秋田 乳頭温泉 ひとり旅

2泊3日 乳頭温泉ひとり旅

人気の秘湯ランキングでよく目にする、秋田 乳頭温泉。昔ながらの木造の建物が雪で覆われ、ぽわっとあかりに包まれた、日本昔ばなしの世界のような景色。一生に一度でいいから行ってみたいなぁ。一週間に2、3度ひとり近所の銭湯でぼーっと湯に浸かり、水音を聞くのが何よりの至福な専業主婦のわたしが、勇気を出して行ってみましたみちのくひとり旅。

9時20分伊丹発 仙台空港着。
秋田空港から乳頭温泉へのシャトルバスもあるので、本来はそちらの方が近いルートなのかもしれません。
なにせ初めての秋田県だったのと、新幹線大好きなむすこの影響もあり、東北新幹線こまちに乗ってみたい!はやぶさとこまちの連結見てみたい!というきもちもあり、仙台から乳頭温泉最寄りの田沢湖駅まで新幹線で北上するルートに決めました。
時間に余裕があれば、仙台駅で民芸品の買い物もしたい、仙台グルメも堪能出来たら。。。なんて盛りだくさんな期待をかかえつつ、誘惑をふりきって行き道は行けるところまで急ぎます。
仙台駅から田沢湖駅までこまちに揺られ、1時間20分。
そこからローカルバス(羽後交通)に乗り換え、45分。

PayPayが使えてとっても便利。運転手さんの声かけもやさしくてうれしい。
路面に雪は残っていないけど、急なカーブの坂道をていねいにていねいに運転してくれる。

初めての土地でバスに揺られ、車窓から景色を見るのはほんとうにわくわくする時間だ。駅から走るごとにすこしずつ減っていく民家や商店。雪でつぶれてしまった小屋。地元の人たちが、どんな暮らしをしているのか想いを馳せると胸がきゅんとする。


松林に囲まれ、午後の日差しをきらきら反射する田沢湖の水面が見える。あおの深い色。あー、いい!明日は湖畔をさんぽするのもいいな。

急な坂道をカーブを繰り返し、バスはぐんぐん山道を登っていく。
ブナ林におおわれた山道。車道は雪どけしているけれど、ガードレールの外はまだまだ雪景色。グレーの山肌に白い雪、ブナ林。

夢にみた乳頭温泉郷にとうちゃく。

空は快晴。まっさおではなく、すこしグレーがかっている。

匂いはない。とうめいなにおい。
山がみどりに覆われるのはもうすこし先のようだ。

一方で耳に聞こえるのは音はにぎやか。ささやかな雪解け水がそこかしこで流れをつくり、やがて大きな清流となり、チョロチョロ、くぷくぷ、ザー、ざざーっと幾重にも重なって聞こえる。

はじめての土地に降りたち、ふらふらと散策したり、何度かバスで通りかかったりするうちに、少しずつ親しみが増してくる。その感じがすきだ。
地図上の写真や活字で捉えていた場所が、たった1日か2日過ごしただけで、知らない土地ではなくなる。このカーブを超えると、駒ヶ岳に見守られたあの建物があって… と、ぼんやりしていた輪郭がはっきりしてきて、確かめながら道をすすむ。ネットやテレビで見たり聞いただけでは味わえない、手足と五感を動かしてこそ生まれる人やモノや場所との関係性。あらたに出会う世界への愛情。それこそが、わたしにとって旅の醍醐味だ。

休暇村に着くと、広いロビーでは年配の人たちがソフトクリームを食べてしあわせそうにくつろいでいる。なんだかここは良さそうなところだといい予感がする。
チェックインまで時間があるので、荷物を預け、さっそく湯めぐり帳買って温泉へ。

