エディ

 ここのところ諸々の業務に忙殺されてnoteを更新できませんでした。ちょっと落ち着いたので、またギターやベースの楽器演奏にまつわる色々を書こうと思ったのですが、先日公表されたエディの訃報に接して自分自身かなりショックを受けるとともに、自分の音楽観に占める存在の大きさを改めて認識しました。

 いたるところにエディへの追悼文やニュースが流れていますが、僕もエディとVAN HALENについて書かせてください。

・ エディとVAN HALEN

 知らない方のために基本情報を。エディ(Edward "Edy" Van Halen、以下敬称略)はVAN HALENというバンドのギタリストです。自分の名前をバンド名にしているのはDIOとかDOKKENとか、まあまあたくさんありますね。

 VAN HALENのメンバーはエディのお兄さんであるアレックスがドラマーで、ボーカルはデイヴ・リー・ロス、サミー・ヘイガー、ゲイリー・シェローンが歴任、ベースはマイケル・アンソニーが脱退(解雇という説もありますが)したあとはエディの息子、ウルフギャングが担当していました。

 VAN HALENは1978年のデビュー作『VAN HALEN』の2曲目「Eruption」のギター・ソロのタッピング奏法が異次元過ぎてエレキ・ギター界隈に衝撃を与え、ロックの歴史を変えました。その後6枚目のアルバム『1984』に収録された「JUMP」が大ヒットしてロック系以外の音楽リスナーにも浸透、エディはギタリストだけでなく作曲家としても高い評価を得ました。

 ……と、略歴はざっくりこんな感じでしょうか。僕としてはエディのタッピングや速弾きといったテクニック面の凄さはもちろんですが、リズム感の良さが異次元だと思ってます。あとフレーズやアイディアの豊富さ。弦が6本張ってある指板上って僕には凄く狭く見えるんですけど、エディにとってはものすごい宇宙が広がって見えていたのかな?とか想いを馳せます。

 僕自身何年も音楽を聴き、楽器を演奏し、バンドをやってますけど、総合的に僕自身が一番好きなギタリストがエディです。ほんと好き。

・ DLR派とサミー・ヘイガー派

 VAN HALENはモンスター・バンドにありがちなお家騒動というか、メンバーの不仲説とか、色々ありましたね。まあ音楽雑誌が面白可笑しく報道するからという側面もあるでしょうけど。でもまあバンドの顔でもあるボーカルが変わるとなれば大事ですし、ボーカリストが変わった『5150』からはVAN HALENの音楽性も大きく変化しました。僕の印象ではブルージーな歌いまわしが特徴のデイヴから、ハイ・トーンが出せるメロディ重視のサミー・ヘイガーに変わったと認識していました。今となってはどちらの時代のVAN HALENも魅力的で唯一無比のバンド・サウンドなんですが。

 今、ある程度の音楽遍歴を以て聴き比べれば、ボーカルだけでなくバンド全体の音楽性の変化やギターの音色の変化も聴き取ることができます。特にギターの音色に関してはデイヴ期のほうが荒々しく、サミー・ヘイガー期以降は洗練されていると思います。大人しくなった、ロックっぽくない、という評価もあったし、そう思ったこともあるけど、どちらもやっぱりエディだし、唯一無比なんですよね。どっちのエディも好き。

・ VAN HALENのベース

 VAN HALENのふたりのベーシストのプレイ・スタイルについては書籍『THE DIG Special Edition ヴァン・ヘイレン (シンコー・ミュージックMOOK)』に寄稿しているので、機会があれば是非御一読ください。

 個人的にはやっぱりエディのギターをボトムで支える感じが際立っていたマイケル・アンソニーが好きなんだけど。コーラスとかキャラとかもね。ウルフごめん。あの感じの歪みのベースの音色が苦手というか、これは単に僕の好みの違いなんだ。最後のアルバムもウルフの力が無かったら世に出ていないと思うよ。ウルフにも最大限のありがとうの気持ちがあるよ。

