プロでも使えるMIXテクニック 実際のMixの流れ編 Vol.13:上物編 コード楽器の住み分け
前回まででリズム、ベース、歌と来たわけだけど、この3つの要素だけで結構聴けるレベルの曲やミックスじゃないとダメだと思う。これ以外って、簡単に言えばそのジャンルや曲を彩る為の装飾ね。もちろんここも重要だけど、人気が出た曲ほどオケもコード進行もシンプルだったりする。
上物=装飾品と捉えて、外見(服装かな?)で考えてみると、ちょっと毒舌になるけど、服装が地味な子がアクセサリーとかサングラスだけ高いの付けてるとか、ダサさが増すじゃん。ちょっとズレは好みの問題だけど、そういう事じゃなくて、そもそもの素材やジャンルを無視した過剰な装飾品の足し算は、結局マイナスを生んでる。
前にあった案件で、ドラムとベースを同時にレコーディングと歌のレコーディングまで担当したんだけど、本人達が(と言うかギター)がどうしても自分の家で納得行くまでやってきたいと。その彼はリーダーらしく、歳もそれなりで色んな機材を買えるらしいんだが、冷たく言うと腕が無いのを機材で埋めてるタイプね。よくいるでしょ(苦笑)
まあ結局、家でやってきた作業の全部がボツで、スタジオでやり直しなって、予算もリリースのタイミングも余計に掛かった案件だったね。
どんなデータかというと、ギターが1人なのに、アコギが二本(ストロークとリード) 、エレキが四本(バッキングが二本、リードが二本)あって、それぞれが全く噛み合ってなくて、アコギとエレキのストロークすらあってないレベル。更にこのバンドは上手いキーボードの人がいて、既にピアノとオルガンが程よく入ってるから、更にズレが目立つわけだ。つまり、人の音を聞いてないどころか、自分の別テイクも聞いてないってこと。これは極端な例だけど、コード楽器が過剰なアレンジって本当に多い。
以前も書いたんですけど、ミックスの前のアレンジとレコーディングがミックスのクオリティのほとんど占めてると思います。あえて書くなら、アレンジ5割、レコーディング3割、ミックスで出来ることなんて所詮2割程度 だと思う。それくらいの気持ちの配分って事ね。
さて、上物の処理に入ろう。前置きが相変わらず長くてすいません。
今までの三要素(リズム、ベース、ボーカル)以外に一番重要なパートを決めよう。トラック系ならシンセとかエレピとか、バラードならピアノやストリングス、バンドものならギターとかだよね。言い換えると比較的にずっと鳴っている音だね。
何トラックも上物があってもとりあえず優先順位を決める。パートって個別のトラックじゃくて、ギターのバッキングとか、ピアノ、シンセ、ストリングスとかってことね。今までの感じが伝わってると、BUSにまとまってるはず。
で、そうやって選んだその曲を彩る基本をしっかり作って行くことが、その先に向けて重要。
上物処理の基本は先の三要素を邪魔しないようにしながら、いかにカッコいい音にするかだと思う。順位を決めて音を決め込んで行くと、必要無かった音が意外と出てくる。派手なことをあんまりしないのに上手いと言われるプレイヤーはここのオケに対する自分のパートのバランス感が素晴らしい。アレンジャーがミックスもするタイプのメリットはここで戻れるとこだよね。
実際にどうするかって言うと、この部分は過去のシリーズも合わせて読んで下さいな。
個人的な手法の基本として、まず1つ1つの上物トラックの音をソロで強い音にする。次に主要三要素と一緒に聴き、上物の邪魔な要素を削っていく。例の周波数と時間軸でやってきます。この時三要素のボリュームとかを可能な限り触らないのが鉄則で、ここを触るとバランスの基準がどんどん崩れるので作業量が激増します。
ここは最初から他の音を聞きながら作業しないと意味がない的な反論があるかもしれないけど、こっちの方が好み。実際にやるとそうなんだけど、この回り道の方が仕上がりが丁寧になるからあえてやりたいです。
後ろに下げたい音とかも、一旦しっかりした音にしてから音の前後を作る様にしている。その方が後ろ下がった音もちゃんと存在感があるからね。
音像の下げ方のポイントは、現実でどうなれば音が遠く聞こえるかを再現すること。離れた場所にあるだけで音そのものは変化しないから、まずしっかりした音を作る。で、それが遠くで鳴るってことでその輪郭がぼやけてくるわけだから、音のアタックやハイを削ったり空間系をインサートで使ったり等で距離や位置を調整する。
下処理をしないで、いきなり空間で処理しようとする埋もれるます。後ろにしたい音がすぐに聞こえずらくなっちゃう人はここに気をつけよう。
更にMS系のプラグインとかで、センター音だけを更にぼやかすと、空間の構築が上手く行くと思う。後、あえてS1みたいなボチボチのクオリティのwidth系で位相を崩すのも後ろに下がってくかな。
今回のまとめとして、何度も言うけど、ミックスの基本は完全なアレンジがなによりも重要。
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