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小春六花のキャラクター・設定誕生まで その①

TOKYO6 ENTERTAINMENT代表のアカサコです。
「TOKYO6とかSynthVとかCeVIOとかVOICEPEAKとか」アドベントカレンダーの最後のピースという大役を、主催の染宮ねいろ氏より仰せつかりまして、僭越ながら「小春六花のキャラクター・設定誕生まで その①」を個人のnoteに書かせて頂きました。

この1ヶ月間、素晴らしい作品で繋いで頂いた皆さまにもお礼申し上げます。よろしければ是非参加作品やnoteをご覧ください。

小春六花もおかげさまで発売から2年半以上が経ち、ちょうど小春六花の制作についてまとめようと考えていた所でしたので、良い機会を頂きました。
(情けない話、50歳が見えて来て全然シナプスが繋がってくれず、思い出すのに時間がかかっています。
なので、このnoteはあとで追記・修正される前提で書いています)

ただ、以前、おっさんが自身の足跡(そくせき)を話すとだいたいが自慢話になるので、おっさんは自分の昔話をするんじゃねえと若者から怒られたので、怯えながらも自重はせず、がっつり長文書きました。2万字。

かの適当男、高田純次も言っていました。
「年を取ってやっちゃいけないのは、説教と昔話と自慢話」
以降書かれているのは説教以外のやつです。そのくらいの期待感で何卒。
読む人なんか居なくて良い。知るか。責任は染宮氏が取ります(説教)。

・合同会社TOKYO6 ENTERTAINMENTを起業するまで

そもそもお前(私)は誰なんだと言う話を少し。昔話と自慢話です。

初音ミクが生まれた2007年8月31日、私は31歳でした。
(30かもしれないです)
それまでずっとリネージュ1というゲームでネトゲ廃人をしていました。
ケント城を半年間占拠したチームに居て、ずっと広域回復魔法・ヒールオールを連打して居た時期もあります。

しかし、ミクさんと出会ってネトゲを辞め、いにしえのMIDIブームの終わりにDTMをかじった経験を活かし、早速ボカロPとしてデビューします。
その後、ボカロPがバンドを組み、自分のボカロ曲を生演奏する「ドキ生」というコンセプトライブを立ち上げ、アマチュアのイベントとしては異常なハイペース、且つ、暑苦しい熱意で主催をしていました。
下は、私がろくろを回している「ドキ生」のインタビュー記事です。

この「ドキ生」のライブ運営がきっかけとなり、のちに紲星あかりの中の人をご担当頂いた声優の米澤円さんの主催ライブを運営面でお手伝いして以降、声優さんのイベントを副業としてお手伝いすることになり、現在の事業の1つとなります。

2015年の3月には、米澤円さんと同じ事務所(81プロデュースさん)の所属声優、高木美佑さんが出演のイベントもお手伝いさせて頂き、その際にボカロの中の人になってみたいというお話を伺ったのが、ずっと何年も頭の中に小さなプロセスとしてループしていました。
(後に高木美佑さんには夏色花梨のCVをご担当頂くことになります)

また、同じく「ドキ生」の運営を評価頂いての事だとは思っているのですが、2008年にX(Twitter)で「会社を興して初音ミクのようなVOCALOIDのライブラリ自体を作りたい」的なPOSTをした所、同じ事を考えていた人達に誘って頂き、VOCALOMAKETSという音声合成キャラクターのプロデュースなどを手掛けるチームに初期メンバーとして加入、VOICEROID/VOCALOID「結月ゆかり」「紲星あかり」の立ち上げと制作に携わり、2019年1月に同チームを退団しました。

どんな世界であれ長くやっていると色々あります。
子供が出来た事が良い機会だと思い、一度しばらくは音声合成の世界から離れるつもりでいました。
本業としてはプログラマとかシステムエンジニアと呼ばれるものをずっとやっており、生活に困ることはありませんでしたので。

が、しかし。

音声合成界隈の入ってくる新しい情報を聞いていると、生意気にも「このままで良いのだろうか?」「何か出来るのでは?」「何かやるのであれば裏方のプレイヤーとして参加したい」と変化していきまして、元々は一人でやろうと思っていたのもあり、今までの経験を活かして自分がどこまで出来るのかやってみようと思うに至りました。

VOCALOMAKETSを退団し、まだ起業も決めていないある日のこと。SynthesizerVはまだシェアウェアに近い形で、Kanruさんを中心に制作・運営されていたのですが、このソフトにとても可能性を感じていました。

Kanruさんに会ってみたい。そして、超勝手ながら音声合成ソフト販売で実績のあるAHSさんと引き合わせてみたら面白いのでは?。と思いまして。

Kanruさんとは全く知り合いでは無かったので、DTMステーションの藤本健さんに連れて来てもらう形で、Kanruさん、藤本健さん、音声合成関係者、並びにAHSさんが参加する食事会を主催しました。

当時の私は前途の通りVOCALOMAKETSを辞め、起業もしていないので何者でもなく、Kanruさんにしてみたら25歳くらいの若者が良くわからん素性のおっさん主催の飲み会に呼び出された訳です。
間違いなく恐いですよ。これは。

当時AHS社長だった尾形さんには、来日半年というKanruさんの為に、中国語の通訳まで連れてきて頂いていました。
(Kanruさん、当時日本語を本格的に勉強しはじめて半年だったそうですが、結局通訳無しで日本語で会話できました。言語の天才がすぎる。)

その際、ソフトのUIをKONTAKTなども担当したドイツのUIデザインの専門家に依頼して一新する等、今後の展望の話を色々伺って、これは凄いぞと。

尾形さんに「絶対(Kanruさんを)捕まえておいてください」と偉そうに言ったものの、当時の私はAHSさんからソフトを出す話はまだ無く、起業すらも決めかねていたので、今冷静に考えると本当に何の立場で何様のつもりで言っていたんだろうかと思いますね。

尾形さんもこのソフトは行けると思ったらしく、その後はご存知の通り、AHSさんからUIがアップデートされたSynthesizerVがAHS社からパッケージとしても発売されました。
今ではKanruさんがAHS社の社長を務めています。

