レディ・ジョーカーに祝杯を捧げよ 60
「そういった人が、他にもいるの・・・?」
「ええ。ごく稀にですが。」
侯爵夫人は黙って考えているようだった。しばらくすると、手元にある本に目を落としながら、小さな声で話し出す。
「これは独り言よ?・・・わたくしは小さな頃から、別の人格の記憶がはっきりとあったの。思い出すのも辛い、忌々しいものだった。」
「・・・。」
「忘れたころに鮮明な夢を見て、つい先ほど起こったかのように思い出す。そのような生活がずっと続いて、わたくしは精神的に参ってしまったこともあった。誰かに相談したく