プロでも使えるMIXテクニックEQ編Vol.6:最先端のEQ処理はCOMPでやろう!時間軸での周波数の住み分け。

EQの基本シリーズも一旦ここでラストです。

最先端っていっても、当時(2016~17くらい)これを自力で見つけた方法なんだけど、同じ事を考えた人が多発的にいろんなとこで居たんだろうね。最早、正攻法の一つになってきた感じ。Vol.5の最後の方に軽く書いてたんですが余談が多すぎて、ぼやけたのでもう一度触れておきます。

さて、EQの目的って大まかに2つ。

①音を作る

こっちは正直ご自由にどうぞって感じかな。音の好みは千差万別だし、正解も無いけど、一つだけ言うとしたら元々のトラックに無い周波数はいくらブーストしても上がらない。元音の状態が大事=つまり録り音ありき。EQが効かないじゃなくて、そこに音が無いか薄いのね。録る時にしっかり音を作るってのはこういうとこにつながってきてて、後でちゃんとやるからとかで適当にやると、いざって時に同じフレーズとかノリとかでなくて四苦八苦するので、やるべきときにちゃんとやって忘れる方がいいです。

生音系のソフトシンセは既にかなり整えてあるから、ブーストよりは②の周波数の整理が主になると思う。それぞれが単体でいい音に聴こえる様にフルフルに音が鳴っているので、そこをどう他のトラックとの棲み分けるかが本当に手間。

後、元音の修正依頼が出来ない場合もあるじゃない?クリップしてるとかの事故系は無視して、EQでなんとか出来るかもなレベル。そういうときは自分の耳だけを信じてやろう!画面上とんでも無い形になってるかもしれないけどそれでOK。目で見てると見た目で調整しちゃうからね。例え15dbブーストとかになってても良いの、元音のその帯域がそこまでブーストしないと欲しい様に聴こえレベルでしか音がなかったてことだから。

こういう時は自然とSSL系のEQに手が伸びる。ブーストが嫌味じゃないからだと思う。さらにここはハードウェアのEQのほうが自然な感じになりやすいので、すごく高くなくてもいいからそれなりのアウトボードEQはあるといいです。後、ここに関してはグライコよりもパライコの方が不本意に細くなるのを防げる感じですね。

②周波数の整理

こっちが今回の本題で、タイトルでもある時間軸での周波数の整理のやり方です。

ギターやシンセがカッコいいバースがあるとして、そこに歌が入るとギターが被って歌が抜け聴こえずらい。じゃあ、被る方のコード楽器に歌と被っている帯域をカットしようってのが普通。

でもこれが普通のEQ処理だと、歌がないタイミングもずっとその帯域がカットされてる訳で、せっかくのバンド隊の見せ所もボーカルに気を使ってる感じ。勝手にこれを「一世代前のEQ」とします。プロでもスカスカだなって人のEQはここ止まり。海外のMIXとの差の1つがこれかなって思う。時間軸の使い方がのっぺりしてる様に聴こえる。

で、どうするかっていうと、サイドチェインとマルチバンドコンプを使いこなしていきましょう。サイドチェインって、EDMでベースや上モノをブワブワさせるものなイメージが強いけど、そっちが応用ワザで今からの説明が基本だったりする。 

さっきの例を使うと歌に被るトラック(もしくは、それらをまとめたBUS)にコンプをインサート。で、前にいて欲しいトラック(ここで言うと歌のトラックね)からサイドチェインの信号を先程のコンプにSENDします。DAWによってやり方は違いますが、こうすると歌があるときにだけオケの方にコンプが掛かって音量が下がる訳ね。逆を言えば、歌がないときはコンプがかからないから、つまりオケは可能な限りあげちゃって良い。

そうすると、オケが主役→歌が入ったらオケが少し引き下がる→歌が止まったらオケが出てくるみたいに、プロミュージシャンがLiveでやってるみたいな駆け引きが自動で出来るから、時間軸で主役(聴こえてて欲しい音が)が変わる。

これはKICKとBASSの関係にはかなり有効で、KICKからBASSへのサイドチェインをすると、同じタイミングで鳴った時の低音の暴れを逃がせるから、BASSの方にKICKとの住み分けのEQが要らなくなる。こうすると、KICKが鳴ってない時のBASSの音量が稼げるから安定した低音感を保てる。

邦楽を聞いてると低音のキープが下手だなって思うのさ。まあ主に聴くのがリズムか歌かのお国柄の違いでもあるんだけど、ベースってハーモニーの最低音をつかさどるから、そこがちゃんとしてないとピッチが悪く聴こえる。どっかで書くとは思いますが、ボーカルとベースのピッチに関しては注意深くチェックしてみてください。ベースが安定して聴こえてるってのが、楽曲の印象を決める要素として大きいです。 

更に応用でこのインサートをマルチバンドコンプにすると、音量だけじゃなくてねらった周波数だけ時間軸で逃げれるって事。みなさん、ボーカルの歯切音を抑えるのって何って聞いたら、すぐにディエッサーってなりますよね?ここの応用していく感じです。別にボーカル専用のプラグインではないので、いろんな時に使えます。一緒だけ別の補足を入れて置くと、ボーカル等のリバーブのトラックはリバーブの前にディエッサー入れておくと、嫌な反射音が入りにくくなります。

マルチバンドはどんどん進化していて、つい最近10バンドのマルチバンドコンプも発表されてました。

サビで入ってくるストリングスが邪魔なときとか、イントロで弾いてるリード音がサビでも鳴らしたいときに、どっちも目立ってほしいから歌の切れ目切れ目で聞こえる様にしたいとか、アイディア次第では何でも出来る。

サイドチェインに使うのコンプ正直何でも良いんだけど、いろいろ試した感じ個人的にお薦めはWAVESのRenaissance Compressorかな。これが一番掛かり方が分かりやすい。ちなみにGRの目安は-2~3dbでOK。 こんだけのリダクションでもかなり効果があるよ。マルチバンドだと、FabfilterのPro-MBがお薦めです。

ちょっと難しそうに見えるけど、実は簡単だから試して見て下さいな。

何のどこがどれに干渉してるかを聞き取れる様に慣れば、自ずとやり方は見えてくるし、アレンジや録音のタイミングでちゃんと避けれるようになってくるので、トータルでクォリティアップに繋がります。

自然とに使えるようになると「俺、MIXうまくなったかも」って思うよ(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?