プロでも使えるMIXテクニックEQ編Vol.2:メーターを埋める低音のトリートメント

実は、前回に書いた-10db ~ -6dbに収めるには中々難しかったりします。だいたいの原因は「不要な低音」です。オケの中では一切聞こえてないのに確実に存在し、マスタートラックのメーターをガンガン埋めていき、思うように音量のコントロールができなくなります。

つまりこの低音は凄いパワーがあるので適切にトリートメントしていく下処理はだいぶ効きます。仮に全てのトラックに30~40hz以下を全ての切るハイパスを入れたら、音の印象ははそんなに変わらないのにメーターは下がっているはずです。

 このハイパスEQは、通常のEQと分けて、上から2番めのスロットにでも統一しておくと確認しやすいかなと。これ同様に同じカテゴリーのプラグインは同じ列にある方が後々把握しやすいです。

例えば、ハイパス→コンプ→EQ(→EQ2→、、、)など、一番上を開けるのは、後で何かしら追加したくなったときに開けておきます。どうしても収まりが悪いときに、TAPE系を挿してみたりとか。

で、EQの根本はマイナス方向でOKだと思います。「いやプラス方向でしょう!」って人も多いと思うし、僕自身もそうでしたがブースト方向ってレベルの管理が難しいのと、音の変化が大きいんですよね。元音を整形するくらいのときはブーストもよく使いますが、基本余計な帯域を削っていくと目立ってほしいところにだけエネルギーが残るのでブーストもと同じような結果になります。ここまで行くのに10年くらいかかったかも知れないです(笑)

最近のサンレコかなんかの記事でトニー・マセラティが同じことを言ってたので、ここも彼の感覚ってのが少しわかって来たのかも知れません。ちなみに尊敬するエンジニアなんていませんし、誰がどれをやってるかなんてほとんど調べたことないです。ただ有名になる人はそれなりの経験値をもって話してると思うので、素直に知識として受け入れてます。

さて、個人的によく使うEQとして、以下のものがあります。

・Sonnox Oxford EQー切れ味がかなり鋭いので、要らないところを削るには最適。主にダンス系の際は必須です。ここ数年はFabfilter/Pro-Q3にほとんど切り替わってたのですが、なんかFabfilterってマジックがないというか、数字通りすぎて味気ないなって思うことも増えてきて、また使う機会が増えてきてます。今の人には古い類なのかもしれないのですが、SONNOX製品は全部すごいプロの道具だと思います。

・Wave SSL Channel ーカットもブーストもいやらしさの無いザックリ派。生楽器系によく使います。このモデルの広めなQで大雑把な音の根本を作ることも多いです。ただレベルオーバーのアラートは常に気をつけてください。

・Waves Qシリーズをさっきのハイパスに使ったりします。結構なんとなくなのですが、個人的にしっくり来るのかと思います。後、微調整用にRenシリーズを他のトラックと大雑把にバランスを取る際にも使います。大雑把な作業にかなり向いているのでキャリアの初期からRenシリーズは手放せないです。

その他、Redline、Sonalksiss、Equlity を初めとした国内外問わず有名所はほとんど手を出しましたが、結局は不思議とここに戻ります。多分見た目ほど音に切れ味がなかったんだと思います。

 そうそう、以前と大きく違うのはUAD-2は完全に卒業してます。それぞれの音もいいですが、ちょっと昨今の仕事上であそこまで倍音だ歪みだなんだがあるとちょっと邪魔くさいんですよね。同じような感じがほしければ、IKのT-racks系の方がもっと使いやすく好みです。まあ、ビンテージモデリングってのも飽きたのと、言ってるほどよくないかなと。録りのときにいろいろかけてるから、すでにそういう味ついてる。ここ重要が意外と重要なポイントで、昨今のソフトシンセ類も音源として作られてるときにしっかりいろいろ掛かってるので、何かとクリーン系のほうがやりやすいんですよね。

歪みとか倍音って音が良くなる魔法のような感じするけど、滲ませるというかどんどん鮮度を落とすものなので、どうせかけるならパラレル(掛けたいトラックを複製してそっち掛けて混ぜる)のほうが立体感出しやすいです。

 「ソフトシンセがキレイすぎるから軽く歪ませて鈍らす」

これもよく聞きますが、下手にプラグインでどうこうするより、一度アナログにでも出して戻したほうが早いです。別に高級マイクプリとかじゃなくても(あればあれですけど)Mackieのミキサーでもなんでもいいです。なんならアナログケーブルを余ったアウトから余ったインに戻すのだけでも効果が出ます。勝手にケーブルサミングって言ってますが、いったんアナログに出すことで、いい意味で音が悪くなるので音が分離するんですよね。是非お試しあれ。


前置きはここまで。まず各楽器をソロにし、急激なカーブでハイパスを入れて行きます。音が変わらないギリギリまで切って行って、個々だと思った所から軽く戻しつつEQカーブを結構緩めます。ここはその場その場の感覚なので厳密な数値は無いです。ここを神経質にやるとカリカリになります。

 

その後、他の楽器を一緒に聴き、バランスを取ります。ちなみにここで先にキックとボーカルの音量をしっかりと決めてしまうと、後々困りません。

EQの作業は他のトラックかの兼ね合いを決める作業でもあるので、個別のトラックをソロでやっていっても後々手を入れる手間があるので、この時点でなるべく他のトラックを鳴らしたり鳴らさなかったりして、確認してみてください。ここもカリカリを防ぐのと時短になります。

まずVolとPANの調整、それでも納得行かないならカブリを削りにいきます。目立たせたいトラックじゃない方のトラックにEQを挿し「グリグリ」です。グリグリとは、Qを細めにし、フルブーストで周波数を上下にグリグリ動かします。ここで濁るというかメインにかぶる帯域、これこそが「この曲の中で邪魔な帯域」です。そこに周波数を設定したままカット方向に数字を動かし、Qを広げて頃合いを見ます。そして、さっきと同様にちょっと緩めるのがポイントですね。ハッキリくっきりし過ぎると音楽的では無くなってしまうのでアバウトさをは重要です。この方式で大体のEQポイントは探せるでしょう。ちなみに1箇所とは限らないです。

キックもベースも大事な昨今のダンス系なら、EQで処理をする前にサイドチェーンを使うのもありです。いわゆる時間軸で避ける方法ですね~。これだとそれぞれのトラックが持っている個性を変にいじることがなくカブリの処理が出来ます。キックのタイミングでベースを凹まして、同じバスに送ってコンプでまとめる事を多々ありますがここではサラッと。(詳しくは、そのうち書くサイドチェーンを使いこなせ!にて)

 ちなみに切り過ぎには注意です。先ほどのハイパスも全てのトラックで必ずしも必要な訳では無く、あくまでも曲に対する理解度で調節下さいませ。それが個性。

EQは元音にない音は触れないし、全部の音でスタート(ブーストとかカットの0の位置)が違う。だから人の数字は参考にはなるけど、最適にはならないってことです。

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