・ 『5150

 僕自身がVAN HALENを知ったのはリアルタイムで『5150』からでした。前回のnoteでも書きましたが、洋楽好きでベストヒットUSAを追いかけてたような少年だっただけに普通にチャートインしてきたポップなバンドと認識して聴いたのが初めてだったのだと思います。メロディックな曲も好きだったし、「Why Can't This Be Love」のイントロとか楽曲全体のアレンジも好きでした。シンセを多用しているアルバムではありますが、アレンジの中核にあるのはギターです。でも当時はこのアルバムがギター中心の音だと思わなかった。エディがギタリストだと知ってびっくりしたのを覚えています。そしてロックに興味を持って、エレキ・ギターに興味を持った。まあ何故か始めたのはベースですけど。

 だから、『5150』は僕が音楽を始めたキッカケでもあるんです。当時聴いていたポップスとロックに橋を架けてくれたアルバムだと思うし、実際、音楽雑誌なんかもそういう評価だったと思います。まあ、VAN HALENがロックからポップスに走ったという批判もあったでしょうけど、このアルバムがなかったら僕は音楽をやっていないかもしれない。

 もう30年以上前のアルバムなんですけど、今聴いても全然古臭さを感じないのは僕だけなんでしょうか?オジサンだからなのかな?全然キラキラしてるし、ポップだし、カッコいいし、最高じゃない?こんなバンドやってみたいし、こんな曲も作ってみたいと今でも思います。VAN HALENは全部聴いているし、好きなアルバムも多いけどやっぱり『5150』が一番好き。『5150』が最高。アルバム・タイトル曲の「5150」のギター・リフとか、もうほんと好き。弾けないけどギター持つと弾いちゃう。

 色々なミュージシャンの方々の追悼コメントを見ると『OU812』や『Balance』でVAN HALENにハマったという方もいらっしゃるんですね。僕より年配の方からすると『5150』でハマるなんて遅いと思うかもしれませんが、それだけ長い期間、思春期の若者をロックの道に引き込んでいたということなのでしょう。エディ凄い!

 あ、『5150』でVAN HALENを知った僕は、その後すべてのアルバムをチェックするわけですけど、やっぱり『1984』ももちろん最高です。「Panama」とか「Hot For Teacher」とかね、ギターのリフが凄すぎるけど、アイディアが溢れまくっていた時期なのだろうなぁ。個人的にこのアルバムで1番好きなのは「Jump」のフェードアウト間際のギターのフレーズなんですけど。”フェードアウト間際に名フレーズあり”を最初に発見した楽曲かも。あと5枚目の『Diver Down』も好き。

・ 最後に

 まあ、これは小言です。僕はR.I.P.とか書くのが苦手です。そもそも個人がSNSでどのように意思表明しようとも自由だし、どう受け止めるかなんて他人の裁量でしかないけど、表明するからには受け止める側がいて、少なくとも自分はRIPと書いてる人を好意的に受け止められない、というだけなのですが。ネイティヴの方ならまだしも、日本人には謹んでその時の気持ちを表明する“御冥福をお祈りします”という言葉があるんだからそういう気持ちを表明するのに記号的に略す必要ないでしょ、とか思っちゃう。気軽に表明する必要ある?まあそのうち世間一般に受け入れられていくのかもしれませんが。黒いマスクとかもね、去年くらいまでだと違和感あったけど、今は違和感ないし。

 もうひとつ、今回の件で多くのミュージシャンが追悼の言葉を発信している中で、とても印象的だったのが海外の方からの御家族やバンド・メンバー、バンド・スタッフに対する温かい気遣いの言葉です。もちろん、本人や関係者に近しい方からの発信だから、という面もあるでしょうけど、日本でこういう発信をしているミュージシャンはあまりいないような……。中には“VH聴いてたのはDLRの時だけだわー”とか、今このタイミングで書く?みたいなことを平気で書いている楽器業界関係者とかもいて、とても残念な気持ちになりました。“気遣い”ができないのは人として最低だな、と思いました。これは真に自戒を込めて。愛するものを失った哀しみや喪失感は他人には計り知れないところがありますね。長いこと闘病生活が続いていたということも漏れ聞くし、ご家族の心労は大変なことだったろうと思います。特に最愛のお父さんを亡くしたウルフには掛ける言葉が見つかりません。でも君のお父さんは世界最高のギタリストだと僕は思うよ。

 エディ、月並みですが、たくさんの曲、メロディ、アイディア、希望、喜び、楽しみ、その他たくさんの色々を遺してくれてありがとう。出会えてよかった。天国で安らかにお過ごしください。

 

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