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知財④_知財の会計・税務処理

知的財産権の会計処理について解説する。
知的財産権の会計処理を取得、償却、処分(売却)の場面が想定され、それぞれについて解説する。

【取得】

 自ら開発・出願する知的財産権は、自己創設であり、本体価格はない。
ただし、取得に要した費用(出願費用等)は発生しており、特許事務所への手数料等が資産計上される。ただし、場合によっては、取得価額に算入せず、費用処理することもある。

 個人的な見解からすると、本体価格がないのにも関わらず、付随費用のみ資産計上するということに違和感がある。付随費用はあくまでも本体価格に加算する額に過ぎない。そのため、手数料等も含めて、費用計上している会社が多いのではないかと推察する(この他、手数料等の重要性がないため、費用計上しているという理由もあると推察する。)。

商標権については、取得時に資産計上をした場合には、更新時の手数料も資産計上することのほうが整合すると考えるが、手続も煩雑となることもあり、費用計上していることが多い。

【償却】


知的財産権に関する耐用年数は、以下のとおりである。

特許権 8年
実用新案権 5年
意匠権 7年
商標権 10年

このうち、商標権については、減価償却資産であるため、時の経過に従って、減価していくことを前提としている。一方で、商標権の法的な実態は、使用すれば使用するほど、商標に信用力が化体し、商標権の価値が高まるものである。このように、税法上の考え方と商標の法的実態の間にはギャップがある。

 税務上、著作権は無形減価償却資産に分類されてておらず、その耐用年数は定められていない。著作権法上、著作権の存続期間は、著作権の創作時から著作者の死後50年経過するまでとなっている(著作権法51条)。個人的な見解からすると、税法上著作権の耐用年数は定められていない理由は、①著作者の死を確定できないため、償却年数を確定できないこと、②償却期間が長いといった理由があると推察する。

【処分(売却)】

知的財産権を売却した場合には、取得原価と売却金額の差額(売却金額のほうが大きい場合)を売却益として、法人税上、益金(課税対象)となる。また、知的財産権の売却に関しては、売却益は消費税の対象ともなる。

商標権については、売却に際しては、取得原価と売却時の時価のギャップが大きく、多額の売却益が出てしまうことが多い。売却益が課税対象であるということから、売却を選択するには大きなハードルがあると推察する。

この点、近年では、知的財産権の売却ではなく、会社分割の活用による知的財産権(商標権を含む。)の整理をする企業も出てきている。

税法上、一定の要件を満たす会社分割では、資産を簿価によりで引き継げるため、売却損益の計上はされない。そのため、多額の売却益が出るという点を解消できる可能性がある。

※適宜、追記、修正する場合があります。

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