そんなこともありつつ、界隈で起こっている様々な濁流を傍目に「子供が生まれたばかりのタイミングで起業するの?アホなの?」と自問自答してたんですが、その後覚悟を決めまして。
まず妻に「起業したい」と伝えた所、「良いんじゃない?いつかやると思ってた。むしろ遅かったくらい。」とのことで。まじか。器がでけえ。

そして、2019年12月。
新たに音声合成ソフトのライブラリを作ろうと、起業しました。

会社名はカンでピンきたもので決めました。
海外にも解りやすく「TOKYO」+「何か」にしようと考えていたのですが、数字を当てはめることを思いつき、なんとなく第六感とか”感性”に近いような数字として6が一番しっくり来たのでTOKYO6 ENTERTAINMENT としました。その間、およそ10秒。

・小春六花が出来るまで①

最初に描いていたのは非常に甘いプロットで、まずは小春六花ではない何かが動いて居ました。
制作費を考えるとクラウドファンディング前提ということもあり、その大きなプレッシャーから、「自分が何を作りたいか?」よりも「クラウドファンディングの成功」に主眼が置かれてしまっていました。

ただ、しばらくウダウダ頭の中でこねくり回して色々な人の意見を聞いているうちに、「それ、本当に面白いのか?」「他の人から見て支援しようと思えるのか?」と気づく事ができました。
本当に甘く、愚かでした。

それまで作っていたプロットやメモを全部捨て、
・”何を”つくりたいのか?
・ライブラリ・キャラクターを作って”何がしたい”のか?
をゼロベースから考え直す事に。

作るからには、傍から見ている人が支援したいと思えるくらい、必死にやらないとな。と、気合を入れなおして再スタートします。

主催者はあいつ頭おかしいと言われる位の熱量でちょうどいい。
かつて、色々な人が自然と手伝ってくれた「ドキ生」がそうだったように。

・小春六花が出来るまで②(やりたいことを整理する)

まずは、キャラクターを作って何がやりたいのか?を整理していきました。

・1つのキャラクターでトークと歌、両方の音声合成ソフトを展開
・担当声優によるライブ(2.5次元ライブ)
・疑似立体映像のライブ
・ゲームコラボ
・グッズ企業様とのコラボ
・地域コラボ(地方都市とのコラボ)

以上を実現したい事の”中期的な目標”として、ピックアップしました。
下は発表当時のnoteになります。

私がユーザー出身の為、ユーザーが使いやすい展開をしたいというのも展開する上での目標の一つとなります。

界隈で目新しいものと言えば、担当声優によるライブ(2.5次元ライブ)かもしれません。それまでにもいわゆる中の人が、自分がCVを担当したキャラクターの歌を歌唱したライブはありましたが、あくまで声優・アーティストとしてステージに立っていたので、キャラクターと全く同じ衣装を来てそのキャラクターとしてステージに立つということは商用の音声合成ソフトのキャラクターではあまり無かったように思います。
(※UTAU界隈ではあったかもしれません)

それから、以前より生放送やイベントでは言っている事なのですが、中期目標よりも大きな目標の一つとして、「アニメ化」があります。
まだ1人しか社員しかいない、会社を立ち上げたばかりの40超えたおっさんが、莫大な制作費がかかるアニメを作りたいと言っている事にきっと「あいつ何をいってるんだ?」と思っている方も多々おられるかと思います。当然のことです。

・もしユーザーが作った楽曲が、キャラクターが演奏する曲としてアニメで流れたら?
・もしユーザーが作った楽曲がBGMやエンドロールで流れたら?

面白いと思いませんか?
また、何よりアニメから入る新しいファンを呼び込んで、小春六花・夏色花梨・花隈千冬が登場するゲーム実況や解説動画、車載動画、楽曲、小説や漫画・イラスト等の創作、そしてそれらを作るクリエイターに興味を持って貰いたいなと。

私としては、六花達を使用した創作物・六花達が登場する創作物が一人でも多くの人に触れられるようにしたい。
また、クリエイターを一人でも多くの人に知って貰いたい。
それらを実現する為に、もっともっと外から新しい人を連れてきたい。
だから、いつか実現させたいなと。

音声合成ソフトのユーザーの皆さんの期待に応えていくというのは大前提ですが、これらの目標の実現へ向けてのフックとしても、弊社の根幹としても、しっかり音声合成ソフトとして展開していくことが重要になります。

では既に沢山のライブラリが溢れ、レッドオーシャンに見える界隈でどうやって新しいキャラクターがポジションを築いて行くのか?

過去の成功例を見て行くと
・音声合成ソフトとして高性能であること
・秀逸なキャラクターデザイン
という基本的な所がまずは最初の1手として欠かせません。

また、既に沢山の音声合成ソフト・キャラクターが居る中で、今から”すぐに”「トークの音声合成ソフトでトップクラスの人気を得る事」「歌の音声合成ソフトでトップクラスの人気を得る事」というのを”有料ソフト”で実現するのは難しいように思いました。

しかし、ある程度何かしらで認知されないと、グッズやゲームなどのコラボの話も頂けませんし、提案することも難しくなります。
なによりユーザーもファンも増えません。

それでは「トークと歌、”両方で”今、人気上昇中の音声合成キャラクター」としてならどうでしょう?
インパクトもありますし、実現可能な目標のように思いました。
だから、トークも歌も、両方きちんと展開することに今も必死です

また、アニメ化に頼らずとも今まで音声合成ソフトに興味の無かった”新たなユーザー・ファン”の獲得をしていきたいというのも目標の一つです。

界隈の裾野を少しづつでも広げて行くには、”様々な活動をする人が居る”という多様性が大事になってくるはずです。
みんなが同じことをしていては、ほぼ同じ人にしかリーチしませんので。

キャラクター付きの音声合成界隈もある程度月日が経った為、”ここはこうするべき”という固定観念がいくつかあるかと思いますが、この界隈では古参の人間ながら、新しいチャレンジャーとして、あえてそこに疑問符を持つ事もしていきたいと考えています。

ですので、公式があえて使用可能な設定を多く用意する(公式二次創作設定)、二次創作で立ち絵が出来るのを待つのではなく、公式が立ち絵を積極的に用意する等も展開当初批判はありましたが、本当に今までのままでいいのか?という事を考え、意識して展開してきました。

