左手のフォーム6

 左手のフォームについては、ナンバリングは6ですがトータル7回目になりますね。一応、今回で基本編はラストという感じです。ということは応用編的なものもあるわけですが、ベース演奏を基礎から徹底的に見直すnoteとしては(あ、明言はしてこなかったですがそういう意図で書いてます)、順番的に違うことを書きたい雰囲気もあるので、左手のフォームについては一旦区切るという感じです。

・ フォームの使い分け

 左手のフォーム3でも少し言及しましたがエレキ・ベースの左手のフォームは如何に楽に、無駄なく、安定した良い音色で弾くことができるかを主眼として、動きの少ないフレーズでは握り込みフォーム、動きのあるフレーズではロー・ポジションなら4指3フレット、ハイ・ポジションなら4指4フレットのフィンガリングを使い分けるのがオススメ、ということは以前(左手のフォーム3)でも書きました。

 フィンガリングにおいては、特に複雑で高速なフレージングになるほど正確で無駄のない動きが重要になります。そこで必ずと言って良いほど課題となるのが指の離し過ぎ小指の押さえ方です。4指4フレットについても詳しく解説していなかったのでここでやっておきましょう。

・ 4指4フレットを実践する

 筆者がこのフォームを実践するのは人差し指が7フレットとなるポジションくらいからなので、ここでは7〜10フレットのポジションで解説しますが、無理なく押さえられるポジションであればどこでもOKです。ということで久々に譜面です(笑)。以下の譜例1を演奏してみてください。


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 クロマチック・スケールもどきの上昇下降フレーズで、よくあるフィンガリングの基礎練習ですね。ウォーミング・アップにも最適なのでぜひ楽器を手に取るたびに弾いてくださいね。なるだけメトロノームやクリックを使って一定のテンポで弾くようしてください。それでは具体的な手順を説明します。

〜上昇フレーズの場合〜

① 4弦7フレットを人差し指で押さえる。このとき中指は4弦8フレット、薬指は4弦9フレット、小指は4弦10フレットの真上で、弦からの距離は1cmくらいを保って待機する。つまり押さえていない指も各フレット上に配置し指の間隔を変えないのがポイント。

② ピッキングのタイミングで4弦7フレットを弾く。

③ 人差し指は押さえたまま、次のピッキングのタイミングで中指で8フレットを抑えると同時に弾く。

④ 人差し指、中指は弦を押さえたまま、次のピッキングのタイミングで薬指で9フレットを押さえると同時に弾く。

⑤ 人差し指、中指、薬指は弦を押さえたまま、次のピッキングのタイミングで小指で10フレットを押さえると同時に弾く。

⑥ 次のピッキング・タイミングの前の段階で中指、薬指、小指は4弦を押さえたまま、人差し指だけ移動して3弦7フレットを押さえる。

⑦ ピッキングのタイミングで3弦7フレットを弾く。

⑧ 次のピッキング・タイミングの前の段階で中指、薬指、小指を3弦の各フレット上に配置。以降、手順を繰り返す。

〜下降フレーズの場合〜

①  1弦7〜10フレットを各指で押さえている状態からスタートするとして、ピッキング・タイミングで1弦10フレットを弾く。

② 次のピッキング・タイミングで小指を離すと同時に1弦9フレットを弾く。小指は弦から1cm以上離さない。

③ 次のピッキング・タイミングで薬指を離すと同時に1弦8フレットを弾く。薬指、小指は弦から1cm以上離さない。

④ 次のピッキング・タイミングで中指を離すと同時に1弦7フレットを弾く。中指、薬指、小指は弦から1cm以上離さない。

⑤ 人差し指は1弦を押さえたまま、次のピッキングのタイミングで中指で2弦8フレット、薬指で2弦9フレット、小指で2弦10フレットを押さえると同時に弾く。

⑥ 以降、9、8フレットと手順を繰り返す。人差し指の7フレットの押弦は8フレットのピッキング・タイミングまでに完了させておく。

 というような感じです。4指3フレットの場合と同じ内容になりますが、最も重要なのはフィンガリングは各指を入れ替えることではなく、弦を押さえる指の本数を増やす、減らすという概念だということです。さらに各指はフレット間隔を維持したままにする、指を無駄に動かさない、弦から大きく離さない、弦から全ての指が離れている瞬間を作らない(音が途切れない)という点にも配慮しましょう。

