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俺の右肩にはちいかわのタトゥーが入っている

俺の右肩にはちいかわのタトゥーが入っている。銭湯に入れないし、都会では珍しがられるが、俺の故郷ではそれが普通だった。故郷の村の周辺にはちいかわ族が生息していた。村のみんなはちいかわ族を神の使いだと信じていた。我らの偉大なる神にして祖先。だから、みんなそのパワーを欲しがっていた。ちいかわのタトゥーを入れることでちいかわの力が宿った。ちいかわの力が宿れば立派な村の成人だ。両親からの手紙によれば、最近はちいかわのタトゥーを入れずに大谷翔平のタトゥーを入れる不届き者もいるらしい。田舎の村にも流行り廃りがあるってこと。今、村の若者にとっては大谷翔平のタトゥーがイケてるってわけだ。大谷翔平は村から少し離れた山稜地帯に生息するちいかわ族の天敵だった。大谷翔平は知能が高く、群れでちいかわを狩り、貪った。ちいかわがいなければ鹿や熊を殺戮し、草や木も食い荒らした。でかくて強い大谷翔平を狩るハンターは年々人手が減っていて、ちいかわ族は今では天然記念物だ。大谷翔平は故郷の生態系を破壊しちまった。でも若者の目にはその破壊的な生態がこれ以上なくクールに映った。閉鎖的な村の空気への抵抗感が大谷翔平のタトゥーを入れた大谷戦士を生み出した。今、故郷の村は二つの勢力に分断されている。古くからの習慣を守る守旧派のちいかわ戦士、そして村を破壊し、すべてを無に帰すことを目的とする大谷戦士だ。でも俺にとってはもはやどうでもいいことだ。俺の人生にとってあの村は過去の記憶。今では都会生活にどっぷり浸かっている。だからちいかわのタトゥーは消そうと思う。かわりに入れるのはもちろん、都会的なおんねこのタトゥー。

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