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《孤独な人が集まる喫茶店》というのを始めてみた。 店名が露骨すぎて誰も来ないんじゃないかと始めは思っていたが、意外と客は来てくれるので何とか営業はできている。 「ナポリタンと、コーヒーをお願いします」 店のメニューは、ナポリタンと、オムライスという二つの食べ物と、コーヒー、紅茶、コーラという三つの飲み物だけ。 オムライスは、きれいな形にできるまで、三週間毎日練習した。 「まるで黄色いラグビーボールみたいですね」 そう客に言われたが、褒められているのかどうか私にはよく
私は、古い歴史上の英雄として、一部の歴史好きに知られる人物である。 しかしそれは伝説として語られたり、後世の書物で紹介されたりしているだけで、私は、本当に存在していた人物ではない。 「超有名なジャンヌ・ダルクや、天草四郎も本当は存在しないわ」と、歴史管理人は言う。「でも、人々が求めている物語を提供できれば、それでいいじゃない?」 当の本人からすれば、それほど有名ではないにしても、英雄にまで祭り上げられたのに、後世の人々に嘘をつき続けているようで、とても心が痛かった。 「
わたしは夏時間が好きだったので、ずっと夏時間に設定していたら、役所から通告が来た。 「一つの時間を継続できるのは、現行の時間制度で三年以内と定められています。現在あなたが設定している夏時間は、あと三日で使用停止となります」 役所のAIは、そう一方的に告げる。 「あなたは、夏時間以外の時間設定をすみやかに行う必要があり、設定がなされなかった場合は、自動的に普通時間に設定されます」 普通時間とは、従来通りの春夏秋冬の季節が過ぎるだけというものだ。 「なお、あなたは今回、夏時