また、”新たなユーザー・ファン”の獲得のためには界隈では目新しいキャラクターデザインを起こす事も重要だと考えていました。

やりたいこと・目標の他に、「やらなくてはいけないこと」もあります。

キャラクターのある音声合成ソフトの一番大事な事として、公式が「キャラクターを継続的に運用すること」があると考えます。
過去に有名なイラストレーター・有名な声優さんを起用した音声合成ソフトの企画がいくつもありましたが、発売後にキャラクターとして運用がされなかったものはどれもすぐに使われなくなってしまう運命にありました。

どんなに下手でも失敗してもいいので、キャラクターを動かしていく。
これは音声合成ソフトの企画運営元として「やらなくてはいけないこと」だと思っています。
キャラクターを動かさずにも人気が出る。それはよっぽどの幸運が無いと、無いのです。

・小春六花が出来るまで③(基本コンセプト)

やりたいことの整理をしていくと、大体自分がどんなキャラクターをつくりたいのか、やりたい事の実現の為にどんなキャラクターが必要なのかがぼんやりと見えてきました。

そして、やりたい事をするのに「必要な」キャラクターと並行して、「どういうキャラクターを作りたいのか?」も考えて行きました。

「多くの人にリーチするキャラクター」という漠然とした目標ではなく、「どういう人に好きになってもらいたいか?」を決めて行かないと、キャラクターの輪郭がボヤけてしまい、結局の所は印象の薄いぼやぼやっとしたキャラクターが出来てしまうのではないか?と考えました。

マーケティングの話になってしまいますが、しっかりとターゲットを絞ったほうが、かえって幅広い支持層が生まれることのほうが多いそうで。
それは作るものにしっかりと輪郭が生まれるからなんですよね。

そこで、ターゲットとしたのは

1つは「漫画の多いサブカル系雑貨店が好きな人」

です。でもまぁまぁ漠然としていますよね。
漫画が充実していて私のようなオタクも、おしゃれで一見漫画に興味が無さそうな人も、ギターを背負ったバンドマンも同じ漫画コーナーに居て、同じ漫画を手に取っている。

漫画の他に、廃墟の写真集、雑貨やジョークグッズが沢山あったり、少しマニアックだったりこれから伸びそうな店員オススメのアーティストのCDコーナーもあったりと、サブカル好きには楽しい空間。「漫画の多いサブカル系雑貨店」。そこが好きな人。

解りにくいですね。もう少し噛み砕いていくと

「サブカルが好きで、新しい文化情報やデザインに対する感度の高い人」

になりそうな気がしました。
正しいかどうかは別として、そう解釈することにしました。
違和感のある方も私がそう解釈しやがったコノヤロー。というところで収めて頂けると。

2つ目は「現実性の高いキャラクターが好きな人」

ファンタジー・創作の世界でありつつも、現実世界に近い世界観が好きな人。
小説の乙一作品、アニメの新海誠作品、近年のセカイ系のような、現実世界に近しいファンタジー作品・世界観・キャラクターが好きな人。
(そのようなキャラクターを作るかは別として)

この2つをターゲットとしました。

何故2つのターゲットを作ったのか?という所なんですが、ターゲット同士の相性の良さもあるのですが、単に私がその2つが好きだからです。

今回は1人で作りたいものを作ると決めていました。
複数人で作る楽しさも勿論ありますが、複数人居るとどうしても調整役、裏役の時間が長くなるタイプの人間性でして。

都と区の起業希望者セミナーや経営者の友人にも、「まずはあなたが作りたいものを100%に近い形で作れないと後悔するし、結局一人でやり直す人を何人も見てきた。そして、失敗した時の責任も一人で取れるようにしなさい。じゃないと冒険も出来ない」的なアドバイスを受けたのもありますが。

TOKYO6の企画は年齢的に私の人生のラストチャレンジだと考えています。
だから、作りたいものを作って世に残したかったのもあります。
10年20年30年と運用していく企画の最初は自分が作りたい構想で土台を作り、いずれ人の輪を大きくし、新しく入った人の意見を取り入れて土台の上に様々なものを築いていきたい。そして、いつか誰かにバトンタッチしたいなと。

話がそれましたが、このターゲット2つを目標とするコンセプトは意外と今まで界隈にない路線だとも思いました。

今まで音声合成に興味のなかった人にも振り向いて貰いたい。

それらの理由からも、”アリ”だと判断しました。

さて、「必要なキャラクター」そして、「どういう人に好きになってもらいたいか?」が決まりました。
更に、新規のユーザー・ファン層も獲得し、沢山居る既存キャラクターに埋もれないようにしないといけません。

この欲張りセットに対応する答えは「学校制服を着た普通の子」でした。

発表当時の音声合成のキャラクター界隈では衣装を盛る方向で個性を出す事が多く、「学生服」&「普通の子」というのはある程度のインパクトを残せたように思います。これをデフォルトの衣装とするのに勇気は入りましたが。
(※近年の傾向の話として。制服を衣装としているキャラクターは弦巻マキなど従来から居ます)

学生制服の良い所として、地方自治体とのコラボをする際に「地元の子」として馴染みやすい。また、アニメ化した時にコラボの地方を舞台とした学園ものとして制作出来るという「やりたい事」を実現する際の親和性の高さもあります。

そして、小説や楽曲、動画等で物語を考える際に、高校生という設定であれば比較的想像をしやすいのではないか?ということ、それから多くの方は「学生服を着ていた」、あるいは「周りの人が学生服を着ていた」経験があるかと思います。

つまり、二次創作をする上でのベースのキャラクターとして、制服を着ているというのは「その後どんなキャラクターになっても・どんな衣装を着る存在になっても違和感を覚えることが少ない」という事なのではと考えました。

・小春六花が出来るまで④(イラストレーターを探す旅)

担当イラストレーターの方には
・サブカルが好きで、新しい文化情報やデザインに対する感度の高い人
・現実性の高いキャラクターが好きな人にリーチする
・制服の普通の子
・印象も残るようなイラスト
を描いて頂きたいわけです。完全なる鬼発注です。

