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マルコスとドゥテルテ政権交代は何年後? 注目される「3きょうだい」

フィリピンではボンボン・マルコス氏(64)が、次の大統領につくことが確実になった。いま現地では、こんなことを言うひとがいる。

「6年の任期でちゃんと政権交代がされればいいけど」

政権交代は6年後にある?

ボンボンの父親はフェルディナンド・マルコス元大統領だ。
1965年に大統領に就任し、69年に再選をはたすと、72年9月に戒厳令を宣言。議会や憲法が停止されるなか、マルコスの独裁体制がはじまった。81年に戒厳令は解除されたが、86年の「ピープルパワー革命(エドサ革命)」で国外に追放されるまで、マルコスは20年以上、大統領の座にすわったことになる。

マルコス夫妻を中央に、左からビニー、サンドロ、右端がサイモンの3兄弟

このときの教訓から、フィリピンでは憲法で大統領の再選禁止がさだめられたほどだ。
だから「独裁者の息子」のボンボンも、父親とおなじような道を歩むのではないかと危ぶむひとがいるというわけだ。

でも、別の見方も複数の人から聞いた。
「6年じゃ足りない。ボンボンの次はドゥテルテが大統領になって、その次はボンボンの息子のサンドロが大統領になって……」

ドゥテルテといっても、まもなく任期が終わるロドリゴ・ロア・ドゥテルテ大統領(77)のことではない。

次はふたたび「ドゥテルテ」か

今回の副大統領選で、ボンボン以上のランドスライドビクトリー(地滑り的勝利)をはたした、サラ・ドゥテルテ氏(43)だ。人気の高いドゥテルテ大統領の長女で、95%開票の時点で3058万票と、次点のキコ・パンギリナン氏(898万票)の3倍以上の票を得た。

ダバオ市内にはられた副大統領候補サラのポスター

サラは大統領選への出馬を辞退し、副大統領候補としてボンボンとペアをくんで共闘した。人気のあるドゥテルテがいたからボンボンも勝てたといわれる。その貢献から、サラは「史上最強の副大統領」になるとみられている。

というわけで今回の選挙のあとは、
ドゥテルテ家とマルコス家の子どもたちが、代わる代わる大統領をつとめていくのではないか、というのだ。

麻薬疑惑にイケメン……ドゥテルテの3きょうだい

弁護士の資格をもつサラは、父ドゥテルテが市長をつとめていた南部ダバオ市の副市長をつとめ、2010年には市長に当選。父の市長時代をはさんで、16年にふたたび市長についた。

ダバオ市内で11年、貧しい家族がまだ住んでいるのに、裁判所の命令で家が解体されるという現場にかけつけ、現地にいた裁判所の執行官をぶんなぐったというエピソードが有名で、これが父親ゆずりの「タフさ」や「弱きものの味方」の象徴のようになった(下は当時のニュースの動画)。

現地のビサヤ語で「愛される、大事な女の子」を意味するインダイ・サラの愛称で人気をほこる。

ドゥテルテ大統領の子どもは4人きょうだいで、サラをふくむ先妻の間にうまれた3人がすでに政治の世界にいる。

ダバオの副市長もつとめた長兄のパオロ・ドゥテルテ(愛称はプロン、47)は、かねてドラッグとのつながりがあるとのうわさがたえず。17年には、麻薬犯罪防止にいそしむ父親が大統領をつとめるなか、パオロの疑惑を明らかにするため上院の公聴会まで開かれたほどだ。

それでも19年に下院議員に当選した。

次男バステ、わたしは好きな顔です

弟のセバスチャン・ドゥテルテ(愛称バステ、34)は、今回の選挙で姉の後をついでダバオ市長に当選する見通しだ。「イケメン」とされ、これまでテレビ番組やコマーシャルなどにも出てきた。

イギリスの大学出身、マルコス家の3きょうだい


一方のマルコス家、ボンボンにも3人の男の子どもがいる。いずれもイギリスの大学で学んだという恵まれた環境で育ち、まだ20代だ。

このうち長男のフェルディナンド・アレクサンダー・マルコス(愛称サンドロ、28)は、今回の選挙で下院議員に当選する見込みだ。元大統領の祖父、大統領になる父のフェルディナンドという名前をついだ彼こそ、「サラ・ドゥテルテの次」の大統領になるのでは、とうわさされているサラブレッドだ。

マルコスの選挙本部内にあったボンボンと3きょうだいのパネル

次男のジョセフ・サイモン・マルコス(26)は、父親につきそってレイテ島タクロバンでの集会にも参加した。ボンボンに「自分よりハンサムな人を舞台にあげるなと母イメルダに言われてきたんだけど、息子です」と紹介されると、「キャーッ」と歓声があがった。

三男のウィリアム・ビンセント・マルコス(愛称ビニー、24)も政治の道に進むことに意欲的といわれ、ラグーナでの集会ではウクレレの演奏まで披露した。

当人たちはやる気満々のようにみえる。

あとはよい政治がつづくことを願うばかりだ。
ただ、「長期政権」になるほど、汚職・腐敗などの問題がおこりうることだけは、まさにマルコス家の過去から学ばなければいけない。


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