【短編】 私が私であることに気づく前と後の話
むかしむかし、あるところに柔らかい感じのものがありました。
それを見つけたとき、自分が誰だったのかは覚えていないのですが、冷たい雨が降っていたことはよく覚えています。
もしかしたら、柔らかい感じのものはそこで誰かを待っていたのかもしれません。
しかし、このままだと雨で溶けてしまいそうだったので、私はその柔らかい感じのものをそっと自分のポケットに入れました。
私が私であることに気づいたとき、柔らかい感じのものはすでに消えていました。
ポケットには大きな穴が空いて