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フォロワーがハマグリのガソリン焼きに参加したら朝日新聞の一面にフェイクニュース特集が乗った話(松屋バイデン食い逃げ事件)

 2年ほど前に私とフォロワーの内輪ネタが発端となり、「松屋立命館大前店でジョー・バイデンが食い逃げした」というインターネットミームが拡散する騒動が起きた。そろそろこのネタも忘れ去られ、言及してもいい頃合いになったと思うので事の経緯を時系列順にまとめてみたい。

フォロワーAが京大の熊野寮祭で開催されたハマグリガソリン焼きに参加する


 これが最初の発端である。ハマグリのガソリン焼きを食べたフォロワーAに対して、フォロワーBがツイッターにアップされていた顔面や服装の特徴からフォロワーAの容姿を特定。「オタクの顔面を特定してしまった話」としてnoteの記事にした。その内容は「思っていたほど容姿がオタクじゃなかった」という落胆であった。このnote記事をきっかけに仲間内でのnoteブームが到来する。

5G怪文書


 当時は5Gが導入され始めた頃で、5G陰謀論が盛んであった。インターネットのオタクはそのような陰謀論をおもちゃにして遊んでいた。また仲間内とは関係ないところでも5Gやコロナワクチンといった陰謀論者が好みそうな要素を支離滅裂な怪文書noteにしてネタ化するフォロワーがおり、当時の私はそれに微妙に影響されていた。

「松屋でバイデンが食い逃げ」


 そもそも、バイデン食い逃げミームより前に松屋食い逃げ界隈というものがあり、それは食券制の松屋で食い逃げをするという不可能性を前提としたユーモアであった。フォロワーCはこのユーモアを拝借し、とある怪文書note中に「バイデンが松屋で食い逃げした」という文言を掲載した。これによりバイデンと松屋食い逃げが結び付けられる。

松屋バイデンツイート


 これに立命館大前店という要素を付与したのは私のツイートである。立命館大学である理由は「立命館大学からアメリカ大統領を輩出する」という広告と、大本となったフォロワーAが立命館大学に通っていたからだ。私は「ジョー・バイデンさんが松屋立命館大前店で食い逃げしてるのを小生見ました」というツイートを何気なく呟いた。しばらくは1いいねもつかなかった。また、同時にフォロワーCのnoteへのアンサーとして「ファクトチェック ジョー・バイデンは本当に松屋で食い逃げしたのか?」を執筆した。



ツイッターのサジェストに「松屋バイデン食い逃げ」が出現。ミーム化


 本当に予想していなかったことが起きた。私とフォロワーCでネタにしていただけだった松屋バイデン食い逃げがツイッターのサジェストに乗ってしまった。これは恐らく、フォロワーの地理界隈アカウント群が何度か言及したことによって外部に拡散したことが要因だろう。「バイデン」で検索した人の目に「バイデン 松屋 食い逃げ」の文字列が映ることになってしまった。これにより、松屋バイデン食い逃げはトレンドになった。このあたりから自分達でコントロールできる範囲から離れてワードが一人歩きを始める。「バイデンが立命館大前店で5Gを使ってハッキングすることでシュクメルリを食い逃げした」という出自不明の変なインターネットミームとなって拡散したのだ。前述の私のツイートはツイート検索で一番最初に表示されるので、元ネタだと解釈され、伸びていった。また、同時期に投稿したnote記事もフォロワーCの記事削除により直接の要因として取り上げられることになる。私も騒ぎがデカくなり始めると周りのフォロワーに勧められるまま記事を消して鍵垢にした。

