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noters [six] noteの宇宙

マドリードには、プラド美術館をはじめ、世界の芸術家たちの作品を集めた美術館が多くある。その中にソフィア美術館(正しくは「ソフィア王妃芸術センター」)もあって、ピカソのゲルニカがあることで知られている。
ダリの作品も多くて、私はプラドよりソフィアのほうが好き。

いつだったか、日本から訪ねてきたデザイナーの友人を案内して、ソフィア美術館を訪ねたときのこと。

超有名な大家の作品展示とは別の展示室で、知的障害のある人々のアート作品のコーナーがあった。友人の彼女は、その頃そういう系統の作品に興味を持っているということで、我々は展示を見てみることにした。

こんな展示もあった。

今回、そこで見つけた1人のアーティストの作品を紹介したい。
(当時使っていたケータイの写真機能が良くないので画像が悪いことをお詫びします…)

ワタシ的に近年一番の衝撃的な作品群

なのだよ。

怪物の手帳

ガラスケースの中に入っていたのは、皮の表紙の古ぼけた手帳だ。
何冊も展示されていたが、いずれもこんな感じ。
大判のスケッチブックなどではない。
約10cmx15cmくらいの「手帳」である。

皮の手帳は重厚な感じ。

ガラスケースの中にさまざまな手帳がページを開いて展示されていた。

例えば、こんなの。

ひしめいてる。

みっちり虫と犬

整然と並ぶ昆虫たち。一匹一匹が違う。
右ページは、さまざまな種類の犬たちが描かれている。

何だこれは?


それが私の最初の感想。


緻密さ&詰め込み感がすごい。

それは次の感想。


以下、彼の作品が続く。

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非常に細かい文字列など。スペイン国土の地図も見える。


そして、こんなの。

描かれているのは多くの兵士や戦車


いやいや。これだけじゃない。
こんなのもある。

個性豊かなポット群


すべてこんな調子だ。

ああ、手帳の他のページをめくってみたくなる。


スペインらしく、闘牛士と闘牛も。


どこか不思議な絵もあった。

左が魚系? 右が鳥系?



手帳の中の宇宙

中でも特に好きなページがある。

見てほしい。これ。

私のお気に入り。

魚たち


それぞれのページに作者の執着のような魂がこもっている。


一体、これらの作品群の作者とは誰だろう。

怪物。

そんな気がした。
手帳の中にコツコツと描き溜め、魂を込めた謎の人物。
こだわらずにはいられない性格。

各ページに描かれたのは不思議な宇宙みたいだ。


怪物 Manuel Montalvo

これらの絵の作者は、1938年生まれのスペイン人、Manuel Montalvo(マヌエル・モンタルボ)である。

裕福な家族のもとに生まれ、独学で絵を学んだ。
20歳くらいで才能を見出され、幾人かのアーティストたちとも交流を得たらしい。
しかし、彼のスタイルはアートの世界にしっかりとした居所を見つけることはできなかったようだ。


すでに何年か前に彼は他界している。


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まだ埋まりきっていないまま残されたページ。多くの顔と文字。


彼がなにかの障害を持っていたのかどうかは、私にはよくわからない。
また、この皮手帳に描かれたイラスト群が彼のメインの画風(?)や作品であるのかどうかもよくわからない。

小さく細かい字、細密なイラストと、ページいっぱいいっぱいに同じアイテムを揃えて詰め込むスタイルに、なにかこだわりの強い人であることを感じた。

Manuel Montalvoのことは、私が無知なだけで、本当は有名な人物なのだろうか。
あまり知られていなかったのか。
アーティストとして正統に認められた人だったのかどうか。
そのあたり、よくわからない。
(誰かご存知なら教えてください)

とはいえ、彼はスペインが誇るソフィア王妃芸術センターの一角を自分の作品で飾ったアーティストだ。やはりすごい。


有名な人たちなんだろうか。このページも私のお気に入り。



クラシックな皮手帳の1ページ1ページが尊い。