別 2勝C 芝1,200m
 天候:晴 馬場:良 クッション値8.4
 12.0-10.3-11.2-11.8-11.7-12.5 1:09.5 テン3F:33.5 上がり3F:36.0
 コーナー通過順:16-16 上がり:34.3(1位) 斎藤新騎手 2着/16頭 13番枠
 ルクルト走破タイム 1:09.6(35.3-34.3)

2022/4/24 福島11R 福島中央テレビ杯 2勝C 芝1,200m
 天候:曇 馬場:良 クッション値8.3
 12.0-10.7-11.2-11.5-11.4-11.9 1:08.7 テン3F:33.9 上がり3F:34.8
 コーナー通過順:14-8 上がり:33.8(1位) 斎藤新騎手 1着/16頭 8番枠
 ルクルト走破タイム 1:08.7(34.9-33.8)

 これらのレースから「上がりのかかる」「小回り」「外枠差し」といったキーワードが浮かんでくる次第です。
 では、ルクルトが好走する条件を近走のレース結果も振り返って探っていきましょう。


近走を回顧してみる

 前走、別府Sでは、

2022/8/20 小倉11R 別府S 3勝C 芝1,200m
 天候:晴 馬場:良 クッション値:9.7 含水率:8.5%
 11.9-10.6-11.0-11.2-11.2-11.4 1:07.3 テン3F:33.5 上がり3F:33.8
 コーナー通過順:11-8 上がり33.2(1位) 藤岡康騎手 5着/12頭 6番枠
 ルクルト走破タイム 1:07.5(34.3-33.2)
 0.3秒前傾のイーブンラップ

別府S 結果
第3コーナー入口(最後方黄帽がルクルト)
第3-4コーナー中間点(ここでも後方を追走)
第4コーナー~直線入口(やや左前に緑帽グランレイが外から蓋をするかたち)
直線ゴール前(右から2頭目。上位入線の馬との上がり差は小さかった)

 ⑥ルクルトはスタートを五分に決めるものの、テンに置かれてしまい(走破タイムから34.3で入っていることになります)、コーナー通過順:11-8で直線を迎え、上がり最速を繰り出すも5着という結果でした。パトロールビデオを何度も観ましたが、藤岡康騎手の騎乗はそこまで悪くはなかったと思います。直線はちょうど1頭分だけ外の⑦グランレイとも馬体を合わせながら一緒に伸びはしました。上がり最速は使っているわけで、直線に入るまででの位置取りの差が着順に出た格好です。⑦グランレイの位置取りができていれば、つまり直線までにもう少し前目・外目の位置を取れれば、着差的にもチャンスはゼロではなかったと思います(ただ、馬場の面では上がりはかかっておらずタフな馬場ではない。また、枠の並びの面でも恵まれなかったかもしれない)。
 差し馬2頭が2,5着、好位先行の馬が1,3,4着で、内外の馬場差もそこまでなかった印象。やはり差し馬にはどうしても展開の助けが必要で、スタートから下り続ける小倉芝1,200mではテン3F32秒台に突入するくらいのハイペースが望ましいと考えます。加えてタフな内荒れ馬場で先行馬が必ず失速することもポイントとして挙げられます。

参考:◆外差し競馬でねらう馬の特徴


 ルクルトが圧勝した福島中央テレビ杯では、

2022/4/24 福島11R 福島中央テレビ杯 2勝C 芝1,200m
 天候:曇 馬場:良 クッション値8.3
 12.0-10.7-11.2-11.5-11.4-11.9 1:08.7 テン3F:33.9 上がり3F:34.8
 コーナー通過順:14-8 上がり:33.8(1位) 斎藤新騎手 1着/16頭 8番枠
 ルクルト走破タイム 1:08.7(34.9-33.8)
 前傾0.9秒のハイペース+内荒れ馬場で前崩れの展開
 展開が完璧に向いたこともあり、3馬身差の圧勝。

福島中央テレビ杯 第3-4コーナー中間点(後方右の青帽がルクルト)
福島中央テレビ杯 第4コーナー~直線入口(中団右端の青帽がルクルト)
内ラチ沿いから5,6頭目あたりまで、明らかに馬場は荒れている。
後方14番手からグーンと直線入り口までに8番手まで押上げることができた。

 ルクルトが凡走したバーデンバーデンカップでは、

2022/7/16 福島11R バーデンバーデンカップ 3勝C 芝1,200m
 天候:曇 馬場:稍重 クッション値8.2
 12.5-10.9-11.1-11.3-11.5-11.7 1:09:0 テン3F:34.5 上がり3F:34.5
 コーナー通過順:8-8 上がり:34.5(1位) M・デムーロ騎手 6着/9頭 5番枠
 ルクルト走破タイム 1:10.0(35.5-34.5)
 前後半フラットで前残り。開催後半ではあったが馬場もそこまで荒れていなかった。

バーデンバーデンカップ 第4コーナー~直線入口(最後方黄帽がルクルト)
開催後半だったが、内ラチ沿いの馬場はそこまで荒れていない。

ルクルトの好走条件とは?

 ここまででの記述から、ルクルトの好走条件をまとめてみますと、

上がりのかかる「タフな」内荒れ馬場スパイラルコーナーのコース(先行馬は全部脚が止まる、開催最終盤)
全体時計でも高速馬場ではないこと
前崩れが確実となるハイペース(多頭数で、先行馬も多い必要あり)
中~外枠発走(結局最後は外から差すため)+外枠主導の隊列(馬群が凝縮しやすく、外枠の差し馬は位置がとりやすくなる)
テンでの追走力が求められないコース(ルクルトには追走力がないため、余力のある先行馬や好位差し馬と、直線だけで前半の差を埋めきれない)
・鞍上が主戦である斎藤新騎手(手の内に入れている感がある)

 ということになります。
 例えば、小倉の芝1,200mについて考えてみますと、下り坂発走でテンが速くなるにもかかわらず、ここまでさんざん太字で書いた通り、ルクルトはテン3F34秒半ばくらいでしか入れません。位置取りの面でどうしても他の馬には劣ってしまいます。追走力の求められる高速決着の小倉1,200mでは分が悪く、ここをどうにかするのが延長ローテ(といっても芝なら1,000mは新潟の直線しかない笑)であったり、ある程度押して出していける騎手の起用でしょうか。また馬場の面も重要で、上がりのかかる「タフな」馬場でないと前崩れの展開は期待できないでしょう。血統的にもダイワメジャー産駒やミッキーアイル産駒が走るコースなのです。

 1番ベストなのは「開催後半で上がりのかかる」「ルクルト自身は6,7枠で、その少し内に先行馬がいて」「外枠主導の隊列が見込め」「全体の頭数の1/3以上を先行馬が占めハイペースも見込める」「3,4コーナーが荒れた」「スパイラルコーナーのある福島芝1,200m」です笑。ほぼすべて満たしたのが福島中央テレビ杯だったということですね。できるだけ、上記の条件が1つでも多く揃う競馬であれば、オープン入りできるだけの力は十分にあると思っています。

 ここで何度も言及している福島中央テレビ杯のレース動画は何度も観ました。
 「タフな」「小回り」「外差し」の『ルクルト』!
 何度でも、最後の直線で、全力で走るその馬の名前を叫びたいのです。



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