読者様からの質問にお答えします!

 現在発売中のベース・マガジン2020年夏号からとても硬派な連載を担当させて頂いております。パッと見は技術系の記事ですが、本当は感覚派のプレイヤーの皆さんにこそ読んで頂きたい、でもやっぱり文系の人には読みにくいかもしれないので、読んで頂いているかな?と思っていたのですが、とある読者様にDMで読後の感想と共に質問まで頂きまして、いたく感激しまして、許可を頂いた上でその御質問と回答をnoteに転載、というか大幅に加筆修正して公開に至ったという経緯でございます。

・ BBKとは?


 ベース・マガジンで現在連載させて頂いているコーナーのタイトルは『Bass Basic Knowledge』、略してBBKでして、ベーシストの皆さまのなにげない疑問を解決しつつ、理に適った機材の使用方法や演奏方法をマスターして、日々のベース・プレイに役立てて頂こう……といった尊い内容になっております。月刊だったこれまでのベース・マガジンに比べると、意図的に記事の難易度を上げているというか、理解しやすいように多めにページ数を割きつつ、より突っ込んだ深い知識にも触れ、読み応えのある内容になるよう意識して書いています。是非、購入して読んでくださいね。

・ BM2020夏号のBBKに書いたこと


さて、そんなBBKの初回のテーマは「トーン・コントロールでできることは何か?」でした。全文をこのnoteに転載するのはアレなので、かいつまんで概要を書きますと、“EQ(イコライザ)やトーン・コントロールは具体的には何をどうするもので、どう使えば良いのか”というお話でした。まあテーマだけ読むと “EQなんて音色を作るものに決まってるじゃん?”って思うかもしれませんが……。

 記事内ではベースの音色は弾き手で決まるものなので、“自分の手で音を作りましょう”という暴論で締めてましたが、結構本音です(笑)。何かしらの色付けなり個性なり(誤解を恐れずに書けば “歪み”ですが)を求めて人気のあるEQを買い求めるのもいいですが、音作りとしては遠回りじゃないかな?とも思います。すべての機材の構造や理論、扱い方を知る必要はないかもしれませんが、基礎的なことを知っていると無駄な投資を避けられるし、上達も早いのではないかと思います。

・ 頂いた質問は?


 さて、ベース・マガジンの読者様に頂いた質問は次のようなものでした。

 『ベースを始めて4年目ですが、イコライザ等を動かしても音の変化が良く分かりません。わかるのはボリュームとBASSのツマミ、トーンの変化くらいで、抜けの良い音がどういう音なのかも分かりません。どうすれば聞き分けられるようになるでしょうか?(抜粋)』。

 なるほど、実にリアルな良い質問を頂いたと思いました。この質問には論点がいくつかあると思うのですが、考えられる原因はEQを操作しても実際に音が変化してないか、音が変化したことを聴き取れていないか、のどちらかだろうと推測できます。

・ 音が変化しないEQ 

 
 ボリュームは全周波数帯域のレベルを増減するのに対して、EQはあらかじめ振り分けられた周波数帯域ごとにレベルを増減するものです。なので、振り分けられた周波数帯域の成分がEQに入力する信号(楽器の音とほぼ同義です)に含まれていなければ、いくらその周波数帯域のレベルを増減したところで音色は変化しません。ベース・マガジンの記事内でも書きましたが、例えば歪ませていないパッシヴのベースは高音域の成分がそれほど多くありません。

 一方で昨今のベース・アンプやエフェクター型のプリアンプはかなりのワイドレンジ化が進んでいます。多弦ベースやバリトン・ギターの普及、音楽性の変化など時代のニーズに答えた結果、低音域はより低音域側へ、高音域はより高音域側へと移動しているのです。例えばMXRのコンパクト・エフェクターM108S 10 Band Graphic EQの各バンドの中心周波数が31.25~16KHz(16000Hz)なのに対して、僕が愛用している1970年代のベース・アンプacoustic370に装備された5バンド・グラフィックEQは50、100、200、300、400Hzです。狭すぎ(笑)。
 
 また、音色が変化しない理由として楽器と弾き方の問題も考えられます。弦が古い、手元のトーンを絞っている、極端にピッキングが弱い、といった場合も倍音(ベーマガのBBK記事参照)が少なくなると思いますが、結局のところ、“弾き方”が重要なので、御自分の楽器を実際に弾いているところを拝見させて頂かないと正当な評価はできない面もあります。

 整理すると、極端な高音域、低音域については、その音域が出せるような楽器、弾き方でないとEQが効かないし、ジャンルやスタイルによっては効かなかったとしても必ずしも問題があるわけではないということです。

 もうひとつ、EQが効かない理由として、機器の故障も考えられます(笑)。そんなときは全周波数帯域のエネルギーを持つ音(信号)を入力して音色の変化をチェックするのが良いかもしれません。そんな音あるの?あるんです!ピンク・ノイズといってオクターヴごとのエネルギーが一定の信号で、いわゆるザーという雑音です。ピンク・ノイズを発生できるスマホのアプリ(精度は定かではないですが)があるのでそれを活用するとよいでしょう。

・ 音色の変化が聴き分けられない

 
 もちろん、スキルの面で実際に音色が変化していても聴き分けられない可能性もあります。しかし、音色を聴き分ける能力は訓練によって身につくものだとも思います。例えば経験のあるベーシストであればプレシジョン・ベースとジャズ・ベースの音色の違いを聴き分けられるでしょうが、クラシック専門のオーディオ・マニアだったらどうでしょう?聴き分ける耳が良くても、その楽器の音に精通していないと区別できないのではないでしょうか?
 
 訓練とまで言わずとも、楽器が好きで、熱意と探求心をもって楽器を演奏していれば、少なくともその楽器に関連する音色の違いを聴き分ける能力の分解能や精度は上がるでしょう。自分自身も楽器を始めた当初は音色の違いが認識できなかったので、長くやっていると色々と分かることが増えるものだなぁと思っています。まだまだ分からないことも多いですが。

・ アプリを活用して耳を鍛える


 トーン・コントロールやイコライザは、各コントロールの中心周波数の数値(Hz)と音色のイメージを脳内で一致させると扱いやすくなると思います。具体的には中心周波数の純音を聴いてその音程感を色味や味覚に例えて覚えるのも良いでしょう。各コントロールの中心周波数がパネルに表示されていなければ、カタログ・スペックに記載されているはずなのでよく使う機材は数値を覚えておくと良いと思います。純音は先述のアプリでも生成できますが、周波数(Hz)や音量(dB)を当てるクイズ形式で覚えられるQuiztonesもオススメです。有料アプリではありますが、通勤通学の電車内などちょっとした時間に楽しみながら耳を鍛えられます。

・ 抜けの良い音とは?


 音色を言葉で表現するのは難しいですが、“抜けの良い音”とは、“音程感が明瞭で、存在感がありながらも耳障りではなく、どちらかと言えば明るい音”、といったところでしょうか?ベースの場合は特にアンサンブル内で混ざったときの音を想定しているので、単独で音作りをするとイメージしにくいでしょうし、ジャンルや編成によってもセッティングは異なると思います。ソロ以外のレコーディングや、バンドのライヴなど、実践を重ねることで身につく側面もあるのではないかと思います。

・ おわりに

 
 ということで、質問解答noteは如何でしたでしょうか?

 このnoteに対するご意見や感想、質問はもちろん、ベース・マガジンのBBKに関する質問や提案も大歓迎です。是非お気軽にお問合せ下さいませ。akarimusicworksのWebサイトからメールでもツイッターでDMでも大丈夫です。

 それではまた。


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