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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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2022年3月の記事一覧

【短編】 座敷わらしみたいな少女

「あたしは、見える人にしか見えないの」  確かに、その座敷わらしみたい姿をした少女と話をしたり、誰かに紹介しようとすると周りから変な目で見られてしまう。 「よく分からないけど、妖怪っていうのはそういう存在だから、あまり気にしてもしょうがないでしょ?」  少女はそう言うが、自分にだけ何かが見えてしまうのはとても怖いことだし、見えないほうがたぶん幸せだ。 「あたしは、自分の姿がちゃんと見える人間がいるだけで嬉しくなっちゃう。あなたみたいな人間に会ったのは百年ぶりよ」  少女は、

【短編】 雨に唄えば

 曇った空から、一本の赤い傘がゆらゆらと地上に降ってきた。 「ねえ、この傘、売ったらいくらになるかな?」  妹はそう言うが、中古屋に売っても、たぶん千円ぐらいにしかならない。  だから売るよりも、自分たちで使ったほうがいいんじゃないかと、私は妹に言った。 「たしかに、傘があれば雨に濡れなくていいし、買えば一万円もするからね」  私は、お前が使えばいいと言って、その赤い傘を妹に渡した。 「わあ、本当にいいの? 自分の傘なんて初めてだから、なんだか緊張しちゃうよ」  それから一