・ フィンガリングや弦移動での補足注意点

 上記のフィンガリング基礎練習はあくまでも指の動かし方を鍛錬するためのもので、フレーズによっては中指をフィンガリングに参加させないほうが効率が良かったり、異弦同フレットで薬指と小指を同フレットに配置するほうが弾きやすかったりすることもあるでしょう。また、弾いていない弦が鳴ることを防ぐ“余弦のミュート”についても左手では配慮しにくいというデメリットもあります。

 筆者の場合、フレーズによっては4〜7フレットのポジションあたりでも4指4フレットのフォームを活用することがあるのですが、正直なところこのポジションでは各指が各フレットに充分に届かず、各指を各フレットに正しく配置し間隔を完全に維持することは困難です。それでも可能な限り指を開いた状態で待機しつつ、親指の移動を伴うシフティングはせずに手首を左右に僅かに動かすことで押さえるべき指を各フレットの真横に到達させています。手が小さめの方にはこう行ったアプローチもオススメです。

 弦移動は押さえる弦をフィンガリングによって入れ替えるというよりもスライドさせると表現したほうがニュアンスが伝わりやすいかもしれません。人差し指を4弦から3弦へ移動させるとすれば、人差し指は指板やフレットからは離れつつも4弦から離れることはなく、肘に主導されつつ(前回note参照)弦を押さえるべき指の重心が3弦にスライドする、といったニュアンスです。

・ 小指で弦を押さえる

 小指での弦の押さえ方についてですが、以前にとある書籍でも紹介した内容を書いておきます。人体の仕組みについて詳しいわけではないのですがちょっとした実験を。

 左手の手のひらを軽めに開いて小指か薬指のどちらかだけを動かそうとしてみてください。どうしても他の指が一緒に動いてしまいがちですよね。次に反対の手の指先で薬指を持って小指を動かすとどうですか?当然、小指が動きやすく感じますよね。次にシチュエーションを変えて、全ての指先をしっかりと机上に付けた状態で小指を動かした場合と、薬指を浮かして小指を動かした場合を比べてみてください。やはり薬指が固定されているほうが小指を動かしやすいですよね?

 ということで、動かす指よりもその隣の指にしっかり力を入れるようにするとフィンガリングがスムーズになると思うのです。4指4フレットのフォームを7〜10フレットで展開しつつ、小指の音がビビるという方は右手人差し指で左手薬指の押弦をサポートしてあげてみてください。これでビビリが止まるようなら小指のチカラが弱いのではなく、薬指の力が足りないということです。

 ということで、フィンガリングは各指を独立して動かそうとせず、薬指で弦を押さえるときは中指、小指で弦を押さえるときは薬指にむしろ力を入れるように意識してみるのが良いかと思います。

 また、弦を押さえる際は指を動かすだけでなく手首を僅かにボディ側に寄せてサポートするのも有効かと思います。筆者にとってフィンガリングとは弦を押さえる指の本数を増減することであり、弦を押さえる指を増やすときは手首をボディ側へ、減らすときはヘッド側へ寄せる動きでもあるわけです。ただし、手首の動きは本当にごく僅かであり、親指の位置は動かしません。指が弦から大きく離れてしまうようなフォームだと活用できない概念とも言えますね。

・ フィンガリングの基礎練習

 最後にフィンガリングの基礎練習譜例をもうひとつ掲載しておきます。とても簡単な4分音符のみの超簡単な8小節の譜例です。


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 上りでは人差し指→薬指→中指→小指、下りでは小指→中指→薬指→人差し指となる、いわゆる1324の動きです。メトロノームに合わせて、弦移動でも音が途切れないように音価をきっちりと意識して正確に弾いてください。フィンガリング時に指が入れ替わってしまう人は特に下りでかなり苦戦すると思われます。小指から中指……などと考えるよりも、弦を押さえる指の本数が上りは1本→3本→2本→4本、下りは4本→2本→3本→1本と考えると、少しは楽に弾けるのではないでしょうか?

 慣れてきたら同様のフレーズをさらに低いポジションでも作って弾いてみてください。それではまた!

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