休暇村から5分ほど県道を歩くと妙の湯、大釜温泉。蟹場温泉。本日の1番風呂は大釜温泉に決めて中へ入る。こちらのことなんて1mmも興味なさそうな受付のおじいちゃんに声をかけてスタンプを押してもらい、灯油ストーブの匂いが懐かしい廊下を通って脱衣所へ。簡素なカゴに衣服と荷物を入れ、いざお風呂場へ。
ぬるめの露天に肩までつかる。ついに来てしまった!ほぁ〜来てよかった!ときもちがゆるむ。

ご一緒したのは60代のおばさま。静岡から青春18きっぷでのひとり旅とのこと。花の季節に駒ヶ岳に登りにくるので下見も兼ねて と。
お金はないけど体力と時間はたっぷりあるから!と
いくつになっても自分のやりたい!を叶えてあげている人はすてきだ。

働きながら自分の行きたいところに旅できる人生はいいな。
健康なからだ、すきなところどこへでも連れていってくれる足に感謝して。
フットワークの軽さはいくつになっても忘れたくないなと思った。

日帰り温泉の受付時間は限られているため、早々に蟹場温泉へ。蟹場温泉は県道のつき当たりにある。大きなかつらの木に見守られた桧風呂がきもちいい。
30分急いで満喫し、ブナ林を眺めながら休暇村へ戻ってチェックイン。

こざっぱりとして必要なものは全て揃った、とってもいいお部屋。
重い手荷物のリュックを置いて、畳にごろりと寝そべる。
気づくと昼寝していた。

目が覚めると窓の外で夕日が沈んでいく。ブナの木々シルエット浮かび上がらせながら金色にかがやいて、今日の世界は色を失っていく。

人気が少ないからか、山にいるときは日が沈むと急に心細いきもちになる。
田舎のいいところは、顔が見えるところ、人の存在がありがたく思えるところ、ひとりひとりのはたらきがはっきり見えるとろこかもしれない。
日が沈むと自然に眠りたくなるし、ご飯をしっかり食べて活動するからかあまり小腹が空かない。太陽のめぐみをありがたくを感じるし、自然と人間らしい暮らしになる。

18時、夕食バイキング。
こんなところでひとりは恥ずかしいな って気持ちもちょっとある。
どこのお席を使ってもいいですよという心遣いが嬉しい。
ロビーの4人がけ席にゆったり座る。
ホテルのレストランのスタッフさんが元気よく、田沢湖名物の山の芋鍋ときりたんぽ鍋をおすすめしてくれる。豚肉、きのこ、ごぼうなどのお汁に地元産のせりもりもりよそってくれて、食欲がわいてくる。
その場で揚げてくれるえびと舞茸の天ぷら、いかとサーモンの刺身、ローストビーフ、筍ごはん。ギバサや山芋、納豆にポン酢をかけたものなどさりげないものまで、食材がおいしい。いかは甘くておなかに余裕があればもっと食べたかった。

食後のデザートとアイス、コーヒーは部屋に持ち帰れるようになっており、ひとり旅にはありがたい。
部屋に戻り、お茶を入れてデザートを食べながらすこしだらりとする。
重すぎた手荷物を整理して途方に暮れる。
洋服を持ってきすぎたのと、明日は別の宿に泊まるからどの手順で荷物を動かすかが問題だ。

旅に出るたびに問題なのが、荷物。
出発前は、何を持っていくか、何を着ていくか悩みに悩む。
寒かったらどうしよう、持っていきすぎて重たかったらどうしよう。
旅の最中も、何を減らせるかな、明日宿を移動するのにいつどこに何を置いていこうか なんてことに何度も悩む。
失敗したくなくて、どうすれば正解なのかをいつも考えている。
これから旅を重ねるごとに、目の前の景色をたのしむ、ゆっくり過ごすことができたらいいな と思う。

おなかが落ち着いた頃、大浴場へ行ってみる。
館内はきれいに掃除されており、全館暖房でどこでも快適に過ごせる。
いつまででも入っていられそうな露天風呂に身をあずけて、かがやく月を見上げる。お天気と体調に恵まれて。感謝でいっぱい。
ここに来れて本当によかった。

その夜は、お布団で朝までぐっすり休めました。


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