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ショートストリー№4「眠る女」

彼女は眠っていた
誰もいない森の中で
美しい花に囲まれて眠っている彼女は
何かから解き放たれたかのように
ほっとしたような安心しきった表情で
とても幸せそうだった

いつからその場所にいるのか
どうしてそこにいるのか
誰にも分からない
知っているのは大空と
森にいる動物たち
ただただ彼女は眠っている

するとどこからともなく一匹の小鹿が現れた
まさか人間がいるとは思わずに
眠っている彼女の周りを走ってみたり
近づいて匂いを嗅いでみたりしたけれど
彼女が目覚めることはなく
あきらめた小鹿は親のもとへと帰る

それからずいぶん時間が経ち夜になる
それでも彼女は眠ったままだ
月明かりが彼女を照らす
光りに照らされた彼女はまるで森の王女様のようだ
ずっと前からその場所にいたかのように
そこが彼女の居場所だというように

彼女は眠っている
でも本当は途中で起きていたのだ
小鹿が来たときは驚いたけれど
あまりの可愛らしさに眠ったふりをし続けた
小鹿がいなくなるとまた眠くなってしまい
気が付いたら夜になっていた

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