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近所のラブホテルを通るたびに思うこと

短歌なうさん(‪@tanka_now )というアカウントがある。Twitterで投稿された短歌で人気(RT数・お気に入りの数が多いもの)を表示するアカウントだ。‬
‪そのアカウントに私の短歌が表示されたのだが、それがラブホテルについての歌だった。なんでやねん!とその時思ったし、意外な歌が広まってもうたでと焦った(実際はそないにひろがってないです)。‬
‪それで、たまたま、今年の短歌研究新人賞の予選通過で選ばれた歌もラブホテルの歌だった。勝手に、縁があるような気がする。‬
ラブホテルの第一印象は、シンデレラのお城みたいなホテルだ。高校生になるまでは、やたらホテルがあるところは密集するんやなーと思ってた。ミラボールやサンタクロースがいるホテルは、部屋もそんな仕様なのか気になる。一回、見て忘れられないホテルは、ホテルの頂上でめっちゃでかいドレスを着た人形がお辞儀していた。近所のラブホテルは、そのホテルジャングルから離れたところにあった。
毎日、ホテルの前を通るわけではないが、好きなコンビニに行く近道なのでよく通る。高確率でホテルで従業員であろうおばちゃんがタバコを吸ってピンク色の壁を見つめている。鼻から煙を出して、壁を見つめている姿に惹かれるのは自分とは違う生活を送っているように思えるからかもしれない。
‪夜にその道を通ると、カップルが出てくる場面に遭遇する。私と同じ方向へ向かうカップル、ホテルの前で別れるカップル、ホテルの前でいちゃつきだすカップル、色々である。カップルを見張るとか数える、なんて気持ち悪いことはしないが、ホテルから出てくるカップルは、やっぱりちらっと見てしまう。‬
‪ホテル前でキスをしてる場面に遭遇した時は、私の視線を感じて「やだ、子どもがいるから」と言ってもう一度ホテルに入っていったのも見た。頼む、こちらも見たいわけじゃないらこそっといちゃついてください、とその時思った。ホテルの前を、早足でその前を通り過ぎるようになったのはその時以来である。‬
‪さまざまなカップルたちは、夜で街灯もないので、こちらからは顔は見えはしないが、幸せそう、満ち足りた雰囲気を毎回感じる。ホテルから出てくるカップルは年齢も性別も、多分ばらばらだろう。ホテルの前で別れるカップルの「バイバーイ、またね」には優しさがある。手をつないだり、ちょっと間を開けて歩いたりする後ろ姿はいいな、と思う。ふんわりとした空気が流れ出す。夜道で人の優しさの声に触れる、ラブホテル前。‬

#エッセイ

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