東京には美味しい店がない

新宿には美味しい店がない。新宿どころか、東京に来てから一度も美味しい店に入ったことがない。さっき入った店ではシャブ中男性から摘出した肝臓が提供されていたが、不味すぎて酒の肴にもならない。
歌舞伎町の別の店のメニューには、東南アジアから誘拐してきたガキの膵臓が載っていた。とりあえず食べてみたが、これもまた、味が濃すぎて何を食べているのかわからない。といっても、これに関しては仕方のないことかもしれない。あの日食べた君の膵臓が美味しすぎて、俺は少しばかり膵臓に厳しいのかもしれないから。
やらかしたヤクザの睾丸。3日間ゲボに漬けたコンドームのような味だ。
岐阜県では自給自足が普通だった。登下校中の中学生を狩って生で食べたり、河原で交尾に勤しむ男女を頭から貪り食っていた。それが岐阜県民の日常だった。
東京では全てがパッケージされている。スーパーマーケットでは真空パックされた胎児がこちらを見ているが、不味そうなので無視した。
ある日、六本木の高級レストランを予約した。特別な日だった。コース料理だった。どれも不味すぎて、俺は彼女に告白するタイミングを完全に逃していた。すると、コースの締めにそれが出てきた。それは都知事のクリトリスだった。
「都知事のクリトリスやんけ!」俺は叫んだ。こんな高級レストランでも、あり得ないレベルの高級食材だ。大皿には都知事のクリトリスが13個も並んでいて、美しく孤を描いたソースが目を楽しませた。
「都知事のクリトリス、都知事のクソ沿えでございます」
俺達は舌鼓を打った。

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