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私はむかし、子どもでした。 体が小さくて、いつも大人を見上げていましたし、よく転んで怪我をしたり、泣いたりしました。 王子様と出会ったのは、小学校の鉄棒を、なんとなく飛び越えようと思ったら鉄棒に太ももを激しくぶつけて、地面でのたうち回っているときでした。 「鉄棒は、手でつかんで体を回したりするものなのに、君はなぜ飛び越えようとしたんだい?」 王子様は、無邪気にそう質問しました。 「今は太ももが痛くて死にそうなので、質問は後にして下さい」 私は、そう答えるだけで精一杯
“サンダル”という言葉が思い出せなくなった。 ちゃんとした靴ではなく、ゴミ捨てをするときや、ちょっと玄関の外に出たいときに履いていくのに便利な履き物。 私は、安売りのときに百円で買ったそれを、もう五年以上も使っているが、名前がどうしても出てこない。 「それは、もしかしたら“サダン”のことですか?」 一週間ぐらい前から、私の家に棲みつくようになった、目の尖ったの少女がそう言った。 「あたしも自分のサダンが欲しいのです」 私は、彼女の“サダン”という言い間違えを聞き、よう