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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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#小学生

【短編】 一日だけの転校生

 夏休み明けの朝の教室に、見知らぬ女の子が入ってきた。 「佐久間サクラさんは、サンフランシスコから引越してきたばかりで、いろいろ分からないこともあるから、みんなで助けてあげましょうね」  先生がそう紹介すると、彼女はペコリと深くお辞儀をしたのだが、そのときランドセルがべろんと開いて、筆箱や、何かの白い生物が床に落ちた。 「ててて、何だよサクラ。オイラ、気持ちよく寝てたのに」  彼女は慌ててその生物を拾い上げると、これ喋るぬいぐみなんだよねはははと笑ってランドセルの中に押し込ん

【短編】 リコーダー革命

 女子のリコーダーをこっそり舐めることが、男子の間で流行っていた。 「だって、好きな女子が咥えたところを舐めるんだぜ。何だかドキドキするだろ」  じゃあ好きじゃない女子のリコーダーには、ドキドキしないのか。 「まあ、女子のリコーダーってだけで、何だかモヤモヤするけど」  ドキドキとかモヤモヤとか、僕にはよく分からない。 「そっか。俺たちまだ小学生だし、この気持ちが何なのか、俺にもよく分からないよ」  学校の帰り道に、親友のトモハルとそんな話をしながら、僕は、彼が少し遠くへ行っ

【短編】 家庭訪問の日

 今日は家庭訪問なので、私はちゃんと服を着て、呼び鈴が鳴るのをじっと待っていた。 「こんにちは。ミミさんの担任の小比類巻と申します」  担任の小比類巻は、玄関ではなく冷蔵庫のドアから現れたのでびっくりしたが、時間通りに来たのでまあいいかと思った。 「ところでミミさんが見当たりませんが、どちらに?」  ミミは空想上の自由な子どもだから、多分私の頭の中にいます。 「ああなるほど、そういうことなのですね。学校では普通にミミさんと接しているので、ご家庭にも居るものだと勝手に……」