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ヤツはとんでもないものを奪っていきました。つるの剛士さんのパクチーです。

伊地知虹夏「逃げたパクチー!」
パクチー「パ〜クパク!」
このようにしてめでたしとなったのである。数日後に世界が滅びたのはいうまでもない。

時は遡り、カリオストロ公国。人口3500人の小国。

逃げたパクチーを探しています!チェルシーちゃん 3歳 メス 小柄 葉の裏に斑点あり 見つけた方はつるのまで

「なんだあ、こりゃあ?」
次元大介は真っ当な疑問を口にした。パクチーが農園から逃げ出すなど前代未聞だ。
「知らねえのか?次元。カリオストロ公国にはつるの剛士の農園があるってのは界隈じゃ有名な話だぜ。そこではチャンパ王国の秘宝、奇跡のパクチーを育てているって話だ」
「ルパンよ、そのなんとか王国っては知らねえが、そこで足が生えたパクチーでも育ててるってのか」
「チャンパ王国はかつてベトナムに存在した王国だ。そこには無敵の戦士がいて、その兵力はかのクメール王朝にも拮抗したって話だぜ。それだけじゃねえ。かつてベトナムは世界最強のモンゴル帝国を退けた。そして奴らはベトナム戦争でアメリカ軍にさえ勝利した。時の大国がこの国を侵略出来なかったのにはわけがある。それが王家の秘宝、奇跡のパクチーなのさ」
「じゃあそのチャンパ…とかいう国の戦士の強さは、パクチーを食べることで培われてたってことなのか」
「その通りさ。選ばれたチャンパ戦士は王家のパクチーを食すことが許される。パクチーを食べた者は一騎当千の戦士に変貌するんだ。古今東西、多くの者がこのパクチーを求めてきたが、第二次大戦中、日本軍によってミーソン聖域に封印されていたパクチーが偶然発見されたのさ。つるの剛士の農園はそのパクチーから株分けして作られた」
「なんてこった。じゃあ、伯爵とつるの剛士は結託して、最強の軍隊でも作ろうっていうのか」
「そうだ。贋金によって世界中の経済をコントロールしている伯爵家だが、蓋を開けてみればたかが人口4ケタの小国の貴族でしかねえ。ロシアにでも狙われたら一瞬で潰される。だから強国への対抗策として、パクチー戦士を求めたんだろう。ただでさえヤバい代物なのに、遺伝子改変までしてな」
「それってまさか…」
「ああ、お察しの通り。パクチーに足が生えたのは伯爵による遺伝子組換えの影響だ。今やこのパクチーは知能を持ち、歩き回る立派な動物ってわけさ」
「だがよ、パクチーが歩き回るからって、それになんの意味がある?」
「分かってねえな、次元。自律的に思考し、移動する強力なドーピング兵器。これほどの脅威はねえぜ。有事の際、パクチーは一斉に放たれる。そして戦場にいる兵士だけじゃなく、自国民や敵国兵士、周辺国民の口にまで入り込み、全員を寸分違わぬ実力を持った狂戦士に変えるんだ。カリオストロのためだけに駆動する兵器に」
「なるほどな。数十人規模の戦士団で世界最強の帝国軍と渡り歩いたパクチー戦士が、数十万の規模に膨れ上がるってわけか。おっかないねえ」
「そういうこと。んで、こいつが今回の獲物さ」

続く…

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