まとめブログに掲載


 ジョー・バイデンに批判的な右翼系のまとめブログがこのサジェストに反応する。「ジョー・バイデンはこんなジョークで馬鹿にされるくらい嫌われている」というような内容だったと記憶している。これを発端としてたんなる内輪の冗談が右や左の政治アカウントに取り沙汰されていく。真に受けた右派と左派、真に受けているのを馬鹿にする冷笑者に分かれ、割と冗談では済まない雰囲気になる。いくつかのまとめブログ、2chなどに私のnoteやツイートが晒され、「面白くない」「寒すぎる」などの批判を受ける。
 「自分たちが面白ければそれでいい」という前提の内輪ネタを外から見たら糞つまらないに決まっているし、2年後の私も今見たら何が面白かったのかよくわからない。いわゆる「バズの責任」というやつであり、結果論ではあるが甘んじて受けなければならない。
 正直、「世間様」にご迷惑をかけたという結果論で謝ることはあまり好きではない。サジェスト入りして迷惑さえおかけしなければ、それはネットに無数に漂うしょうもない内輪ネタのひとつに過ぎなかっただろう。とはいえ、起きたことは起きたことである。間違いなく私には責任がある。世間はともかく、ジョー・バイデン氏と松屋ホールディングスには本当に申し訳ないと思っている。
以下、当時の反応を掲載する。


ボロクソに書かれとるね

 そんなこと予想できるわけないだろ!と思いつつも、もっともな話ではある。

おねロリキメセク天皇事件


 私が悪いのはここまで。この後は全面的に彼の責任だ。このネタが拡散してからしばらくして、地震が起きた。地震が起こると、毎度のようにネタツイと称して関東大震災後の朝鮮人虐殺において流布された「井戸に毒を入れるのを見た」というデマを当てこすったツイートをする者が現れる。ここで、「おねロリキメセク天皇」というアルファアカウントが飛びついた。彼は町山智浩さんに「アベの犬がかわいい」というパクツイを工作員としてスクリーンショットされ、そのハンドルネームがあまりにもバカバカしかったことで一躍有名になった人物だ。彼は既にインターネットミームと化していた松屋バイデン食い逃げと井戸毒デマを結びつけ、「バイデンが井戸に5Gを入れた」とツイート。(後にそれは井戸毒デマへの当てこすりだったと弁明している)そしてジャーナリストの津田大介さんに「悪質なデマ。通報をお願いします」と引用リツイートされ、炎上する。そしてアカウントは凍結される。

朝日新聞の一面におねロリキメセク天皇のインタビューが掲載される

 タイトルのままだ。 彼の記事が朝日新聞に載った。私の実家は朝日新聞を購読している。たぶんあの記事も読んだだろう。ちなみにデジタル版も出ている。

「井戸に毒」投稿者に2度問うた 虐殺の現場訪ねた記者:朝日新聞デジタル 


まとめ

 これがとあるオタクがハマグリのガソリン焼きを食べたことから内輪でnoteが流行り、松屋バイデン食い逃げミームが誕生し、朝日新聞にネット上のデマに関する記事が掲載されるに至るまでの全貌である。
 フォロワーAがハマグリのガソリン焼きに参加しなければ、朝日新聞の一面におねロリキメセク天皇のインタビュー記事が掲載されることは無かっただろう。本当にあったバタフライエフェクトの話であった。

 デカい視点で見ればインターネット上の些細な一幕に過ぎないし、この一件を全く目にしなかった人もいただろう。そのような人にも、陰謀論を馬鹿にしてキャッキャしている学生のしょうもない内輪ネタが刻々と冗談じゃ済まなくなっていく恐怖とワクワクが少しでも伝わっていたら嬉しい。私はインターネットをナメてたし、おねロリキメセク天皇もまたインターネットをナメていた。インターネットでは本当に些細な冗談が飛び火して、拡大解釈されていく。それを身をもって知ったのだった。インターネットは見られていないと思っていたら意外と見られている場所だ。これは誰の身にも降りかかることだと思う。インターネットをやっていると忘れがちだが、発言には常に責任がつきまとう。このnoteを読んで鼻をほじっているあなたの何気ないツイートも同様だ。バズはその責任をさらに重くさせる。インターネットでは人の目に触れること自体がある種の「攻撃」なのだ。あなたの書き込みを見てストレスを与えられた人々がいる。その人たちには心の底から謝罪しながら書き込まなければいけない。この出来事は教訓になったが、そんなことを気にしすぎると些細な冗談さえ書けなくなるのもまた事実である。程々に気をつけながらインターネットをやっていきましょう。


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