それから以前、とある著名なイラストレーターの方に
・0から1を作る、オリジナルキャラクターを制作する能力
・二次創作のイラストを制作する能力
この2点は全く別の能力であるという事を教えて頂きました。

とても魅力的な二次創作イラストを描く方でも、オリジナルキャラクターを作るのが得意とは限らない。逆も然り。という事だそうで、なるほどなと。

つまり、今回は0からオリジナルのキャラクターを制作するのが得意な方を探さなくては行けません。

また、レッドオーシャンの海に飛び込むにあたり、目新しさが必要になります。新たなテイストで新キャラクターを出して行きたいという事もあり、依頼するイラストレーターは界隈で活動歴の無い、今まで自分が知らなかった方に出会いたいと考えました。

まずはオリジナルキャラクターを描くイラストレーターを知りたいと思い、pixivの有料会員になりました。
たった数年前の話なのですが、今のようにAIイラストが全く投稿されていなかった時代の話です。

pixivの有料会員になると、タグの人気順でイラストを見ることが出来ます。
「オリジナル」タグのイラストを毎日2000枚位拝見していました。
上位検索は勿論、新着を検索、ザッピングで検索などもしていました。

また、X(Twitter)、ニコニコ静画でもイラストを積極的に見て、良いなと思うイラストがあれば、その作者の方がオリジナルイラストを上げているかをチェックするようにもなりました。

起業してしばらくはダブルワークだった為、通勤電車の中の2時間、休み時間、寝る前の数時間を使って、毎日イラストを大量に拝見していました。
(描いたイラストがこのような使われかたをするのは想定していないかもしれません。ご不快に思った方は申し訳ございません)

VOCALOMAKETS時代からの友人のちょむPが、毎日凄い量のイラストをRPするので、彼のX(Twitter)のPOSTも毎日見ていましたがエッチなイラストが多いので電車の中では見れませんでした。笑
(でも凄い参考になりました)

毎日大量に見て居たのは、X(Twitter)で情報発信がされる事が多いものの、X(Twitter)では膨大な数のイラストがすぐに流れてしまう世界なので、その中で目に留まるイラストはどんなイラストなのか?、どういうクリエイターの方が描いているのかを知りたいと思った事と、大量のイラストに触れる事で見えてくる何かがあるのかなと思った為です。

どのくらい同じことを繰り返したか正確に覚えていないのですが、1ヶ月位同じことを繰り返したかと思います。
そして、印象に残るイラストとその作者のクリエイターについて、どこが魅力的だと感じたのかをExcelにまとめ、自分の求める要件に会う方はどなただろうというのを考えるのを毎日繰り返し、最終的に毎日同じ方にたどり着くようになり、オファーさせていただいたのが手島nari先生でした。

まずはpixivのオリジナルのイラストから手島nari先生を知ったのですが、X(Twitter)に上げられていたとあるキャラクターのデザイン図が素晴らしい出来で、デザイン性が高く、且つ、私のようなオタクも好きなデザインに落とされていて、過分にアイテムが付いている訳では無いのですが、とても目を惹くデザインになっていて、印象に深く突き刺さりました。

手島nari先生に興味をもった時点で、当時手に入れる事の出来る手島nari先生の同人誌を全て購入して拝見させて頂いたのですが、2019年の夏コミでちょうど「オリジナルキャラクター&制服」の同人誌を出されていて、それを拝見して「サブカルが好きで、新しい文化情報やデザインに対する感度の高い人」「現実性の高いキャラクターが好きな人」にリーチする「制服の普通の子」、且つ界隈で「印象に残るキャラデザ」、という欲張りセットの要件を描いて頂ける方だというのが確信に変わりました。

オファーを引き受けて頂けるとのお返事を頂いたのが、2019年の暮れの事でした。

・小春六花が出来るまで⑤(デザインが決まるまで)

まずは手島nari先生にラフで4つの方向性が違うキャラクターを描いて頂きました。その中でイメージに近い方向性のキャラクターがいますか?ということを聞かれたのを覚えています。

その後、コンセプトとのすり合わせを再度行い、途中ブレザーじゃないセーラー服六花やお団子じゃない六花なども生まれつつ、何度も新たなラフを描いて頂き、現在のデザインにたどり付きました。
コンセプトには想定している声の方向性なども当然入っています。
この辺はいずれ5周年あたりでもう少し詳しくお話できればと考えています。

私からはコンセプトの他に以下の要望を出していました。
・制服にラインを入れて欲しい
・さりげない違和感を残したい

ラインを入れるのはステージに立った時に、ラインが残像となり綺麗に見えるからなのですが、制服=ステージ衣装としても機能させたかった為です。

これもとあるイラストレーターの受け売りなのですが、
「さりげない違和感」を残したい理由については、人の印象に残る為には
違和感は大事なエッセンスで、でも違和感がありすぎてもデザインとして失敗してしまうということがあります。
なので「さりげない違和感」が大事になってくると考えました。
(その点については当然手島nari先生は私よりも把握されていたと思います)

手島nari先生には、そこをラインを多用する事でクリアするご提案をして頂きました。
弊社キャラクター、よく見ると実はライン(線)が多様されています。

小春六花デザイン

ソックス・スカート・ジャケットの腕、裾、襟、袖、ネクタイ、セーターにいたるまでラインがあります。また、ジャケットの裾・袖・セーターには1直線のラインも引かれています。

このラインについては花梨・千冬のデザインでも引き継がれています。

花梨・千冬については同じコンセプトで作られた六花の後ということで、印象をどう残すか悩んでいたのですが、手島nari先生から皆さんが好きな要素を盛り盛りするご提案を頂きました。
アイテムを足すのではなく、好きなフェチ要素を盛り盛りにしたあたり、界隈でも新しかったのでは無いでしょうか。手島nari先生おそるべし。

夏色花梨デザイン
花隈千冬デザイン

ラインを多用しつつ、フェチ要素を盛り盛りにしてもパッと見はそれを意識させない「さりげない」範囲で収めているのは手島nari先生のキャラデザの凄みだと思います。
しかし、よく見るとラインが多用されていて、脳にはほどよく視覚情報の違和感として残っている気がしました。

・サブカルが好きで、新しい文化情報やデザインに対する感度の高い人
・現実性の高いキャラクターが好きな人
・制服の普通の子
・印象に残るキャラデザ
・制服にラインを入れて欲しい
・さりげない違和感を残したい

鬼発注のすべての要望が実現されていて、かつちゃんと可愛い。

キャラデザが完成した時、椅子にのけぞって変な声が脳天から出ました。
「あ”ぁ^~↑」みたいな。
人間、頭のてっぺんから声が出る。

手島nari先生おそるべし。

・小春六花が出来るまで⑥(君の名は?)

