見出し画像

切断危機一髪

少し間が空いてしまいました。
最近右足が痛んで痛んでかなわないので中々動けずにいました。

それはさておき、私は緊急手術を受けた直後、麻酔で濁る意識の中でも執刀医が言ったある言葉が、未だに背筋を寒からしめるトラウマワードになっています。

「右足はつなぐ事はできましたが、予後が悪ければ切断かも知れません…そうならないよう全力は尽くします」

当時の私は泣いて首を振り嫌だと叫びながら泣きました。
足を失うなんて!絶対嫌だ!嫌だ!嫌だああああ!
しかし落ち着いて考えれば、開放骨折と一言で言っても骨だけがポキッなんてもんじゃなく、周りの肉もほとんど喪失し、手術を終えたとは言え、骨が依然剥き出しな状態で何を回復できようか。
緊急手術後、右足の指の動く感覚はあった。まだ激痛だってジンジン感じる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
イベントにも、ショーにも行けなくなる!(本気)
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!
その時の高層ビルの屋上から突き落とされたような恐怖は形容できない。

しかし横たわることしかできない私がどれだけ咽び泣こうが、喪失した組織は戻らないし、すぐに治るわけがない。
激痛があるなら、神経は繋がっている。

失ってなるものか!!!!!!!カッ!

痛いのは辛かったが、足の指を事あるごとに動かした。
神経を絶やすな、反応が鈍いけど信号を送り続けろ、ヒラメ筋とアキレス腱は無傷だ動かせ!動け、繋がれ、絶対失いたくない!!
ギブミータンパク質!コラーゲン!
うおおおおおおおおおおおお失ってたまるかあああああああああああああ

某大学翻訳センターのコラーゲンサプリを注文したりした。
朝ご飯についてくる牛乳はいの一番に吸い込んだ。
肉だ、肉をくれ!

このプップップッが案外精神を削る

それでも右膝下の30%近い皮膚を損失しているので、血液など体液はダダ漏れなんですよ。組織の回復のためには体液(浸潤液、浸出液)が不可欠ですが、多すぎると浮腫みや、浸潤液に含まれるタンパク質などの喪失しもつながるので、適度な量や湿度に保つため陰圧閉鎖療法という療法が使われました。
正式には陰圧創傷治療システム、VAC療法、局所陰圧閉鎖療法…

詳しくはググって下さい。

そらあんだけ皮膚もないんなら何もかもダダ漏れで多すぎるだのなんだの調整も利きませんからねぇ。当初キャニスター(またはVAC)がプップッ音を立ててるのが、命を吸い出されてる感覚がして、何より正体が判らなくて(早く治る機械着けてますから~って説明だったので詳しく知らなかった)夜でも吸い続けてるから、尖った神経を刺激するには十分だったわけで。
そしてたまにピーピーピー!ってアラーム鳴るんですよ。これがまた怖くて。
しかしある程度精神的に余裕が出てくると

覗いてみたくなるってのが好奇心でタヒぬタイプのヲタクってもんですよ!!!!!

VACは持ち運びできるようにショルダーポーチに入ってたんですが、いつもマジックテープで蓋がしてあったためどんな機械が入っているのか判らなかったんです。なので、ある日蓋を引っ剥がして中身の機械を取り出して診たんです。

VACのドレーンタンクには

真っ赤な私の体液(血液が混じってるので赤い)が吸収剤に吸われてもなお
たっっっっっっっっぷりと

おぅふのぐえのぶはっ

よくもこんな量垂れ流して大丈夫だなぁ…点滴ってすげーや!
と現実逃避するには十分な迫力でした。あれを一ヶ月と二週間着けて、結局どんだけの体液を損失したのか。あーーー怖い。

ココは整形外科です。

周りには首を固定されてたり、足が変形していたり、腕を三角巾で吊ってたりする患者さんもいらして、廊下ですれ違ったりする訳ですが、どこかを切断してしまった患者さんも勿論いらっしゃる訳で。
男性だけど、私と同じように右膝から下が無かった患者さんがいらして。
その方を拝見するたび、自分もあぁなってたかも、という想像が心拍をブチ上げたんですよね。
母から「何でそんなん考えちゃうの?」とか呆れられましたが

PTSDなんだよぉ!!!!!
想像が繋がっちゃうんだよ、どうしても!

日常生活で、車いすユーザーの人など障がい者さんとはごく当然にすれ違ってきたのに。
事故に遭って、まさかの事態を経験すると他人事に思えなくて。
体の一部を失うという決断や、それに付随する恐怖をどうしても自分に置き換えて考えて思い詰めてしまう。

しかし、執刀医の尽力のお陰で、形は歪にはなったけど、右足は爪の一欠片も残らず繋がり、機能は失ったとは言え切断の危機は免れました。
背中の皮膚と広背筋を切除して移植し、太ももの皮を剥いで拡げて移植し、やっとこ、包帯を巻かずには済むくらいには傷も塞がりました。
ちょっと皮が足らなくて開きっぱなしだった所もありましたけど(チラッ
あの折れたソーセージ状態からは脱すことができました。
ひたすら、今の医療ってスゲー!って感嘆するばかりです。

事故後一週間くらいで付いてくれた理学療法士さんが、三週間目の頃、リハビリと回診がバッティングした時、ガーゼ交換を見ていたそうですが

「スネのココ(真ん中)から足首まで全部丸見えでした」

アタシャ人体模型か?!

その夜咽び泣いたのは言うまでもなく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?