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祖母は朝や夕方の決まった時間、祭壇の前にひざまづき、静かにお祈りをしていた。 祭壇の中央には小さな何かの像が置かれていて、その右側に花を差した花瓶が、左側には古くて分厚い本が置かれていた。 幼い頃の私は、なぜか、祭壇に置かれたその古い本に興味があって、初めてその本を開いたとき、文字がびっしり書かれていることに圧倒されて、思わず閉じてしまったことを今でも覚えている 「そこに書いてあるのは、ただの物語なのよ」 祖母は幼い私の肩に、優しく手を置きながらそう言った。 「ものが
「おはようございます。高校の同級生だった伊藤です」 朝起きると、アパートの部屋に人が何人か寝ていた。 「近くを通ったものだから、夜も遅かったし、家族で勝手に泊めさせてもらいました」 同級生は何となく見覚えがあったが、ほとんど記憶がない。 「父は私用があるので別行動になりますが、よかったら、われわれ兄弟と一緒にクローバー印の薬局へ行きましょう」 薬局とか意味が分からなかったが、その日は暇だったから、気分転換に彼らと一緒に一〇分ほど歩くと、確かにそれらしき店があった。 「