デザインより少し前だったかもしれませんが、名前も考え始めました。
キャラクターの名前は直感で決めた社名と違い、様々な意味合いを深掘りできるものを用意したいと考えました。
そういうのみなさん好きかと思いまして。私は好きです。

イメージイラストや、名前に春があること、また元気いっぱいなキャラデザから、春のイメージは多くの皆さんにあると思います。

実は

小春=小春日和という言葉がありますが、秋の終わりから冬の初めの春のような暖かな日和のことを指す通り、秋・冬の季語になります。
六花=雪の別名。雪の結晶が6つの花びらのような形な事から。

と、実は秋・冬のワードで構成された名前です。

小春六花という名前は、「音声合成の秋・冬の時代を春のような日差しで照らして欲しい」という願いも込めて付けさせて頂きました。

音声合成界隈、「秋・冬の時代」なのか?という点についてはVOCALOID、VOICEROID発表からそれなりの年数が経ったという事と、新技術がどんどん生まれて混乱も起こる時代だろうと、秋・冬としていますが、あまり突っ込まないで頂けるとありがたいです。
現在の音声合成界隈を卑下する意図は全くありません。

「六花」も「春」に続くと春先の花をイメージされると思いますが、やはり春の陽気のような明るい存在であって欲しいなと。
このダブルミーニング的な展開は意識しています。

それから、小春六花は最初の子ということもあり、一人で春夏秋冬の意味が入ると良いなとも思っていました。
少々強引ですが、
・小春=字面的には春ですが秋・冬のこと
・六花=字面的には沢山の花=夏のようなイメージ
というところで。

また、中国でも通じる名前にしたいと考えており、検索したところ南宋時代の詩のタイトルに「小春六花」というのがあったのも決め手になりました。

ちなみに、北海道小樽市の小樽観光協会さんとコラボをしていますが、小樽市の市章は六花(雪の結晶としての意味)の中に小樽の「小」が入り構成されています。
つまり、小春六花の春以外の要素があります。
これは正直、コラボが始まってから気づきました。もう運命ですね。
以下、小樽アオバト情報局さんのPOSTより。

また、弊社キャラクターの名前はすべて「季節」+「花」+「数字」(+1文字)で構成されていて、「季節」と「花」の置かれている位置も異なります。

各キャラクターの名前について

「季節」と「花」の位置が違うのは、「花+季節+数字」という規則性がありながら、その規則性をぱっと見た印象では感じさせない為です。
「季節」と「花」は名前の主要テーマになるのですが、これらの位置が違うだけで印象としては規則性を感じるのが薄くなる気がしました。

規則性が丸わかりになってしまうと、アニメや漫画のキャラクター名感が強くなってしまい、「普通の子」感が薄くなってしまいます。

「花+季節+数字」以外の1字は主に、この「規則性を感じさせない」という事を補強する為、敢えて規則性の無い、各キャラでジャンルの違う漢字を入れています。

季節については皆さんお気づきかと思いますが、全て花が入っているのは気づかない方も多かった印象を持っています。

規則性を出したくないなら各キャラ全く別な名前にすれば良いのですが、そこはそこでシリーズとしてのさりげない統一感と、名前に色々含ませたかったというのがあります。

夏色花梨については、数字が無いじゃないか?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、「色」というのが「シキ=万物すべて」という意味合いを持ちます。色即是空のシキですね。
最上級生としての包容力、また、沢山の色を持つという意味でも(略)
夏色花梨回にお話します。

・小春六花が出来るまで⑦(どのような声の音声ライブラリにするのか?)

音声合成ソフトについては、まずは3キャラクター作りたいと考えていました。
他社さんのキャラクターとの掛け合いも勿論素晴らしいですし、個人的にも好きなのですが、同じ世界観で作られたキャラクター同士での掛け合い”も”実現したいのが理由の1つです。
地域コラボや公式二次創作設定での創作をして頂く際も、同じ世界観上のキャラクターが複数人居たほうが良いですしね。
それから、学年の違う先輩後輩の3人にすると会話が転がりやすく、幅広い話が作れるのではというのも思いつきます。

諸々考えて声の印象としては以下の違いを出していくことにしました。

1人目(小春六花):聴きやすい声、中音域が得意
2人目(夏色花梨):可愛い声、高音域が得意
3人目(花隈千冬):落ち着いた声、低音域が得意

上記の違いを出せればトークの聞き分けがしやすく、歌のソフトでも3本持っていればどんな音域の曲も、どんなジャンルの曲も対応できる所を作ることが出来ると考えました。
また、これらの特徴を持つ声のキャラクターとして、容姿含む設定としても違いを出しやすいのも理由の1つです。

また、もう一つ大事な点として、それぞれ担当音域が違う3人組のシンガーであるKalafinaのように、3人の声が合わさった際に美しいハーモニーを出せるところを狙いたいと考えていました。

六花に関しては「まずはこの1本を持っておけば大丈夫」という所と、花梨・千冬については2本目以降の需要も考えた個性も重視しています。

とはいえ、やはり「1本を持っておけば大丈夫=汎用性の高いもの」という漠然な目標となると、作りたいものの輪郭がボヤけてしまい、魅力も薄れてしまいます。

そこで、六花が目指す「聴きやすい声」とはなんだろう?というのを突き詰めて考えていくことにしました。そうすると

・音を聴くことに集中しなくてもするっと耳に入ってくる声
・長時間聞いていても疲れない声

なのでは?という結論に至ります。
解説動画をシリーズで何本もハシゴして聞かれる方は沢山いらっしゃいますよね。ですので、「すっと耳に入ってくる」「聴きやすくて疲れない」というところを目指すことにしました。

