ツアーコンダクターはその人の未来が見えてしまうことと引き寄せの法則的なは・な・し

今は羽田もあるけれどひと昔前は国際線は成田だけだった。そのもっと昔は羽田だけだったそうだけれど、老婆の私もその時代はさすがに知らない。

私は主にパッケージツアーのツアーコンダクターをしていて月に2本のツアーに行っていた。年間２００日以上は海外でホテルのベッドで寝る暮らし。

お給料は激安王だけど、日本にいる時間が短いからあんまりお金を使わない。海外に行くのでセール期間に日本では買えないブランド品も安く買えたりする。仕事でミシュランの星つきレストランに行くのでワインも料理もおいしいものを知ることができる。５つ星のホテルにも泊まれるので優雅な気分にもなれちゃったりする。

な、わけで激安王でもなんだか自分が貧乏だとか思ったことはなくって潤った生活をしていたように思う。

さて、タイトル回収。

成田空港でカウンターオープン。お客様がやってくる。ご挨拶をする。パスポートを拝見させていただく。そんな一連の流れの中で「あ、この方、きっと何か起こす」「すごい笑顔で人懐っこいOLさん。あなた、すごいことやらかしますね」「あー、トラブルに遭いそうですなー」

ほぼ、９０％当たる。パスポートを出す時のかばんの中に入れた手のがっしゃがしゃ具合。その時に発する言葉。スーツケースを押しながらカウンターに向かってくる時の様子。ささいな質問。

そんなんで、なんでかわからないけどその人のツアー中に起こることが見えてしまう。

そして、脅かすわけではないのですが、文句が多い人のスーツケースは無くなり、お風呂からはお水しか出てこない。部屋を変えると今度は隣が祭り開催中の中国人観光客の部屋でうるさくて眠れない。そんな夢のようなことが本当に起きる。

昨日、ホテルでひどい目に遭ったから今日はホテルからもらった部屋の中で一番いい部屋を彼らに割り当てることにしよう。眺めもいいし、広さも一番広いところ。

昨日のホテルでさんざんな目に遭ったお客様に鍵をお渡しして一応、心配なのでお部屋までついていき一緒に設備、備品を全部チェック。問題なし。良かった。

夕食はホテルのレストランで。昨日の部屋の文句をずっと喋り続けるご主人。「こんなの何回も旅行にきて初めてだ。人生で初めての経験だ！」と怒りがぶり返してる。他のお客様も頷きながら少々辟易しているご様子。

喋り続けるご主人。

そしてゆっくりとご主人の頭の上に流れ落ちていくサバランのシロップ。新人ウエイターがお皿を斜めに持っていてとろみのあるシロップがゆっくりおじさんの頭に流れ落ちていったのだ。

私は、見た。同年齢のご夫婦が少し笑ったのを。

烈火のごとく怒鳴り出し、椅子を蹴飛ばし部屋へ消えていったご主人。

レストランマネージャーとウエイターを連れて部屋に謝りに行き、クリーニングを高速仕上げでしていただいたけれど、ご主人は「人生でこんなのは初めてだ！」「なんでこんなホテルを取ったんだ！おまえの会社のせいだ！訴えてやる！」と細かいことは忘れちゃったけど賠償金がいくらとかなんかいろんなこと叫び続けてた。

このご主人、飛行機の席が狭すぎる、こんな飛行機を取ったのは誰だ、予約した奴の名前を教えろから始まって、料理がまずい、バスの運転手の運転が下手だ。こんなに寺ばかり見て何が楽しいんだ（教会のことですね。パンフレットに載せてるんだけどな。観光スポット）

とにかく文句が多くて、文句言われるたびに「神様、この方に何も起こりませんように、どうか平穏につつがなく成田に戻れますように」と祈ってみるけど。

なんでだろうねー、不思議だねーって、同僚とよく話す。

これって今どきはやり？の引き寄せの法則？的な？

#業界あるある