ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第7章2話
※全文無料でお読みいただけます。気に入っていただけたら、励ましの「投げ銭」をお願いします! 作者がとっても喜びます!
第7章 招いたモノたち
2話
土曜日は結局、宮尾くんや三ヶ田さんには会えなかった。夕焼けチャイムが鳴るまで、公園とか近所を探してみたんだけれど……。
さすがに疲れちゃった。
でも、収穫もあったんだよ!
まず『不可思議本舗』の読み方がわかったんだ!「ふかしぎほんぽ」って読むんだって。
いつか聞かなきゃとは思ってたんだけど、店番さんがポロッと言ってくれて助かったな。
それと、ポイントがたまったから、くじを引いて『カミカミ』っていう新しいおやつを手に入れた! ミャオンが気に入るかどうかは、まだあげてないからわからないけど。
そして今日は日曜日。
ちょっと曇りがちで、午後から雨が降るってママがいってる。
宿題もやらないといけないから、昨日みたいに一日中、あの二人を探すわけにはいかないけど――雨が降る前に、少しだけ探しにいこうかなって思ってる。
だけど――。
ぽてっとぼくの足下にネズミのおもちゃが転がってきた。
「みゃおーん」
ミャオンが期待に満ちた目でぼくを見上げている。
『遊ぼう』の合図だ。
「え〜。昨日の夜も、いっぱい遊んであげたじゃないか」
「みゃうー」
もう、仕方ないなぁ。
ミャオンはまだ子猫だから、たくさん、たっくさん遊びたいんだろうな。
ゴロゴロ喉を鳴らしながら、ぼくの足にまとわりついてくる。
それだけじゃない、ぼくが一歩前に踏み出すと、ごろんって寝転がってアピールしはじめた。
ふかふかのお腹をぼくに見せてクネクネしてる。
これをやられると、弱いんだよね。
ぼくはしゃがみこんで、ミャオンのお腹を撫でまくる。
ああ……モフモフ、ホカホカ、気持ちいい。
「みゃうーん」
「かわいいなー、ミャオンは。大好きだよー」
ミャオンは身体をくねらせると、また起き上がって、ネズミのおもちゃのところへ。
ぼくに「投げて」って言ってる。
「みゃ!」
ほらね。
「帰ってきたら遊んであげるから」
今はこれで許して。
ぼくは1回だけネズミのおもちゃを投げてあげる。
ミャオンはすぐさま飛びかかって、ちょいちょいって遊んだあと、おもちゃをくわえる。
でも、ぼくが出かける支度を始めたのを見て、そのままピタリと動きを止めた。
「雨が降る前に、ちょっとだけね」
じーっとぼくを見上げるミャオン。
金色の瞳に、困り顔のぼくが映ってる。
どうして行っちゃうの? 一緒に遊んでくれないの?
――そんな風に言ってるみたいだ。
「……ごめんね、ミャオン。ぼくだって一緒にいたいけど、三ヶ田さんに伝えたいことがあるんだ。それと、宮尾くんにも言っておきたいことがあって。その用事が終わったら、たくさん、たっくさん遊んであげるから」
「……んんー?」
ミャオンはネズミのおもちゃをくわえたまま、寂しげに鳴く。
「……そうだ」
昨日、くじで手に入れた『カミカミ』をあげてみよう。
あげても目の前では食べないおかしなお菓子だって言ってたし、出かける前にあげるんだったら、ちょうどいいかもしれない。
ぼくはいつものおやつの箱から『カミカミ』を取り出す。
店番さんは2粒を一度にあげなさいって言ってたよね。
「はい、ミャオン。新しいおやつだよ」
チャックを開けて、紫色のぷるんぷるんしたグミをつまみ出した。
ミャオンはネズミのおもちゃをくわえたまま、また「んん?」って鳴いた。今度は寂しげじゃない。むしろ――驚いてるみたいだ。
目がまんまるになってる。昼間なのに黒目の部分が大きく広がっちゃって。確かこれ、驚いてる時の表情……だったよね?
こういうお菓子をあげるのは初めてだからかな。ミャオンのこういう表情は珍しい。なんだか新鮮だなぁ。
「よかったら食べてね」って、1粒ずつミャオンの足下に置いていく。
ミャオンはネズミのおもちゃをくわえたまま、ただ、ただ、ぼくとグミとを見比べてる。目をまんまるくして。
「……じゃあ、行ってくるね」
ぼくはミャオンの頭をひと撫でしてから、出かけた。
<3話へ続く>
↓ランキングに参加しています。よろしければクリックを!↓
#小説 #猫 #投げ銭
ここから先は
¥ 100
ご支援を活力に変換して、今後の創作活動に生かしてまいります。各種沼への軍資金、猫たちへのおやつとなる可能性も捨てきれませんが……なにとぞ……!