では具体的な声としてはどういう声なのか?というところを考えると
「程よいエッジ感のある声、且つ、キンキンしすぎない声」
という所に落ち着きました。

個人的にはその「程よいエッジ感」というのは、当時ある音声合成ソフトにも相性の良い声なのではとも思いました。

ちょっと話をずらします。
正直3キャラクター全員、歌とトークのソフトを作ってようやく本業としては食べて行けるという予測をした事も大きくはないですが確実に理由の一つとしてありました。
大手企業がこの業界にあまり参入して来ない理由です。

音声合成ソフトを制作する際、クラウドファンディングではなく、銀行から制作資金を借り入れすれば良いのに。という声も聞かれますが、以前システムエンジニアとして銀行の中小企業向けの融資判定システムを制作していた経験として、創業間もない会社、売上の小さい会社はだいたいが金利の高いローンを紹介されて終わりです。
しかし、キャラクター権利元となると、入ってくる収入が少ないので収支が合わず、そのローンでの創業となると創業直後いきなり苦境に立つくことになるでしょう。

この業界の状況をお察し頂いている方も多いかとは思いますが、いずれ変えて行かなければと考えています。
また、近い未来にAIによる音声合成エンジンの高性能化により、中の人(声優)へのリターンをどうするかも各社もっと真剣に考えていかないと行けなくなるでしょう。

その際に、もう一度業界全体でどう食べていくのかを考えて行かなければならなくなるような気がしています。

このような状況下で弊社は勿論、クラウドファンディングでの制作を容認・支援してくださる界隈のファンの方々には頭が上がりません。
ファンの方ご自身が今の音声合成ソフト界隈を支えていると思います。
本当にありがとうございます。

・小春六花が出来るまで⑧(中の人へのオファー)

2017年5月13日、アニソン聴き放題サービス「ANiUTa(アニュータ)」のアニソンフェスイベント「あにゅパ!!」が代々木第一体育館で行われました。
友人のボカロPに誘われ、アリーナの後方席で普通に一般客で見て居たのですが、自分たちの前列がWake Up, Girls!のメンバーとして出演されていた青山吉能さんのファン4名だったのを覚えています。

私も釣られてキンブレの色を青山さんの担当色の青(ライトブルー)にしたくらい、凄く熱く、楽しそうに応援していらっしゃいました。
失礼ながらその後、家に帰って彼らが熱く応援した人として調べて、初めて青山吉能さんの存在を知りました。後に小春六花のCVをご担当頂く方です。

彼らが推し活の末に繋いでくれた縁なのかもしれません。
あの時の4名の方のどなたかは小春六花のクラウドファンディングにも参加して頂いて、今も応援頂いて居るかもしれないですね。
その可能性も高そうな気がしています。

Wake Up, Girls!の皆さん、声優ユニットという表現で良いのか迷うくらい、ダンスも歌も素晴らしいアーティストだったと友人と話をしていたのを覚えています。

それ以前にもメンバーの高木美佑さん、吉岡茉祐さんとお仕事をした事もあり、真摯に仕事に取り組まれていて、とてもプロフェッショナルだなぁという印象がありました。

話は小春六花の中の人を誰にオファーするか?という所に戻りますが、手島nari先生とある程度キャラクターを詰めた段階で、中の人としてどなたにオファーするか?というのを決めて行くことになります。

六花に関しては完全にキャラクター先行で進めた為、「キャラクターのイメージに声が合う事」というのも、中の人選びの大事な要素になります。

2.5次元的なステージを作る事、生放送やイベントを行うことも想定していたのですが、私1人しかいない会社で人手が足りていない上にまだ不慣れな部分が多々あるので、ステージ・生放送・イベントに慣れている方、というのも重要な点になってきます。

また、声優の所属事務所が音声合成ソフトの仕事に対してOKかどうかも大事なポイントです。最近はOKを頂ける所も増えてきたように感じていますが、やはり「自身の仕事が奪われるのでは?」という懸念があり、NGの事務所も多いです。

声優さんご自身は学生時代ボカロを聞いて育ったので、音声合成の仕事をしてみたいという方も多いのですが、ではいざその方にオファーしてみるとNG(事務所としてNG)だったという話は業界内で良く聞く話です。

また、新しい会社がクラウドファンディングで制作するという所でも声優事務所サイドには不安や懸念が当然あるかと思います。
そういった意味でも、音声合成に理解があるのは勿論、私自身を知っていただいてる事務所さんにお願いするのが良いのではと考えました。

業界2位の大手声優事務所、81プロデュースさんは音声合成や新しい事に対して理解のある事務所さんで、以前より付き合いのあるマネージャーさんが数多くの音声合成ソフトの案件を担当されていることから音声合成に対して理解のある方でしたので、81プロデュースさんにお願いするのをまず考えました。

とはいえ、まずは付き合いのある声優事務所・音声合成ソフトがOKの声優事務所の声優さんのサンプル音声を数百人分聞くことから始めました。

まずファーストインプレッションとして、キャラクターと声の印象が合い、「程よいエッジ感のある声、且つ、キンキンしすぎない声」の要件を満たす声としてピンときたのがご担当頂いている青山吉能さんでした。
「あにゅパ!!」で前列の人達が凄い熱い応援をしていた人だなと。

キャラクターと声のイメージも凄くマッチしたのと、更に求めているものが「ステージ・イベント・生放送に慣れている人」ともなると、何日も同じ膨大なサンプル音声を聞いたのですが、もはや青山さんにお願いするのを確定する為の確認作業だったように思います。

青山吉能さんを調べていくと、歌を歌われるときに、ステージ上で歌の世界観をしっかりと落とし込んでから歌われる方だったのも、キャラクターとして歌やイベントのステージに立って頂く時にすごく良いなと思いました。

その後、実際に小春六花/青山吉能としてステージに立っていただいた時、その実在感はさすがでした。
小春六花1st LIVE!の後、音声合成界隈のお客様に「正直声優さんがキャラクターとして立つライブに抵抗があったんだけど、最高でした」と言って頂いた時、3D以外のライブが受け入れられるか不安だったのもあり、とても嬉しく、そして小春六花をご担当頂いて本当に良かったと改めて思いました。
(勿論、夏色花梨役の高木美佑さん、花隈千冬役の奥野香耶さんも)

まだお若いですが、長く沢山活動されていたので、公式のコンテンツとしてWEB上に声や曲を聞けるものが沢山あったのも判断しやすかったです。

あと、青山さんご自身の生放送を拝見していて、ふわっとした印象ですが、ご本人がどことなく、六花が成長したような感じもお持ちの方だなぁと思ったんですよね。同じように感じた方もいらっしゃるかと思います。

担当されていたコンテンツにも触れ、自分の中でも強く小春六花としてイメージ出来たこともあり、オファーをさせて頂き、無事OKを頂けました。

イラストレーターを手島nari先生に、小春六花CVを青山吉能さんに、夏色花梨CVを高木美佑さんに、花隈千冬CVを奥野香耶さんにオファーをしたことは本当に間違いなかったと今も強く思います。完璧なオファーでした。
そして、引き受けて頂いて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

余談ですが、青山さんが学生時代、超のつくボカロオタクだったのはオファー後に知りました。

・小春六花が出来るまで⑧(小樽とのコラボ)

会社立ち上げの数年前から、私はアニメの聖地巡礼にハマっていました。
「ここで、あのキャラがあのシーンを・・・」という妄想が、アニメではない現実世界で出来る「リアルVR」のような、2Dのアニメの世界と3Dの現実世界がつながる体験を、非常に面白く感じていました。

それもあって、幅広く二次創作が行われる音声合成ソフトでも、地域に根ざしたキャラクターであれば二次創作もしやすくなるのでは?
そして、あの二次創作内で行われたシーンはココなのでは?ということが出来るのでは??
将来的にその地域を舞台にアニメ化が出来れば、音声合成界隈に新しい人を沢山呼び込んで大きく出来るのでは???
アニメに、SynthesizerVで作ったユーザーさんの曲が使われたら楽しいのでは????
アニメをきっかけに、二次創作に対して、新たな視聴者が生まれるのでは?????
あたりを思いつきます。

アニメの聖地巡礼をした後、そのアニメを見返した時に気づいたことが1つあります。
ずっととあるシーンが理解出来ず、そのまま思考を放棄していたのですが、聖地巡礼後に見返した後には「もしかしてこういう理由では?」「キャラクターAとBにこういう事があったのでは?」と、急激に全く理解できなかった「無」の状態から「想像・妄想できる余白」が生まれたんですね。

それは「ストーリーの舞台の解像度が高まったから」だと考えています。

想像をする為の材料として、実際にその目で見た膨大な視覚情報は勿論、舞台になる地域の空気感、聖地で味わった味覚なんかももしかしたら想像に役立っていたのかもしれません。
とにかく舞台になる場所の情報量が一気に増え、想像の余地が増えた・解像度が高まったのを実感しました。

この解像度の高まり現象が二次創作の作る方、見る方、両方で行われたら二次創作を更に楽しめるのではないだろうか。と。

ただ、当時の音声合成界隈の流行りの概念として、「キャラクターは設定が少なく、色が薄いほうが良い=ユーザーに決めてもらうのがベスト」というのがありました。
それはかつて自分も提唱していたものでもありました。

キャラクターの見た目やexVOICEなどをヒントに様々な設定が作り出され、ヒット動画などを幾つか経て、「このキャラクターはこうだ」というおおよその共通認識が生まれ、またときには新しい設定が流行り…というのを繰り返し、人気キャラクターになっていくのが理想という価値観は今も多くの方に支持される価値観の一つだと認識しています。

ただ、今の時代の新人キャラクターとしてはそれで良いのでしょうか?
ヒット作、いつ生まれるんでしょう?
立ち絵、いつ作ってもらえるんでしょう?
何も生まれないまま人気が沈んでいく可能性だってありますし、その可能性のほうが高いように思いました。

界隈も以前からあまり大きさが変わらない中で、新しい音声合成キャラクターが凄いペースでどんどん生まれ、1人のユーザーが沢山の音声合成キャラクターを抱えるのが当たり前の時代になりました。

今の状況下では1から設定を作るより、もう少しライトに使いたい要望も強くなっているのを感じています。

地域コラボをする諸々の理由、そしてもう少しライトに使いたい要望に答えるべく、参考になる設定・ストーリーがあるが、参考にしてもしなくても良いという仕切りにすれば使いやすいキャラクターになるのでは?と思い、生まれたのが「公式二次創作」の設定になります。

公式二次創作という概念自体は特に新しいものではありませんが、「公式二次創作」を公式に銘打って、それを参考にしても良い、しなくても良いという仕切りを生放送などでも説明し、強く発信を行っていくことにしました。

ではどこの場所とコラボをするのか?
聖地巡礼の経験から以下の条件を入れたいと考えます。

・交通、宿泊などのインフラが充実している
・5万人~30万人の地方都市
・聖地+αの「ついで観光」ができる
・食べ物が美味しい
・酒がうまい
・その地域に貢献できることがある

まず、行くのに大変すぎるとなかなか足が向きません。
ある程度は交通機関のアクセスが良い事、宿泊施設が多いことを必須としました。
既に人気のコンテンツがコラボした場合や、大企業がバーンと打ち出した大きなプロジェクトの場合は、ある程度交通の不便があってもファンは訪れると思いますが、まだデビューしたての六花にそのパワーはありません。

また、面白い個人店や行く場所があるほうが聖地の深掘りのしがいがあるのと、都市が大きすぎるとそもそもコラボをして貰うのが難しいですし、行くところがありすぎると逆に聖地の深掘りに興味が薄れてしまいます。

そこで、5~30万人の地域の中核都市、可能であれば10万人~20万人の都市をターゲットとすることにしました。
そのくらいの都市の規模だと、ほどよく個人店の飲食店もある印象です。

あと、聖地以外にも観光地がある、そして何より食べ物が旨い・酒が旨いと単に聖地巡礼だけではなく「旅」としての面白さも加わるのでリピートしやすくなると考えています。

これらの条件を満たす都市はどこだろう?とリサーチを始めます。
地図を見るのは好きだったのもあり、どこをどう舞台にしたら良いのか?ここを舞台にしたらこういうストーリーが転がるのでは?ということを考え始めると妄想が止まりません。

色々と妄想を繰り広げていたのですが、若い頃に単館映画や古い日本映画にハマっていた事もあり、山があり、坂から続く海があると青春のストーリーが動き出すようなイメージを持っておりまして。(尾道三部作のような)

また、私が小樽の隣町の隣町(なのに電車で1時間)である北広島市出身だったこともあり、土地勘があった為、辿り着いたのが小樽でした。
(地元では水族館といえば「おたる水族館」、海水浴といえば小樽でした)

小樽は海産物を中心に食べ物が美味しいのは有名ですし、そしてその土地のお酒も充実しています。
例えば、小樽唯一の日本酒蔵である田中酒造、ワイン大手の北海道ワイン、夫婦で経営している小さなワイン蔵OSAワイナリー、びっくりドンキーのビールを醸造している同系列の小樽ビール、小樽麦酒があり、隣町の余市には有名なニッカウィスキー余市蒸留所もあります。

そして、聖地巡礼以外の「聖地+α」の観光も充実しています。
かつては北のウォール街と呼ばれるほど当時の大手銀行が揃っていて、どれもが石造りの立派な作りの建物を今も残しており、今は家具のニトリが美術館に改装していたりと、観光地としての深掘りも出来そうだと考えました。

それから、地域コラボで凄く大事だと考えていることが1つあります。
それは「そのコラボが地域に貢献できるのか?」ということです。

ファン・ユーザーの方にあくまで楽しく参加していただくことで、結果として地域の人にも喜こんで貰える事が出来るのが目指す形です。

聖地化がうまくいっている地域は、ファンが訪れる事は勿論、ファン同士や地元の人との交流が生まれることで地域が活性化に繋がり、経済活動も発生していて良い循環が生まれています。

ざっくりいうと、みんなにメリットがあって楽しい方が長続きするよね。ということです。

完璧な観光地でキャラクターのコラボが出来るのは有名なキャラクターに限られると考えています。
理由としては、その地域がマイナーなキャラクターとコラボをする必要性が無い為です。
(つまり地域に貢献出来る事が少ない)
市町村、商工会議所、観光協会、その他関連団体に動いて頂くには、組織の中によっぽど熱いファンが居なければ厳しいでしょう。
有名な観光地ではアニメの聖地になっていても他の土地よりもアニメのコラボが薄いというのは良くあることです。

では小春六花が小樽に貢献出来ることはあるのでしょうか?

私が土地勘があることもあり、小樽が昔から一つ問題を抱えているのを知っていました。

それは「短時間観光」問題です。

運河を見て、寿司を食べて、観光商店街である堺町通り商店街をふらっと歩いて終わり。
札幌に宿泊する為、数時間の滞在で小樽から離れてしまいます。

・創作をする人、ファンの人に、舞台の地域を知ってもらいたい。
・地域に貢献したい

この2つの課題を解決するため、まずスタンプラリーをすることを思いつきました。
スタンプを押しながら市内をぐるっと周って頂くと、小樽の街並みを知って頂ける事、それから、スタンプの箇所を徐々に増やしていければ小樽への宿泊も寿司以外の飲食も体験していただけるのではないか?

また、スタンプラリーは沢山の寄り道をしていただけるので、ここに六花達が居そうだなという体験もして頂けるのではないかとも思いました。

まずはコンテンツが小さい事もあり、スモールスタートになりましたが、第一回から小春六花・夏色花梨・花隈千冬のファンの方は勿論、音声合成のファンの方、中の人のファンの方に沢山ご参加頂きました。

第一回はちょうどコロナ禍で観光地から人が消えていた時期、しかも小樽の一年で一番の閑散期の開催でした。
ただ、それでも想定より多くの方にご参加頂き、宿泊も頂いて居ましたので、小樽の方々が驚かれていました。本当にありがとうございました。

これからも、聖地巡礼を楽しんで頂けるよう、六花・花梨・千冬をより強く想像をして頂けるよう、少しづつコラボの輪を大きくしていきたいと考えています。

話は戻りますが、小樽とのコラボを思いついたはいいけれど、コラボをしていただくにはどうするのか?です。

なにせ最初に動きはじめた時はまだプロットがあるだけでした。

実は小樽市にある国立大、小樽商科大学の木村泰知教授、山本真史特任准教授(当時、現在は企業経営者)とは、以前一緒にお仕事をしたことがありました。
沢山の知見をお持ちのお二人ともう一度仕事がしたい。
それも小樽を選んだ大きな理由一つでした。
以前の仕事の際はボトルネックになることがあり、あまりうまく行かなかったのですが、彼らとなら今回はうまくやって行ける自信がありました。

そこで、新キャラクターを作ってこういう展開をしたいということをお二人に相談した所、小樽観光協会をご紹介頂き、同協会の逸見事務局長など職員の方々にご尽力いただいた結果、コラボ展開が出来そうだということになり、公式二次創作の舞台が小樽に決定しました。

とても長くなってしまいましたので、ここで一度終わりにしたいと思います。
小春六花のキャラクターと設定が出来るまで、その①をお届けいたしました。公式二次創作設定の舞台が小樽に決まり、小樽のどういう子になったの?という所は次回以降に譲りたいと思います。

小春六花、夏色花梨、花隈千冬は、ユーザーのみなさん、ファンのみなさん、協力者・関係者のみなさん等、人との出会いに恵まれている子たちだと思います。

時に信じがたい悪意にも触れる事がありましたし、大きな渦に巻き込まれることもありました。ご迷惑をおかけしたこともありました。
今も挫けず信念を持って、六花・花梨・千冬と上を向いてここまで進んで来れたのは日々応援頂いている皆さんのおかげです。

心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。
これからも応援頂けるよう頑張ります。

最後にアドベントカレンダーを主催頂いた染宮ねいろさん、ご参加頂いた皆さま、ご覧頂いた皆さま、ありがとうございました。
今回のアドベントカレンダーをこれで閉めさせて頂きます。

次回も楽しみにしています。

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